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時間をかけない”高コスパ”の投資手法を重視|投資ブロガー・虫とり小僧 第2話

前回は、虫とりさんがどういう経緯で投資をはじめたかを伺いました。今回は、虫とりさんがどういう経緯で今の投資手法を確立したのかに迫っていきます!

虫とり小僧
いつか子供に伝えたいお金の話」を運営する著名な投資ブロガ―。
インデックス投資(投資信託を使った国際分散投資)による資産運用・各種保険・クレジットカード・節約方法など学校では教えてくれない「お金」に関することを書き綴っている。
【今回のポイント】
✓インデックス投資を用いた長期積立分散投資は、市場全体の平均点を狙う投資手法。
✓「淡々と続けて、最終的にはそこそこの結果になればいいや」というのがインデックス投資で重要になるマインドセット。
✓インデックス投資は、投資以外のことに楽しみを見出せる人や、とにかくコスパを重視するような人に向いている。
✓コスパこそが投資では大事だという発想になるまで、かれこれ5~6年くらいはかかった。

―昨今、金融庁が「長期・積立・分散投資」が、特に投資初心者には重要だと言っています(※)が、こうした投資手法は地味でつまらないので続けられないという声も良く聞きます。この点についてはどう思いますか?
※金融庁の「長期・積立・分散投資に資する投資信託に関するワーキング・グループ」の報告書はこちら

本当にそうだと思います。そもそも投資って、「少しでも多く儲けたいな」とか、「ちょっとでも人よりもうまくやりたいぜ」と思って始めることが多いわけですよね。そうやって短期的な分かりやすいプラスアルファを求めているのに、インデックス投資を用いた長期積立分散投資は、市場全体の平均点を狙う投資手法なわけです。

平均点を狙うわけですから、それを上回るプラスアルファはないわけです。ワクワクもドキドキもなく、極めて地味な日々を過ごすことになるので、本当に楽しくない投資手法ですよ(笑)。

―そこまで「つまらない」ということを力説されるとなんだか面白いですね(笑)。では、インデックス投資はどういう人に向いているんですか?

楽に低コストで平均点を狙えるなら、それでいいやって割り切れる人です。「淡々と続けて最終的にはそこそこの結果になればいいや」というのがインデックス投資で重要になるマインドセットなんです。ただ、継続するのは本当に簡単なようで難しいことです。途中で止めたくなる誘惑がたくさんありますからね(笑)インデックス投資は、投資以外のことに楽しみを見出せる人や、とにかくコスパを重視するような人には向いていると思います。

―簡単な手法だけど「継続」が難しいというのは深い言葉ですね。虫とりさんはどんな投資をしていますか?やはりインデックス投資1本なのでしょうか?(笑)

メインは、バランス型のインデックス投信の積立投資ですね。あとは、株主優待目的や遊びで個別銘柄への投資は少しやっている程度です。実は私は投資は「趣味」としては全く興味がないんです。むしろ、他に趣味がいろいろあるから投資なんかに時間をかけたくないのが本音です。

―投資が趣味ではないというのはちょっと以外ですね。投資にはどれくらい時間をかけているんですか?

投資にかける時間はせいぜい年間で合計2時間程度ですかね。半年に1回は資産配分をきちんと確認しますが、それでも使う時間は30分程度です。完全に自動積立にしているので、やることって実はそんなにないんですよ。

―え!?たったそれだけなんですか!?

はい、たったそれだけです(笑)。投資をはじめたばかりの頃はどんどん面白くなって、自分で緻密にリスクとリターンを計算して、最低コストのインデックス投信や国内外のETF(上場投資信託)を徹底的に洗い出して組み合わせて、相場を日々見ながらやっていたんです。

でも、あるとき、自分が投資のイロハを教えた会社の同僚と運用成果について話して考えが大きく変わりました。彼は、ただバランス型のインデックス投信1本だけを積立投資していたんです。

それで、運用成果を比較してみたらなんと同僚に若干負けていたんですよ(笑)。絶対に勝っていると自信があったので正直かなりショックでしたし、その事実を受け入れたくなかったです。今までの分析時間はいったい何だったのかと思いましたね。時間をたくさんかけて緻密に色々計算していた自分が馬鹿馬鹿しくなりましたよ(笑)。

―自分が教えた同僚に負けてしまうというのは、相当ショックが大きかったと想像できます(笑)。そこからどんな「悟り」を開いたんですか?

