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「自分らしさ」が認められる時代|GIRLS’ TREND 研究所・稲垣涼子 前編

取材・文/鈴木俊之、写真/荻原美津雄、取材・編集/設楽幸生(FOUND編集部)

1990年代、2000年代に日本の消費やカルチャーの先頭を走っていたガールズ文化。いまだにその影響力は無視できません。

しかし現在、そのカルチャーはどうなっているのか。影響力は?そして新しい時代のガールズ像は?となると、門外漢にはうかがい知れません。

しかし、そのガールズ文化を長く研究している機関がありました。その名も『GIRLS’TREND(ガールズトレンド) 研究所』です。

今回、長きにわたり、若い女性の「流行」を追いかけてきた、GIRLS’ TREND 研究所の稲垣所長にお話をうかがいました。

稲垣涼子(いながき・りょうこ)
フリュー株式会社「GIRLS'TREND 研究所」所長。大阪教育大学大学院教育学研究科数理情報コース修士課程修了。フリューにて、プリントシール機の商品企画に約13年携わり、「姫と小悪魔」(2006)、「美人ープレミアムー」(2007)、「Lumi」(2009)などのヒット商品を多数企画する。その後、企画部部長を経て、現在は「GIRLS'TREND 研究所」所長として女子高生・女子大生の動向について研究を続け、フリーマガジン『GIRLS’TREND』編集長も務めている。

意外な広がりをもつガールズ市場

――そもそも、「ガールズ」とはどういう層を指すのですか?

稲垣涼子氏(以下、稲垣):
「私たちの会社は、1990年代からプリントシール機の企画・開発・製造を行っています。現在シェアNo.1です。

開発過程でユーザー層の調査を重ねるうちに、情報やノウハウが蓄積していました。

そこで、2012年からは『GIRLS’TREND 研究所』という看板を掲げて、それらを積極的に発信し始めました。

ですから、私たちが想定しているガールズはプリントシール機のユーザー層が中心です。

一般的に中高生と思われがちですが、現在のボリュームゾーンは15~22歳(高校生、学生、社会人)です。その次に23~29歳の女性をターゲットと考えています」

――いわゆる「ガールズ市場」はどれくらいの規模ですか?

稲垣:
「それがなかなかむずかしいんです。実は『ガールズトレンド』の定義についても検討している最中なんです」

――なぜむずかしいのでしょう?

稲垣:
「ジャンルが無限にあるからです。一般にはファッションやコスメだけだと考えられがちですが、雑貨や旅行、インテリア、グルメ、エンタテインメント(音楽、映画等)と幅広いんです。

最近ではアプリやWebサービスを介した『恋愛』や『占い』といった分野もガールズ市場と言えると考えています」

――たしかに。さまざまな企業から相談が寄せられると思います。意外な分野からのアプローチはありましたか?

稲垣:
「金融や保険関係です。この分野は若い女性たちが興味を示しづらい状況にあります。だから、『どうすれば早いうちから興味を持ってもらえるだろうか』という問題意識があるようです」

スマートフォンで大きく変わったライフスタイル、しかし……


――スマートフォンの登場で、若い女性の関心を示す分野が一気に広がったのでは……。

稲垣:
「意外かもしれませんが、興味の対象はあまり変わっていません。

たとえば、上で列挙したジャンルへの興味も同じです。ただ、可能性としては非常に広がったと思います。

20年前はツールがポケベルやPHSだったので、インターネットは使えないし『検索』機能も付いていなかった。頼りは口コミ、テレビ、雑誌でした。

それが今ではスマートフォンを使い、Instagram(以下、インスタ)で検索してから遊びの計画を立てる。そんなライフスタイルに変わりました。

また、情報をやりとりする範囲も格段に広くなりました。

たとえば、平成の始めの約30年前に、全国の人と仲よくなろうと思ったら、文通くらいしか手段がありませんでした。

しかし今は、Twitter(以下、ツイッター)やインスタといったSNSで、より簡単に仲間を見つけてつながることができます」

――彼女たちはSNSで、どんなふうに仲間を見つけるんですか?

稲垣:
「好きなアーティストなどの、SNSへの投稿に対するコメントを読み、気が合いそうな人を探したり、『#●●好きとつながりたい』といったハッシュタグ(#)を自分のコメントに付けたりします。

最近では、ファンの総称に名前を付けるのが流行っています。

コミュニティの結束を固めるために、有名アーティストが昔から行っていた手法です。

今ではこれを、小規模のインフルエンサーたちもあたりまえにやっています。そのコミュニティの名前で検索する、という方法も多いですね」

分散するトレンド、今は「マイセルフJK」


――御社が、平成の女子高生トレンドの変遷をまとめた記事を拝見しました。それによると、今の女子高生は「マイセルフJK」だとか。

稲垣:
「2018年11月から2019年2月にかけて実施した、『平成の女子高生(JK)に関する世代別トレンド』の『総集編』で付けた、今の女子高生の生態を表現する言葉です。

ファッションや美容でおしゃれ/イケているものについて尋ねたところ、『自分に似合っているモノ』という回答が多かったりと、他世代よりも“自分らしさ”を軸にする価値観から命名しました。

同じ調査で、1989年にJKだった人たちの回答は、『パーマ/ソバージュ』という髪型、1996年のJKは『安室奈美恵(アムラー)』というロールモデルを挙げています。

以前、とくに1996年頃はロールモデルから外れた趣味・し好の人は「イケてない」とされました。

ところが今は、肩身の狭い思いをしたり、頭ごなしに否定されたりすることがありません。「マイセルフ」だからです。許容範囲の広い時代になったんです」

――たしかに。でも何事にも功罪があります。

稲垣:
「はい。分散しすぎた弊害もやはりありますね。

たとえば、同じクラスに韓国のアーティストが好きな人とアニメの声優が好きな人がいたとします。

二人は相手の好きなものをけなし合うようなことはしません。だけど、相手の趣味の分野のこともまったく知らなかったりします。

多様化しているからこそ、すべてに関心を寄せるのがむずかしいのではないかと思います。

こういう状況ですから、大人たちが遠くから眺めているだけでは、流行をつかむことに対してとても難易度が高くなっていると思います」

昔は「流行に乗ったファッションを追いかける=イケてる」という傾向が強かったガールズ・トレンド。

しかし今では「自分らしさ」を追求することの方がイケている。ダイバーシティ(多様性)を認める社会性の表れかもしれません。

次回は、どのようにして若い女性のトレンドを探っているのか? そのあたりについてお聞きしたいと思います。
(つづく)

「自分らしさ」が認められる時代|GIRLS’ TREND 研究所・稲垣涼子 前編
「カリスマ一極集中」の時代ではない|GIRLS’ TREND 研究所・稲垣涼子 中編
お互いを尊重しあうことに、価値が置かれています|GIRLS’ TREND 研究所・稲垣涼子 後編

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