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第17章 株価以外の「株の価値」?その良し悪しを見極められる指標って?

株式投資を知るにつれて、まわりに気になることが増え出したモネ。

しかし、株を買うと息巻いてみたところで、まず、どの株を買うか、という問題にぶつかると、その勢いは急にしぼんでしまうのだった。

「自分が毎日飲んでいるジュースの会社の株を買えばいいの?」
「誰もが知っている電機メーカーの株を買えばいいの?」

いろいろ調べていくと、株選びのモノサシとして、「株の価値」を測れる「指標」というものが存在すること知る。

「あっ、これなら少しは迷いも減るかもしれない!」と喜ぶモネなのだが、果たして「指標」とはそんな簡単なものなのだろうか?


長く投資をするために、知っておくべき「指標」

M:
いざ株を買おう!って、決断すると、たくさんある株の中から、どの株を買うのかを決めなければいけない、って気がついたんです。

でも、どの株を買ったらいいのやら…。何か「ここを見て買おう!」みたいな買うためのコツがあるのでしょうか。

例えば、ある会社の株価が、1ヶ月前、1週間前、昨日に比べてどんどん上がっていたら、その株は人気があるから、買うべき株ってことなんですかね?

B:
モネにしては、いい質問だな。

確かに株価が上昇しているってことは、その会社の業績が上がっていたり、将来性が投資家から評価されているってことになる。

でも、株価が上がっているから、その会社の価値が上がっているとは言い切ることはできないんだ。

M:
エッ!?

そうなんですか?どういうことなんだろう。

B:
では、ここらでいつもの、ポン太社長に登場してもらおうか。

設定は、ポンポコ株式会社が、新発売の「たぬき汁の素 カレー味」を発売した、というところからはじまる。

すると、世の中の人の多くは、

「あの大ヒットした『たぬき汁の素』を出した会社の新製品か!しかもテレビで何度も紹介されている。これは売れるぞ!」

と思ってポンポコ株式会社の株を買う。こうなってくると、株価は上がる。この流れはわかるかな?

M:
はい、ジブンもあの大ヒット商品の新作を出すんだったら、ポンポコ株式会社はまた大人気になるはずだから、早めに株を買っておくと思います。

B:
ところがだ!実はその人気の影で、1年前に出した「たぬき汁の素 ミソ味」が大不評で、ポンポコ株式会社の倉庫は返品の山!

実はポンポコ株式会社の役員たちは困っている、という情報が流れてきたらどうだろう?

M:
エッ!?

ポン太社長、実は経営ピンチなんですか?そんな事実があるんだったら、ジブンなら株を買うことはしないなぁ。

そんな隠しごとしたらダメですよ、ポン太社長ってば!

B:
うむうむ。

実は株には、株価に現れないその会社の本当の価値があるものなんだ。

つまり、上の例だと、新商品で話題となり株価が上がっている。しかしその裏では、大赤字の商品も抱えている。つまり、表面的な事実だけに惑わされてしまってはいけないんだ。

そこで重要になってくるものがある。

それが、毎日の株価に現れない、その会社の株の本当の価値を見極めるための「株の指標」ってやつだ。

その指標を見ることで、会社の株の割安感、割高感をより正確に判断することができるわけだな。

M:
へェ~、そんな指標があるんなら、是非役立てたいや。


株の本当の価値を知るのに役立つ「5つの指標」って? 

B:
株の値段の上下だけを見て、株の価値を判断するのではなくて、その会社の業績や、どのぐらい利益を出しているかを基準にして判を下す。

そんなことができる「5つの指標」を教えよう。


本当はそれぞれ計算方法があるのだが、いきなり難しくなるから、「どんな指標が、何を表しているか?」まずはこれを頭に入れて欲しい。

M:
は〜い、そんな指標があるのなら、耳の穴を広げて聞きますよ!

