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eスポーツにもっとエンターテインメントを | ゲームジャーナリスト 野安ゆきお 第3話

取材・文/鈴木俊之、写真/荻原美津雄、取材・編集/設楽幸生(FOUND編集部)

eスポーツは、見方を変えれば、過去のスポーツの価値観を変える可能性も秘めていることを前回はお聞きしました。

今回はeスポーツの日本における可能性について、前回同様ゲームジャーナリストの野安氏にうかがいます。

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野安ゆきお(のやす・ゆきお)
1968年東京生まれ。ゲームジャーナリスト。
ファミコン時代からゲーム雑誌、ゲーム攻略本などの執筆・編集を手掛け、これまで作成したゲーム関連書籍は100冊を超える。現在はビジネス面からゲーム産業を見つめる執筆活動を中心に活動中。

eスポーツが日本で普及するには?

日本では、eスポーツの存在が注目されはじめたばかりです。
世界の現状はどうなのでしょう?

野安ゆきお(以下、野安):
「たしかにまだ、1000億円程度の市場規模です。じゅうぶんに大きいとも言えますし、ゲーム全体の産業規模からすると、まだ小さいとも言えます」


しかし、人気ゲームの競技会では、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンや、ロサンゼルスのステイプルズ・センターといった、米国を代表するアリーナで開催されるほどの人気です。

野安:
「はい、なによりすごいのは賞金額です。

たとえば、先に述べた、最近人気の高いMOBAという分野のゲームである『DOTA2』(ドータ・ツー)。

2018年の夏に行われたこのゲームの世界大会『The International 2018:Dota 2 Championships』では、賞金総額が2500万ドル(約27億7000万円)でした。

さらに、中国のテンセントが支援するエピック・ゲームスは『FORTNITE』(フォートナイト)の次回ワールドカップで、賞金を1億ドル(約108億円)にすると発表しました。

ゲーム中継の視聴者数もすでに億単位です。

現在はニッチですが、将来性を見越して、コカ・コーラ社やトヨタといった世界的な企業も参入しています」

業界全体に勢いを感じます。日本の現状はどうですか?

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野安:
「現在は、テンセントをはじめとする中国企業が強いですし、もちろんアメリカやカナダ、韓国も盛んです。日本は後塵を拝していたのが現状ですね。

とはいえ、2018年から盛り上がってきたので、出遅れたところから一気に追いつきつつありますよ」

なぜ日本は出遅れているのか?

一時期、テレビゲームといえば日本でした。

なぜ日本は出遅れたのでしょうか?

野安:
「日本では、任天堂のファミリーコンピューターなどのゲーム専用機が普及し、子供がユーザーの中心だったことがあげられます。

展示会などでメーカーの主催する小さな大会は存在しましたが、スポンサーや賞金が付き、ガチンコで技術を競う……といった方向に発展しなかったんです。

大人が遊ぶPCゲームの大会を源流とするアメリカのゲーム大会とは、スタート地点が違っていたんですね。

また、その背景に法律の問題が立ちはだかっていたことも、知っておくべき大切なポイントです」

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eスポーツが法律に反しているということですか?

野安:
「日本には、1948年に施行された風営法という法律があります。

もともとバーやキャバレー、パチンコ店などにおける、業務の適正化のために制定された法律です。

この風営法が1982年に改正された際に、青少年の非行防止の目的で、ゲームセンターの営業も規制対象となりました(同法2条1項5号)。

店舗にゲーム機を置いて、客に遊ばせる場合は、同法に従わなければならないんですね。

そのため、日本はゲーム大国であったにもかかわらず、ゲームを楽しむ場所を提供するビジネスは厳しく規制されました。

その結果、大規模なゲーム大会を成立させるのが困難だった、という歴史があるんです」

法律でしばられているということは、今後の普及もむずかしいということなのでしょうか?

時代に合わせた法律を

野安:
「むずかしくはないけれど、諸外国よりも超えるべきハードルが多い、と考えてください。

個人的には、とにかくeスポーツを風営法のカテゴリーから除外してもらうことが最善の道だと思っています。これは、かなり困難でしょうけれど。

でも、不可能ではないはずなんです。その手本になるのはビリヤードです。

かつてはビリヤード場も風営法の規制対象でした。

しかし業界団体が、『ビリヤードは健全なスポーツである』と主張し、その後の改正で風営法の規制からはずすことができたのです。

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eスポーツも同じように、国に働きかけるべきだと思っています。

また、その流れを後押しするためにも、一般の人たちへの啓もう活動に力を注ぐべきだとも考えています」

では風営法の規制さえ外れれば、海外のように賞金が億単位の大会を開くことができるのですか?

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野安:
いえ。高額賞金を用意しようとすると、景表法や刑法の賭博罪といった、別の法律がハードルとして立ちはだかります。

ただし、これはいろいろな方法で回避することが可能なので、日本でも高額賞金の大会を開くことは不可能ではありません。

賞金額が上がれば、相乗効果でeスポーツの知名度は、さらに向上するかもしれませんね。

結論から言うと、日本でeスポーツを盛り上げるのは、諸外国のように簡単ではない。

でも、いろいろな法律と折り合いをつけ、うまい仕組みを設計することでクリアできる状態だ、と考えてください」

エンターテイメントとしてのeスポーツ

道のりは長そうですね。

野安:
「だいじょうぶですよ。このムーブメントは順調に加速しています。

たとえば現在、サッカーのJリーグが明治安田生命の支援を得て、『eJ.League』という活動をはじめています。

また、2018年3月には、吉本興業がeスポーツへの参入を発表しました。

世界一を目指したプロチームの運営、プロゲーマーの発掘と育成、ゲーム実況配信、eスポーツイベントの開催などを柱に活動を本格化しています」

嗅覚の鋭い企業はすでに動いているんですね。

野安:
しかし早いといっても世界的に見れば後発です。
前に述べたアジア競技大会では、採用されたゲームのほとんどが中国メーカーの作品でしたし、ここからの巻き返しは容易ではありません。

だから、日本のゲーム産業は、これまでとはちがう切り口でeスポーツを盛り上げることを考えるといいと思うんですよ。

たとえば、エンターテインメントとしてのeスポーツの側面です。現在のeスポーツの大会は勝負を争うものばかりです。

ここに、ゲームはうまくないけど、やたらおもしろいゲーマーが登場したらどうなるでしょう?
極論ではありますが、プロレスのように、悪役ゲーマーや覆面ゲーマーが現れて、正義の味方と丁々発止の戦いを繰り広げたら?

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ガチな競技性を追求するだけでなく、そういった形でeスポーツが盛り上がる方法が模索されてもいいのではないかと、わたしは思うのです。
テレビのバラエティ番組大国である日本は、そういうのが得意なような気がするんですけど、いかがでしょう(笑)。

たしかに、競技性だけがテレビゲームの面白さではありませんからね。

つい高額な賞金などに話題がいきがちなeスポーツ。
野安さんのお話をうかがって、eスポーツが持つさまざまな可能性について知ることができました。ありがとうございました。

eスポーツはTVゲームの枠を超えるか? |第1話
eスポーツの課題と可能性   |第2話
eスポーツにもっとエンターテインメントを!   |第3話

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