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「身近」を超えビジネスの現場になった宇宙| 宇宙コンサルタント・大貫美鈴 第1話

取材・文/河鐘基(ロボティア)、取材・編集/FOUND編集部

夢、SFの世界ではないビジネスとしての可能性

「宇宙」という言葉から、みなさんはどんなキーワードを連想するでしょうか。おそらく「夢」や「SF」、はたまた「天才など限られた一部の人々が活躍する舞台」というようなイメージを抱く方々が少なくないはずです。なかには、「自分の人生とは無縁な別世界」と考えている方もいらっしゃるでしょう。(筆者はブラックホールの存在が気になっていて、想像すると夜に寝れないことがあります)。

20世紀、宇宙開発を担ってきたのは国や政府でした。しかし、21世紀に突入し約20年が経過した現在、その主要な担い手は民間企業にシフトし始めています。「夢」や「SF」の世界ではなく、大きな可能性を秘めた「ビジネス」の舞台として、宇宙が大きな注目を集めているのです。

では、民間企業が切り拓く「宇宙ビジネス」は、我々の生活にどのような影響や恩恵をもたらすのでしょうか。今回は、グローバルな活動をされている宇宙ビジネスコンサルタント・大貫美鈴氏に詳しいお話しをお伺いすることにしました。

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宇宙開発の部署にて

大貫氏が宇宙と初めて接点を持ったのは、意外にも大手建設会社に勤めていた時。その出会いは、「“事故”のようなものだった」と当時を振り返ります。

大貫氏:
「私は生粋の文系で、数学や物理、化学など理系避けて生きてきました。ところが、何の因果か就職した清水建設で宇宙開発の部署に配属されてしまったのです。

当時、宇宙開発室では月面基地の提案や宇宙ロボットなどの技術開発をしており、また、企業としては世界で初めて『宇宙ホテル構想』を提案しました。

この提案がきっかけで宇宙旅行に関わるようになり、宇宙に好奇心を抱き始めました。というのも、宇宙というテーマには私の想像と違って、衣食住遊など身近な生活に関わることも含まれていたからです。それに気がついた時、文系の私でも宇宙に関ることができるのかなと思いました。」

当時、清水建設が国際宇宙大学の日本窓口を担っていたことも、大貫氏が宇宙ビジネスの道に邁進することになる大きなターニングポイントになったそうです。

国際宇宙大学はアメリカに設立された、宇宙の専門家を養成する高等教育機関で、各国持ち回りで夏期セミナーを開催してきています。フランス・ストラスブールに本部キャンパスができ、通年コースも設置されています。

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大貫氏:
「私は学生として参加したことはなくて運営側として関わっていましたが、国際宇宙大学には世界中から学生や一流の宇宙専門家が講師として集まっていました。

この学校は、宇宙工学、宇宙利用、宇宙社会学、宇宙経営・管理など、宇宙に関する幅広い学科で構成されていて、恵まれた機会に触れ、ネットワークができたことは、今でも財産です。」

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加速度的に成長する宇宙ビジネス

民間による宇宙ビジネスの芽が生まれる瞬間から、世界の動向を最前線で見守ってきた大貫氏。ここ数年の業界の成長スピードは、目を見張るものがあると言います。

大貫氏:
「政府が宇宙開発の主役だった頃、衛星の打ち上げという企画ひとつとっても10年1サイクルという感覚が普通でした。一方で、民間企業が衛星やサービスを市場に投入するとなると、企画から利益を得るまでのタイムスパンを削減しなければなりません。

政府の宇宙開発では、たとえば衛星の打ち上げは大型化の一途をたどっていました。小型衛星という新たなプラットフォームが出てきて、多様な小型衛星が協調しながら運用されることで、さまざまなことができるようになり、宇宙ベンチャーなど民間企業が衛星やサービスを市場に投入しやすくなりました。また、小型衛星により、企画から利益を得るまでのタイムスパンは削減されることになりました。

そのため、プロジェクトのサイクルがどんどん短縮されています。開発のスピードが速いのは、IT業界で用いられるアジャイル開発からの影響も大きく『アジャイル・エアロスペース』と呼ばれていて、宇宙ビジネスの特徴でもあるのです。

宇宙ビジネスが展開されるエリアは主に、地球表面から高度2000㎞あたりの「低軌道」、2000㎞から3万6000㎞未満の「中軌道」、そして3万6000㎞前後の「静止軌道」に区分されています。」

▶︎ 宇宙ビジネスが展開されるエリア

・低軌道:高度2000㎞以下あたり

・中軌道:2000㎞から3万6000㎞未満
・静止軌道:3万6000㎞前後

静止軌道の民営化・商業化は1990年代頃から徐々に始まりましたが、ここ10年間は低軌道を中心に民間企業の進出が爆発的に加速したと大貫氏は説明します。

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売上ベースで民間が80%以上に

大貫氏:
「『通信衛星』や『放送衛星』に関連した大きな市場がありますので、以前から政府の売上げが100%というわけではありませんでしたが、この10数年の宇宙商業化で2005年に1700億ドルだった世界の宇宙産業の売上げは、2017年には3800億ドルを超えて2倍以上にのびました。それとともに民間が占める割合が大きくなり、現在では、世界の宇宙産業の売上げは商業が80%以上を占めます。2040年には宇宙産業の売上げは1兆ドルを超えると展望されています。」

▶︎世界の宇宙産業の売上

2005年に1700億ドル
2017年に3800億ドル以上
・現在の売上の80%以上が民間

一方、各国政府が宇宙に支出している金額は、防衛の宇宙予算を入れても市場全体の19%程度。商業化が急ピッチで進んでいることになります」

そうなると気になってくるのは、民間企業が手がける宇宙ビジネスの具体的な中身です。例えば、「ロケットや衛星を開発するメーカー」などはイメージしやすいのですが…その他にはどんな企業があるのでしょうか?(第2話に続きます)

「身近」を超えビジネスの現場になった宇宙| 宇宙コンサルタント・大貫美鈴 第1話
宇宙空間に生まれる様々なビジネス|宇宙コンサルタント・大貫美鈴 第2話

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