相場なんて、上がるときは上がるし、下がるときは下がるので、もうこうなったら「いかに時間をかけないか」という時間的なコスパを徹底的に考えるのが大事だと悟りました。

さらに今は、子供との時間や趣味の時間をとても大事にしているので、投資にかける時間はおまけに過ぎないという感覚でやっています。私は投資自体に別に楽しみは求めていないんですよ。「趣味としての投資」なのか否かはちゃんと分けて考えるのが大事ですね。

―なるほど、趣味としての投資とそうでない投資があるのですね。そこまでの考えに至るのにはどれくらいかかったんですか?

コスパこそが投資では大事だという発想になるまで、かれこれ5~6年くらいはかかったと思います。紆余曲折を経ないで、急にこうした境地に辿り着くのは難しいと思いますよ。バランス型のインデックス投信を1本持っていれば良いだけのとても簡単で楽な方法ですが、なかなかそこに落ち着かないものなんですよね。簡単はことは本当に難しい(笑)。

私自身も、2005年に投資をはじめて、リーマンショックまで相場の調子もかなり良かったので、個別株投資とかJ-REITとかアクティブ投信とか、儲かりそうなものにはついつい色々と手を出したくなってしまって、ちょこちょこやったりしました。なので手広くやりたい気持ちは本当に良く分かります。

しかし、コア資産の運用については、インデックス投信が根幹になるのだと自分に言い聞かせながら愚直にやり続けていました。リーマンショックで金融市場が大パニックになって、株式市場が世界的に大暴落しても淡々と買い増していました。

リーマンショックがどんなに危機的状況だとしても、大局的な相場循環の観点からはいつか戻ってくるだろうという確信がありました。もしこれで相場が戻らないなら、もう資本主義経済自体が崩壊するだろうなと思って諦める覚悟をしていたので、むしろ大チャンスだと思うことができました。

投資をはじめた頃の、一見投資には直接的には役立ちそうにない経済理論や金融論の勉強が役立った瞬間でしたね(笑)。

―簡単な投資手法なのにその境地に達するには5年も年月がかかるというのは驚きです。もっと手っ取り早く儲かる“投機的”なものの誘惑には負けなかったんですか?

私はお金については石橋を叩いて渡るタイプでして、理論的な裏付けがないと本格的には手を出せないんです。インデックス投資については、再現性のある理論的な裏付けがあるので自分のなかでしっくりきています。

デイトレードやチャート分析も勉強してやってみたりしたのですが、本の執筆者がうまくいっただけではないかとモヤモヤしてしまって続かなかったんです。ある程度データが溜まっていて、長い歴史的根拠があるものじゃないと納得できないようなのです。

あと、投資を始めた頃は仕事がとても忙しく、昼間にマーケットを見て短期トレードをする余裕はまったくなかったので、ある程度放置できる投資手法が向いていたのかもしれませんね。

【編集者の感想】
「コスパこそが投資では大事だという発想になるまで、かれこれ5~6年くらいはかかった。」という言葉には重みがありました。そんなにかかるのか、、、と正直びっくりしました。インデックス投資は、簡単にできる手法ではありますが、その域に辿り着くには様々な経験をしないといけないようです。シンプルな方法を愚直にできないのは、人間の「欲望」が邪魔するからかもしれませんね。相場の調子が良ければついつい欲が出てしまい、反対に相場が大きく下落するとビビって手放したくなる、ということから人間の非合理性が透けて見えます。次回は、なぜなかなか日本で投資が普及しないかについて深掘りしていきます。(つづく)
投資ブロガー・虫とり小僧
【第1話】投資デビューは保険勧誘がきっかけ
【第2話】時間をかけない”高コスパ”の投資手法を重視
【第3話】継続のコツは短期的な成果は見ないこと
【第4話】投資普及の鍵は"強制的"成功体験を積ませる仕組み

取材・文・編集/野水瑛介(FOUND編集部)、写真/荻原美津雄

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