B:
まず1つ目が、「ROE(株主資本利益率)」と呼ばれるものだ。英語の「Return On Equity」の省略形だ。

M:
ひゃ~、早速、理解できる自信がなくなってきたなぁ。

B:
まあ、そう難しく考えるな。噛み砕けばわからない話ではない。ここでまた登場するのが、ポンポコ株式会社だ。

ある時、ポンポコ株式会社の株が売れた。で、株主のみんなから合計1000万円のお金(資本金)を集めることができた。

ポン太社長はそれを元手に商売をして、100万円の利益を上げられたのだった。

M:
さすがのポン太社長。

商売上手だなぁ。

B:
しかし!ここで登場するのが、近ごろ商売がイケイケなタンタンタヌキフーズ。

ポンポコ株式会社のライバル会社で、社長はポン子さんだ。

この会社、ある時株が売れて、株主のみんなから、合計1000万円のお金(資本)を集められた。

ポン子社長はそれを元手に商売をしたところ、なんと300万円にものぼる利益が出せたのだった。

さてここで問題です、どっちの会社の方が優秀かな?

M:
うーん、同じ1000万円をかけたのに、タンタンタヌキフーズは300万円も利益が出ているから、ポン子社長の方が優秀なんじゃないかな。

B:
大正解―!つまり「ROE」とは、株主から集めたお金を活用して、どれだけ効率よく利益を出しているか?を見られる指標ってことになる。

一般的にはROEが高い水準で推移していると、収益性や成長性が有望であると考えられているんだ。


2つ目の指標が「PER(Price Earnings  Ratio)」で、これは「株価収益率」と呼ばれるものだ。

このPERは、ある会社の株が「割安か?」を見定めるための指標なんだ。

M:
うーん、もう少しわかりやすく説明してください。

B:
仮に、モネが靴を欲しかったとしよう。その靴はいろいろなお店で3万円で売られている。ある店に行ったら、5万円の値札が貼ってあった。

そのときモネはこう思う、「欲しいけど、高いなぁ」と。でももしその向かいにあるお店に行ってみたら、同じ靴に1万円の値札がついていたのなら、即座に「買いだ!」って思うだろ?

株もこれと同じで、投資をする人は、価値がある株をできるだけ割安で買いたい、と考えるんだ。

この「割安度」を判断するのが「PER」という数字で、一般的には、市場全体や業種全体の平均PERや、その会社の過去のPERの推移と比較し、割高か割安かを判断することが多いんだよ。

M:
へぇ〜、なるほど!

B:
そして、大切な指標の3つ目。これは、「EPS(Earnings  Per Share)」と呼ばれるもので、日本語だと「1株あたり純利益」と呼ばれている。

純利益というのは、平たく「利益」と考えておいてくれ。

EPSというのは、その会社が発行している株を1株あたりで見ると、どのぐらい利益があるかを示した指標のことなんだ。

たとえばポンポコ株式会社の利益が1億円だったとしよう。そして株式を100万株発行していると、1株あたりはいくらかな?

M:
わっ、いきなり計算、ふられた!うーん、1億円(利益)÷100万株(発行株数)=100円ってことですか?

B:
そう、その通りだ。つまりEPSは100円になる。このEPSは前年と比較するとわかりやすい。

たとえば去年、
[1億円(利益)÷100万株(発行株数)=100円]
だったのが、今年は、
[1.5億円(利益)÷100万株(発行株数)=150円]
となっていたと想像してみてほしい。

すると、1株あたりの利益は50円上がっていることになるわけで、株主なら「これは素晴らしい!」ってことになるだろ?

そして4つ目の指標が「BPS(Book-value Per Share)」で、日本語だと「1株あたり純資産」と訳される。

これは、その会社がどのぐらい安定しているかを見極めることのできる指標だ。

M:
会社の安定・不安定まで測れる指標なんてあるんですね!どういうことだろう?

B:
いつものポンポコ株式会社で説明してやろう。ポンポコ株式会社は、持っている現金や、不動産(実は不動産業もやっていたんだね、ポンタ社長は!)など、「資産」を合計すると、1億円あったとする。

そして、それまでに発行していた株は1万株だった、としよう。

そして、モネはこの会社の株を1株持っていた。とすると、その1株は

1億円÷1万株=1万円

ということになる。つまり、ポンポコ株式会社のBPSは1万円ということになる。

そしてこれと関連する5つめの指標が「PBR(Price Book-Value Ratio)」、日本語だと「株価純資産倍率」と呼ばれるもので、会社の資産(厳密には純資産)と株価の関係を表す数値なんだ。

M:
ああ、だんだんワケがわからなくなってきちゃったな!

