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「貯蓄から投資へ」の一歩は、家族間でお金について話すこと|マネーコンサルタント・頼藤太希 第2話

第1話では、バブル崩壊前の高い預金金利水準だった頃の慣習が抜けきれないことが、投資文化が普及する妨げになっているのではないかという話が印象的でした。今回は、もう一歩掘り下げて、「投資」について聞いていきます。

マネーコンサルタント・頼藤太希
【第1話】投資を身近にできるかは”手触り感”がカギ
【第2話】「貯蓄から投資へ」の一歩は、家族間でお金について話すこと
【第3話】資産運用では“攻め”と“守り”のバランスを考えることが大切
【第4話】人工知能(AI)は脅威ではない

頼藤 太希
(株)Money&You代表取締役。https://moneyandyou.jp/

慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。女性向けWEBメディア『FP Cafe®』や月200万PV超の『Mocha(モカ)』を運営。執筆、書籍の出版・監修、講演などを通じて日本人のマネーリテラシー向上に努めている。
【今回のポイント】
✓実際に行動に移すのは、実は男性より女性のほうが多い。
✓はじめての投資では「長期」「分散」「積立」が基本。
✓夫婦で今後のライフプランについてしっかり話すことが大事。
✓日頃から夫婦でお金の価値観や人生観をすり合わせておくことが大事。
✓ファイナンシャルプランナーはカウンセラー的な役割を担うことが増えている。
✓夫婦でしっかり話すことが「貯蓄から投資へ」の流れをつくる一歩になる。
✓意外に悩みが多いのが共働き家庭で、お互いの支出についてチェックが甘くなる傾向にある。

―日本人は過剰なほど投資を毛嫌いしますよね。足元で変化の兆しは感じていますか?

着実かつ確実に変化してきていると思いますよ。特に若い世代の一部は、このままではダメだと気付きはじめてきたと思います。銀行預金だけではお金が全く増えないという現実を見て、投資について勉強しないとまずいなと感じている人は増えています。実際、セミナーに若い参加者は増えていますし、女性も目立ちます

セミナーをしていて感じるのは、素直な女性が多いということです。「専門家が言っているのならそれが大切なんだろう!」と受け止め、実際に行動に移すのは、実は男性より女性のほうが多いです。男性はというと、ちょっと斜に構えているというか、言いたいことが色々とあるようで、結局行動しないことが多いんですよね(笑)。

はじめての投資では「長期」「分散」「積立」が基本になりますが、こうした教科書的で、守りを重視した地味なことは、素直さがある女性のほうが向いているかもしれません。男性は、「長期」「分散」「積立」では正直なところ物足りないようで、株式投資で「どのように儲ける銘柄を見つければ良いか?」「どのタイミングならもっと儲けられるのか?」などテクニックを聞きたいように感じます。そもそも基本については自分でしっかり勉強したいのかもしれないですね。

一昔前は、女性は男性より稼げないということもあったと思いますが、今はバリバリ稼ぐ女性は増えており、女性にも投資余力がありますので、これからは女性を主軸として、「長期」「分散」「積立」という王道の投資スタイルが浸透していく可能性はあるかもしれません。男性は心のどこかで「お金は本業の仕事でガッツリ稼げば良いじゃん!」と思っているので、どうせ投資するなら、地味で地道なものではなく、プラスアルファを狙っていくような積極的な投資を好む傾向にあると思います。

―確かに女性のほうが長期積立分散投資は向いているというのはちょっと納得感がありますね。ちなみに、どんな方々がセミナーに参加しているのでしょうか?特徴はありますか?

結婚されている場合はご夫婦で参加されることが多いです。実は、夫婦で今後のライフプランについてしっかり話すことはとても重要なんです。最も近い存在なのに「老後どうしたいのか?」についてはお互い何も分かっていないことがほとんどですね。「何にお金を使うのが楽しいのか?」などお金に関する価値観をすり合わせておくことも大切です。

少し照れ臭かったりするかもしれませんが、ファイナンシャルプランナーなどの専門家を第3者として間に入れて話すと喧嘩せずに建設的な議論ができます。今や、ファイナンシャルプランナーはカウンセラー的な役割を担うことが増えてきていると感じています。夫婦で個別相談に参加したことで、互いの考えが明確に理解でき、課題が整理できて良かったという声をよくいただきます。

