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「カリスマ一極集中」の時代ではない|GIRLS’ TREND 研究所・稲垣涼子 中編

取材・文/鈴木俊之、写真/荻原美津雄、取材・編集/設楽幸生(FOUND編集部)

「時代の流行は女性が作る」と言われるほど、昔から女性は流行に敏感で、流行を生み出す旗振り役を担ってきました。

今回は、「女性のトレンドのつかみ方」について、GIRLS’ TREND 研究所の稲垣所長にお話を伺いました。

稲垣涼子(いながき・りょうこ)
フリュー株式会社「GIRLS'TREND 研究所」所長。大阪教育大学大学院教育学研究科数理情報コース修士課程修了。フリューにて、プリントシール機の商品企画に約13年携わり、「姫と小悪魔」(2006)、「美人ープレミアムー」(2007)、「Lumi」(2009)などのヒット商品を多数企画する。その後、企画部部長を経て、現在は「GIRLS'TREND 研究所」所長として女子高生・女子大生の動向について研究を続け、フリーマガジン『GIRLS’TREND』編集長も務めている。

ストーリーと世界観でガールズの心をつかむ

――前回のお話で、今は「これが流行り」という大きくて明確な枠組みがないということをお聞きしました。

では『GIRLS’TREND 研究所』は、どうやってトレンドをつかみ、それを商品に反映させ、アピールしているんですか?

稲垣涼子(以下、稲垣):
「ストーリーや世界観で商品の魅力を演出しています。

たとえば現在、プリントシール機は9商品を新しく展開します。新商品は春、夏、冬に3機種、残り6つはバージョンアップです。

その3つの新商品に合わせて、宣伝用として『GIRLS’TREND』というフリーマガジンを12万部発行しています。

頒布先はプリントシール機を設置しているアミューズメント施設、それにファッションブランド店、専門学校、当研究所とコラボしてくださっているダイソーの店舗などです」

――最近のファッション雑誌より発行部数が多いかも。内容は?

稲垣:
「プリントシール機の最新機種のコンセプトと合わせます。たとえば2019年春は、カメラが自在に動かせて、大人数でも撮れる『#アオハル』という機種が登場しました。仲間で集まったり記念写真を撮る機会の多い、卒業、入学・進学シーズンに合わせています。

そこで『GIRLS’TREND』も、テーマを『アオハル』(青春)に設定し、表紙には女子4人の記念旅行風スナップを使いました。内容も青春や思い出をテーマにした企画が盛りだくさんです。

しかし先ほど述べたように、今は価値観が多様化しています。

そこで各機種や各号ごとでコンセプトを設定してはいますが、そのコンセプト自体がずばり好みではない人たちにも受け入れてもらえるように、尖りすぎないギリギリの表現を追究しています」

――むずかしいですね。あいだをとるということですか?

稲垣:
「あいだをとってはダメですね。それでは誰にもささらず中途半端になってしまいます。

長年培ってきた感覚のようなものなので、説明がむずかしいです……。

でも、この絶妙なラインがわかるのが、当研究所の強みです」

――一般のファッション雑誌とも異なるように見えます。

稲垣:
「ファッション雑誌は年齢や世界観(雰囲気)などでターゲットが決まっていて、その人たちに向けた誌面づくりが基本だと思います。

しかしプリントシール機は、おしゃれに命をかけているような子から、部活に明け暮れ、お化粧をしたことがないという女の子までがターゲットです。

すべての女の子に向けて幅広くアピールしなければならない。ここがちがうところです。

それを踏まえたうえで、コンセプトをアピールする。なかなかむずかしい作業です。

でも、こうした市場分析とプロモーションの効果でプリントシール機『#アオハル』は大好評で、ヒットの兆しが出ています。

私たちの設定した世界観や商品性を、女の子たちが支持してくれた結果だと思います」

――単純に機能を宣伝した雑誌ではないんですね。

稲垣:
「2012年に雑誌を創刊してからずっと、ストーリーや世界観を感じてもらおうとしています。だから1号ごとに表紙の雰囲気も違う。

たとえば、2012年は海外ブロガーが流行していたとか、その後のネオギャルや『韓国っぽ』ブームとか、表紙を振り返ってみるだけでも、当時の雰囲気がわかるほどです」

グループインタビューの継続がトレンドをつかむ秘訣


――プリントシール機のコンセプトづくりはどういうことから手掛けるんですか?

稲垣:
「グループインタビューです。毎週モニターの女の子を集めて話をお聞きします。

通常6人くらいですが、大規模に行う場合は20~30人を集める。これを長年継続しています。

単発の実施では何もわかりません。長い間集めたデータと、日常的に接することで培った感性とがそろって、やっとトレンドが見えて、ウケるコンセプトを作ることができるんです」

――モニターはどのように選ぶのでしょうか?

稲垣:
「自社で募集する場合もあれば、代理店を介して集めていただくこともあります。

実は、人数なら自社で契約している女の子たちで足ります。しかしあえて、他の会社にも協力していただく。

というのは、管理する会社によって偏りが生じる傾向があるからです。同じ地域で探したモニターでも、A社はA社っぽい子、B社はB社っぽい子になる。不思議です」

なぜ「マイセルフJK」が登場したのか?


――話は変わります。昨年(2018年)はガールズトレンドにとってどんな年だったのでしょうか?

稲垣:
「やはり『マイセルフJK』がキーワードだったと思います。

先に挙げた『平成の女子高生(JK)に関する世代別トレンド』の『ライフスタイル編』に『ファッションやメイクを参考にする有名人は?』(自由回答)という設問があります。

1989年は松田聖子さんが第1位でした。以下、小泉今日子さん、中森明菜さん、南野陽子さんなどが続きます。

1996年は、安室奈美恵さんが半数の支持を得て、ダントツの第1位でした。

ところが2018年は第1位が『YouTuber』、第2位は藤田ニコルさんからYouTuberの『こばしり。』さんまで、多ジャンルの人に票が割れました。

この結果などは、『マイセルフ』の典型だと思います」

――どんな点が『マイセルフ』なのですか?

稲垣:
「安室奈美恵さんのようなカリスマ的スーパースターに一極集中せず、YouTuberも含めて様々な領域の方が支持を得ている点です。

スマホなどツールの発達で情報がたくさん手に入るようになると、情報を自分で取捨選択しなければなりません。だから、『自分らしさ』を演出できる方法を選ぶ。

すると当然、参考にする対象がちがってくる、ということだろうと思います」

「流行」が変われば「憧れの対象」も変わる。

若い女性のトリガーにひっかかる物をいち早くキャッチするのは、一筋縄ではいきません。

次回は引き続き、今とこれからのトレンドについてうかがいたいと思います。
(つづく)

「自分らしさ」が認められる時代|GIRLS’ TREND 研究所・稲垣涼子 前編
「カリスマ一極集中」の時代ではない|GIRLS’ TREND 研究所・稲垣涼子 中編
お互いを尊重しあうことに、価値が置かれています|GIRLS’ TREND 研究所・稲垣涼子 後編

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