B:
うむうむ、まあ、安心しろ、説明するから。では、たとえば、「現在」のポンポコ株式会社の株価が5000円だったとする。

ここで、先ほどのBPSの話に戻る。ポンポコ株式会社の資産から見た1株の価値は1万円だ。

M:
はい、そうでした。

B:
ということは、今の株の値段は5000円、資産からみたポンポコ株式会社の1株あたりの資産価値は1万円、ということは、

5000円÷1万円=0.5

という数字が出るね。これがPBRの値なんだな。

M:
は、はい、それが何か意味あるんですか?

B:
うむ。それが、意味は大ありなんだ。

つまり、今のポンポコ株式会社の株価は、1株当たり純資産の0.5倍まで買われていることを示している。

一般的に、PBRは今の株価が資産価値に対して、割高か割安かを判断する目安として利用されているんだよ。

M:
な、なるほどー!投資判断の指標にもいろいろあるんだな~。5つの指標も知ると面白いですね。

投資判断に役立つ指標、もっと知りたいなぁ…。


他にも知っておきたい、投資判断に役立つ指標は?

B:
欲張れば、キリがないが、最後に2つほど、「グロース投資」と「バリュー投資」という役立つ情報を教えよう。

これらはそれぞれ、前にも教えたファンダメンタル分析、つまり企業の本質的な価値を探る分析方法の一種だ。

M:
ヘェ―!いったいどんな投資なんだろう…?

B:
株式投資の基本は「安く買って、高く売る」だけれども、割安な株を買うための判断材料となるのが、大きく分けるとこの二つなんだな。

「グロース投資」というのは、グロース=成長、すなわち成長しそうな株に投資することを言う。

企業の成長性に着目して、株価の上昇が期待できる銘柄に投資することを「グロース投資」って言ったりするな。

M:
新しい技術やサービスで会社が成長なんて、なんかワクワクしますね。
じゃあ、バリュー投資というのは、どんな投資ですか?

B:
さっき話したPERとPBRが少しヒントになるな。

利益水準や資産価値などに対して、割安にあると考えられる会社(例えば、割安の成熟企業の株など)への投資のことだ。

つまり、本来はもっと価値があるのに、現在の株価がその本来の価値よりも割安だと思われる企業に投資することだ。

毎日の株価には見えない「本当のその会社の価値」を知るためのノウハウを学んだモネ。

しかしアルファベット3文字の用語がいくつも出てきて、頭はやはりショート気味。

それでも、ブルベア先生から聞いたことを家に帰って復習しようと、ノートに書きだすモネなのであった。

つづく

【 資産運用の図解教室 の 目次 】

第0章 お金を増やす、ということ。
第1章 「投資」による「資産運用」って、なんだ?
第2章 投資で得られる未来?ー前編
第3章 投資で得られる未来?―後編
第4章 投資をすればお金は増えるの?
第5章 投資って、危険なの!? 〜リスクとリターンのお話
第6章 今の時代を考えると、預金?それとも投資? 
第7章 投資の種類のお話 〜前編〜 投資のいろいろ
第8章 投資の種類のお話 〜後編〜 投資のいろいろ
第9章 投資に使うお金? 余裕資金って、なんだ?
第10章 投資で「人生のお金」を設計する?
第11章ー前編 テーマを見据えて投資をする? テーマ投資・テーマ株に挑むには?
第11章ー後編 テーマを見据えて投資をする? テーマ投資・テーマ株に挑むには?
第12章 ロボットが投資のお手伝いだって?〜ロボアドのお話〜
第13章 株式投資ライフをはじめよう
第14章 株を買う・売るってどうやるのかな?
第15章 株式の銘柄とチャートってなんだろう?
第16章 自分の株式投資のスタイルについて考える
第17章 株価以外の「株の価値」?その良し悪しを見極められる指標って?
第18章 誰かの一言で、株価が動くの?
第19章 株の分散投資って、どういうこと?
第20章 資産運用って、結局のところ、まとめるとなに?

イラストレーション/浜畠かのう