「身を滅ぼす挑戦」ではなく「賢い挑戦」がある|厚切りジェイソン・第1話

「WHY JAPANESE PEOPLE!?」の決め台詞と、日本の文化を独特の感覚で笑いに落とし込んだ芸風で一斉を風靡した厚切りジェイソン氏。R1グランプリなどで披露された「漢字ネタ」「ことわざネタ」で、お腹を抱えて笑った人も少なくないはずです。

そんなジェイソン氏は現在、英語教育番組「えいごであそぼ with Orton」で子供やお母さんの人気ものに。英語学習のための書籍も多数執筆しています。また、芸人だけでなくIT企業の重役としても成功を収めてきた経験をベースに、語り手・モチベーターとしても活躍。

日本各地から講演依頼が殺到しているといいます。今回、人生の新たな挑戦をひとつひとつ続けているジェイソン氏の近況、また彼の目から見た日本の働き方改革に対する考え方などお話を伺ってきました。

厚切りジェイソン(あつぎり・じぇいそん)

1986年生まれ。ワタナベエンターテインメント所属。お笑い芸人。IT企業・テラスカイグループの米国・日本法人で取締役など役員として従事。NHKの幼児向け英語番組「えいごであそぼ with Orton」など数々のテレビ番組にタレントと出演しつつ、講演会なども精力的に行う。日米文化に精通した文化人・ビジネスマンとして活躍。


日本でお笑いに挑戦しようと思った理由


ジェイソン氏が、本格的に日本に住み始めたのは2011年。それからわずか4年後、2015年にはR1グランプリの決勝進出を果たします。常人離れした快挙です。

やはり、大きなモチベーションを持って日本に来たからでしょうか。実は、日本の芸人を目指して来日したという話もたびたび報道されますが、「少しだけ誤解がある」とジェイソン氏は経緯を説明します。

「僕はアメリカにいた頃からお笑いが大好きでした。お父さんとドライブしながらとか、小さい頃からよくお笑いのラジオを聞いたりしていました。コメディーというよりも、笑ったり、笑わせることが好きだった。

そんな僕がたまたま日本にいた。だから、日本でお笑いに挑戦してみようと思っただけです。そのままアメリカに住んでいたら、アメリカでお笑いをやっていたかもしれません。

何かこう、真顔でシュールに人を笑わすのは得意じゃなくないのですが、みんなと一緒に楽しむのが好きなんです。うん。知らんけどー!」

異国の地で働きながら、さらに高度な会話スキルを要する芸人に挑戦すると聞くと、なんだかとてもポジティブな気持ちの持ち主、もしくはスーパーマンのように感じる人も少なくないでしょう。

しかし当の本人は、ポジティブでもなんでもなく、「ただやってみただけ」と当時を振り返ります。

「僕は芸人として大きく成功できるとも思っていませんでした。ただとりあえずやってみようと。失敗したら次のことをやればよいだけだから。

最初から絶対成功しようと考えて何かに挑戦する人もいるかもしれないですが、僕の場合はそうじゃなかった。どうなるか分からないけど1年間はやってみる。それでどうなるか自分で確かめて、その次の行動はその後に考えようと。

やりながら何が上手くいくのか、何が上手くいかないのかを見極めていく。ポジティブというか、現実を見ていただけなんです。うん。NEXT!」

芸能界で生き残れているのは運?

大きな目標を持って道を切り拓いてきたというよりは、「自分が何をしたいのか固まっていないからいろんなことに挑戦して、いけそうなところに力を入れてきた」と、自然体で語るジェイソン氏。現在の日本の芸能界での活動も、“運”に身を任せている部分が大きいと言います。

芸能界は本当に特殊。売れ続けられるかどうかは“他人次第”。受け入れてもらえるかどうか。もちろん、歌唱力や演技力、トークスキルとか才能を持っていて長く生き残れるタレントもいるけれど、僕はそっちじゃないしね。

好まれるタレントは時代とともに変わっていきますし、キャラクターを作ったり、冠番組を持とうとか目標を持って努力をしたとしても報われるとは限りません。

僕の場合、僕自身の自然な会話やキャラクターを、メディアの作り手のみなさんが使ってくれたり、必要としてくれているから、まだ生き残れている。本当に運だけなんです

自然体でとにかくやってみる。そんなスタンスで人生を歩んできたジェイソン氏に対して、最近では講演依頼が増え続けているといいます。

その数、実に週2~3回。笑いのエッセンスを取り入れ入れつつ、聴衆に気持ちよく、また楽しい時間を提供するのが、ジェイソン氏の「最近最も得意かつ多く行っている仕事のひとつ」だそうです。