―セミナーは夫婦で参加されるのですね。ちょっと意外でした。夫婦間でしっかり相談するのが大切なんですね。

とても大事ですよ。「貯蓄から投資へ」と声高に叫ばれていますが、最も大切な存在である夫婦や家族ですらお金のことについて話さないわけですから、なかなか投資文化が浸透しないのは当然かもしれないですね。まずは夫婦でしっかり話すことが「貯蓄から投資へ」の流れをつくる一歩なのかもしれません。しかし、お金の話は生々しいですし、切り出すタイミングが難しい部分はあります。

また、お金のことは感情と密接に結びついているので、夫婦のどちらかがお金に対してネガティブな感情を持っているとしにくいものです。お金の話を切り出したものの、「このタイミングでお金の話をするのはやめない?」という反応をされてしまう可能性は高いですね。

―大事なのは頭では分かるのですが、やはり夫婦でお金の話をするのはちょっとハードルが高そうです…。何かポイントはありますか?

まずやるべきなのは、お互いの将来の夢や目標についてイメージをきちんと共有することです。そうすることで、そもそもいくら必要なるかということが分かります。そこを「見える化」してはじめて、現状とのギャップをどう埋めるかという話をすることができます。ビジネスと一緒ですよ。

あと、あまり深刻に考えず、旅行計画を立てる延長と考えるのも良いかもしれません。旅行の目的は、とにかくゆっくりしたいのか?欲張りにあちこち観光したいのか?食事を重視したいのか?など、旅行の優先順位が見えてきますよね。そういう価値観、好き嫌いみたいなことをすり合せていく作業が重要なのです。

―なるほど、旅行計画を立てる感覚というは分かりやすいですね。個別相談に来る夫婦は、どんなことに悩んでいるのでしょうか?

「お金を貯めているつもり、支出を削っているつもりなのになかなかお金が貯まらない」というのが一番多い悩みです。あとは、「世帯収入が多い割には貯蓄ができていない」「忙しいのでつい家計管理がおろそかになりお金がなかなか貯まらない」 など、意外に悩みが多いのが共働き家庭です。夫婦ともに収入があるので夫、妻ともに自由になるお金が多くなりがちで、その結果、お互いの支出についてチェックが甘くなる傾向にあるようです。「相手がしっかり貯蓄してくれているだろう」と思っていたらお互いに好きなように使っていて全然貯蓄できていなかった!というケースもよくあります。

家計管理はもちろんのことですが、日頃からお金の価値観や人生観を夫婦ですり合わせておくのは本当に大事だと思います。50代の夫婦が相談に訪れた時の話なのですが、老後について相談したいというのが相談趣旨でした。驚いたことに、一番の老後不安は老後資金準備とは別のところにありました。その面談で実は夫が、定年退職後に妻に離婚を切り出されてしまうのではないかという不安を抱えていたことが発覚したのです。でも、妻としては、そんなつもりはまったくないということを夫に話していました。老後をどのように過ごしていくのか、人生観を普段話しておらず、面談が話すきっかけとなり、結果として夫婦の絆は深まったのです。

―夫婦だからこそ「言わなくても分かるだろう」という甘えの気持ちはありそうですね。勘違いが積み重なっていくのはとても怖いことです。夫婦にまつわる話はいろいろ出てきそうですね。

ちなみに、結婚されている女性が一人で相談に来られる場合は、離婚を考えているケースが多いかもしれません。離婚後、どうやって経済的に自立して生きていけば良いのかという相談に来られるのです。女性は裏で周到に準備していますよ(笑)。女性は離婚について一度心が固まると、気持ちがひっくり返ることはほとんどないように感じます。決意は固いので、旦那さんは離婚を切り出されたら、時すでに遅しと思ったほうが良いですね(笑)。そうなる前に、しっかり夫婦で話し合うことが大事です。

【編集者の感想】
夫婦や家族ですらお金の話をしない国で、「貯蓄から投資へ」はなかなか起こらないだろうという話はとても印象的でした。確かに!と目から鱗でした。まずはそこから変えていく必要がありそうですね。第3話では、投資で重要な「マインドセット」について深掘りしていきます。(つづく)

取材・文・編集/野水瑛介(FOUND編集部)、写真/荻原美津雄

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