見出し画像

第18章 誰かの一言で、株価が動くの?

グッと株式投資に興味が湧いてきて、すっかり株価の動きが気になりだしたモネ。

「あの会社が新製品を出すんだってさ」
「あの会社が不祥事起こしたんだって」

そんな話さえ日常会話に登場するようになった。

しかし、よく聞く「景気が良い悪い」とか「市場の風向きが良い悪い」とか、ニュースでよく聞くフレーズについては、わかったような気になっていても、実はわかっていないことに気が付くのだった。

株式市場の「風」を読もう

M:
「風を読む」って、なんだか曖昧な印象があるんですけど、どういうことなのでしょうか? 

B:
ゴルフで、ボールの行方を計算するのに風を読むことが大切なように、株式投資でも、風を読むことが大切なんだ。

けれど、この場合の「風」というのは、「市場の風向きが上向きか、下向きか」ということに注目することを言うんだ。

M:
先生、株式市場の風向き?何の話か今ひとつわからないなぁ。

B:
株価が上がったり下がったりする要因としては、「その会社の株の需要と供給のバランス」「その会社の業績や人気」が挙げられる。

つまり、「会社単体」の状況で上下するというのが基本にある。

しかし、それとは別に市場の状況(市況と言うんだよ)に影響を受けることがあるんだ。


市場の状況、すなわち市況というのは、天候や政治的状況、為替の動きや戦争、突発的な大きな地震などによっても変化する。


どんなに業績がいい会社でも、この市況が悪いと、良い時より株価が伸び悩んだりするわけだ。

M:
エッ!天気まで関係あるんですか?それに政治までも? 

それって、一体どういうことなんだろう? 

いまいちピンとこないなぁ。

B:
では、例を出そう。

例えば、アメリカの大統領が、鉄鋼とアルミニウムの輸入品に関税を課す方針を発表したら、それによって株価にも大きく影響する可能性があるんだ。

M:
ん?ちょっとわからないです。

B:
つまりだな、アメリカの大統領は、基本的にはアメリカのことをまず第一に考えたいのは当たり前だよね。だって自分の国のボスだもの。 

関税というのは、「海外から入ってくる製品などにかかる税金」のことだ。

つまり、海外から何かの製品が安く入ってきたとしたら、同じものを国内でつくっている人は、儲からなくなっちゃうだろ? 

だから「国内の生産者を守るために、海外から入ってくる製品に税金をかけましょう!それで国内の生産者を守りますよ!」っていう方針で、外国の製品に税金を高くかけるわけだな。

M:
でもそれって、アメリカ国内で鉄鋼とかアルミニウムを生産している人にとってはありがたい話です。 

だって、ライバル・メーカーの品物が高くなるわけだもの。

でも、ジブンがわからないのは、「国外からの輸入品に関税を課す方針」を出すと、どうして株価に影響が出るのかってことなんです。

B:
確かにわかりにくいな。

アメリカに鉄鋼やアルミニウムを今まで輸出していた海外の会社は、たまったもんじゃないぞ。

たとえば鉄鋼輸入品には25%の関税をかける、ってアメリカの大統領が言ったとしたら、今まで1万ドルの価格で販売できていたものも値上げをしなければならなくなってしまう。

単純計算をするならば、1万ドル+(1万ドル×25%=2500ドル)=1万2500ドルの値段で売らなければ、それまでと同じ利益は確保できないということになってしまう。

って、ことは…?

100万円-(100万円×25%=25万円)=75万円 

にしかならなくなっちゃう、ってことになるんだ。

※本来、関税額は物品の価格(正味価格+輸送費+保険費用+加算要素で構成。課税価額という。)に関税率を掛けたものになります。

M:
そうなったら…、「高い!買わない!」っていうお客さんが増えてしまうかもしれないですよね。

B:
まさにその通りだ!

この影響は、国外だけの話じゃないんだ。

たとえばアルミニウムを使って製品を作っていたアメリカ国内のメーカーは、今まで安く買えていた海外のアルミニウム材が、関税の影響で値上がりしたら、ビジネスには痛い打撃だろう? 

コストがかかってビジネスにマイナスが出てしまう、と、投資家が察知したならば、自分の所有する株の中にアルミニウムを使っているメーカーのものがあれば、「売る」ということも1つの選択肢になってくるわけだ。


だからこそ、大きな方針を決める、政治家の鶴の一声は株価に影響を与えることがあるんだ。

天災や人災だって、それによって売れたり売れなかったりする製品が出てくる。だから天災や人災も、市況に影響を与える、というわけなんだな。

市況を見ると言われても、何をみればいいの? 

M:
つまり、風を読むっていうのは、市況が良ければ投資家にとってそれが追い風になるし、市況が悪ければ投資家にとっては向かい風になる、ということですね。

そして、その風向きがどっちにどのぐらいの強さで吹いているかを見るためには、政治や経済のニュースからヒントを得ようってことですね。

B:
おお!モネ凄いじゃないか。まさにその通りだ。


では、その市況の良し悪しをどう見るか? 

そこで大事になってくるのが、「株価指数」と呼ばれる「株式市場の状況を、ある一定のルールを決めて数値化したもの」が大事になってくるんだな。

この指数は、色々な種類があるけど、ここでは日本において代表的な5つの指数を教えよう。一番有名なものとして挙げられるのは、「日経平均株価」と呼ばれる指数だろうな。

M:
あ!それは自分も聞いたことがありますよ。 

よくニュースで、「今日の為替と株の動きです」っていう話の時に、「日経平均株価が幾らで、昨日よりもいくら安い、高い」って、ニュースキャスターが伝えてますよね。あれのことでしょ?