イチかバチかの挑戦ではなくて…

「みなさん聞きたがるテーマは『挑戦』。僕は“いちかばちか”で何があっても成功しなければならない『身を滅ぼす挑戦』ではなく、『賢い挑戦』があると思う。

うまくいかなかった時に、すべてダメにしてしまうような挑戦は避けましょうと。僕はお笑い芸人をやりながら、会社員をやっていた。空き時間だけを使って、上手くいきそうになったら時間の割合を変えてもらっていました。

同期芸人は会社を辞めて挑戦する人が多かったので、結構バカにされていたんですが(笑)。結果的にその人たちは誰もテレビに出られていません。さきほど言ったように、芸能界は覚悟じゃなくて運。

はまるかどうかは分からないので、覚悟ではなくて、上手くいかなかった時に次の挑戦に向けて余力を残した賢い挑戦をすべきだと考えていました。

それは、みなさんの人生の挑戦も同じことが言えるんじゃないかなと。うん。興味があればぜひ事務所にお問い合わせください」

なおジェイソン氏が勤務しているIT企業・テラスカイは、2019年3月1日にテラスカイベンチャーズという新企業を設立しました。

ベンチャー企業に投資を行い、成長を支援するファンドの役割を担います。ジェイソン氏はその新会社の取締役も務めています。

失敗していないというのは怖い

「投資にも同じことが言えるんじゃないですかね。ピボット(方向転換の意味)ではないですが。思うに、アメリカには上手くいかなかった時のことまで含めた、チャレンジするためのモノゴトの考え方があります。

例えば、シリコンバレーでは失敗したら一生信頼できないとはなりません。むしろ上手くいかなかったことを評価・分析して、次はどうするか計画まで完璧に立てられる人がいたら、失敗したことがない人物より信頼されます。

失敗を経験しているし、その経験から次の失敗を回避したり、耐えることができると分かっているからです。日本だと一回も失敗していない人が信頼されるみたいなんですけど、本当は怖いことですよ逆に。

状況がきつくなったら逃げ出すのか、やり方をしっかり変えて成果を出せるのか、事前に判断できませんからね」

日本では「成功できなければ腹を切る」ではないですが、「すべてを懸けて」とか「他をすべて捨てて」というような感覚が挑戦と同義と捉えられることが少なくありません。

たしかにそのような「腹切り型の挑戦」で成果を得られる人もいるかもしれませんが、ほとんどの人は「失敗=すべてを失う」という恐怖に捉われ、挑戦そのものをしなくなります。

アメリカで出世できないタイプ

つまり、挑戦をするのは「成果」を出し「成功」するためですが、腹切り型だと挑戦そのものが目的化・神格化してしまうことでとっつきにくくなってしまうのです。

結果、挑戦や失敗から得られる経験やノウハウ、人間力が蓄積されませんし、成功が生まれることが少なくなるという悪循環が生まれます。まさに「WHY JAPANESE PEOPLE!?」ですね。

「うーん、僕の印象ですが日本ではほとんどの人が大きなチャレンジしませんよね。昔、日本のIT企業社長の友達に言われた笑い話ですが、『日本で出世する方法は、入社後に大きなチャレンジをひとつだけ成功させて、その後は一生何もしないこと』と言われたことがあります。

成功した人という印象を持たれたまま安定したこと続けていけば、最後に社長として残ると。ちょっと、そういうのあるよね。アメリカでは最近何をやったのか言えないひとは出世できない。

10年前の話はどうでてもいい。去年、今年、会社に貢献したのは何だ!となります。なんも失敗も犯していないという人はいらない。クビだよ。失敗してないだけであって、それは社員じゃなくてもできるじゃん。うん。NEXT!」

日本人にとっては、耳の痛い話です。日本人は、失敗を恐れてチャレンジする人が少ない気がする…。過去の栄光にばかり、すがってても意味はない…。

でも、それならば、どんな風に生きていけば良いのでしょうか? 第2話では、ジェイソンさんが考える「挑戦を成功させる秘密」に迫ってみます。

取材・文/河鐘基(ロボティア)、写真/荻原美津雄、取材・編集/FOUND編集部


厚切りジェイソンインタビュー

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