B:
うむうむ、その通りだ。

「日経平均株価」

「日経平均株価」というのは、日本経済新聞社(日経新聞を発行している会社だな)が、東証一部(日本で一番大きな株式市場のこと)に上場している会社のうち、225の銘柄の株価を平均して出した値のことなんだ。

活発に取引されている銘柄を、業種のバランスも考慮しながら選ばれているので、株式市場が今どういう状況なのかを把握するのに多いに役立つわけだ。


たとえば「今日の日経平均は21,811円で、昨日よりも492円安い」みたいに使われる。

「TOPIX(Tokyo Stock Price Index)」


2つめは「TOPIX(Tokyo Stock Price Index)」と呼ばれる指数で、日本語だと「東証株価指数」と呼ばれているな。

M:
日経平均株価は、「選ばれた225社の株価の平均」ですよね?これはよくわかるのですが、このTOPIXっての全然ピンとこないなぁ。

B:
これは「トピックス」と読む。日経平均株価は、選ばれた225社の株価の平均だったな。

それに対して、このTOPIXは、東証一部に上場している全ての銘柄の株価の総額(株価×発行されている株の全数)を、ある計算で数値化したものなんだ。

M:
じゃあこれも、「今日のTOPIXは幾らです〜」ってニュースに流れてるのかなぁ?

B:
そこが日経平均株価と違うところで、このTOPIXは1968年1月4日の株価の総額を100ポイントとして計算するんだ。


たとえば、モネは知らないだろうが、日本の景気の良かった「バブル」と呼ばれていた1989年末には、2884.80にまでなったんだ。

ちなみに2019年7月だと、1589.84ポイントだ。(2019年7月2日終値)


TOPIXの動きをみることで、日本経済がどうのように上がったり下がったりしているのかを知るのに役に立つ、というわけだ。

M:
2つでお腹いっぱいになってきました。でも、3つめの株価指数も一応教えてください。

マザーズ

B:
3つめは、「東証マザーズ指数」と呼ばれる指数だ。

「マザーズ」というのは、東京証券取引所が開設する市場の1つ。この市場には新興企業、ベンチャー企業が上場している。

中小企業や新興企業の株を持っている人がチェックしていることが多いな。

同じようにJASDQ(ジャスダック)という市場もあって、ここの市場の動きは「ジャスダック指数」で株価の状況がわかるんだよ。


そして5つ目が、「東証第二部株価指数」で、これは、東証一部よりも規模などが小さい会社が上場している「東証二部」の株価を見るのに使われるんだな。

M:
なるほど、5つ、いっきに学んでしまったなぁ。

ところで、海外の株式市場でもこんな指数ってあるんですか?

B:
もちろんあるよ。一番有名なのは、アメリカの「ダウ平均(ダウ工業株30種平均)」と呼ばれる株価指数だね。

これは日経平均株価と、とても似ているんだな。アメリカのS&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社という通信社が発表してる指数だ。


ちなみに、日本のTOPIXみたいな指数もアメリカにはあって、それがS&P500で、500の会社がその対象になって、指数が出ているんだよ。

M:
へェ〜、でもジブンには海外はあんまり関係ないかもしれないなぁ。

B:
フッフッフ、それは甘いな。

日本とアメリカは、ビジネスにおいてつながりがとても強いから、アメリカの市場が日本に影響することは非常に多いんだ。

日経平均は、ダウ平均に連動して動くことが多いということは覚えておくといい。

M:
なるほど、そうなんですね〜、どんなところからでも世界はつながっているんだな。

株って、面白いですね!だって、アメリカの指標と日本の指標がつながっているなんて、ふだんは考えもしないですからね。

「株式市場の風を読む」それはどうやら、毎日の生活やニュースと関係があることに気づき始めたモネ。

株価の動きを知ることは、世の中の動きを知ることだ、ということが、ブルベア先生のおかげで少しずつわかってきたようだ。

株式投資にたいする興味がますます膨らんでいるモネは、いろいろな会社のこと、世界の市場のことが気になり出した。

自分の資産、一番最近気に入っている会社だけに投資しようかな? 

それともあちこちに投資してみようかな? 

などと眠い目をこすりつ考えながら、今日も月の夜は更けていくのであった。
(つづく)


【 資産運用の図解教室 の 目次 】

第0章 お金を増やす、ということ 。
第1章 「投資」による「資産運用」って、なんだ?
第2章 投資で得られる未来?ー前編
第3章 投資で得られる未来?―後編
第4章 投資をすればお金は増えるの?
第5章 投資って、危険なの!? 〜リスクとリターンのお話
第6章 今の時代を考えると、預金?それとも投資?  
第7章 投資の種類のお話 〜前編〜 投資のいろいろ
第8章 投資の種類のお話 〜後編〜 投資のいろいろ
第9章 投資に使うお金? 余裕資金って、なんだ?
第10章 投資で「人生のお金」を設計する?
第11章ー前編 テーマを見据えて投資をする? テーマ投資・テーマ株に挑むには?
第11章ー後編 テーマを見据えて投資をする? テーマ投資・テーマ株に挑むには?
第12章 ロボットが投資のお手伝いだって?〜ロボアドのお話〜
第13章 株式投資ライフをはじめよう
第14章 株を買う・売るってどうやるのかな?
第15章 株式の銘柄とチャートってなんだろう?
第16章 自分の株式投資のスタイルについて考える
第17章 株価以外の「株の価値」?その良し悪しを見極められる指標って?
第18章 誰かの一言で、株価が動くの?
第19章 株の分散投資って、どういうこと?
第20章 資産運用って、結局のところ、まとめるとなに?