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第6章 今の時代を考えると、預金?それとも投資?|資産運用の図解教室


「銀行預金するより投資」みたいな話を聞くのだけど…

「投資とはなにか?」、そして投資に関する「リスクとリターン」もなんとなく理解できたモネ。

しかし、いざ投資をはじめてみようと思っていても、小心者なのか、なかなか一歩を踏み出せない。

銀行預金は少しだけならあるし、そもそも預金だって立派な資産運用だと言うし…。

でも、新聞やテレビを見ると、

「超高齢化の社会がいよいよ到来!将来の年金は大丈夫!?」
「いよいよ終身雇用制度が崩壊!?」
「75歳まで働かないと暮らせない!?」

なんて不安を煽るような話も耳にする。

不安に心が揺れ動くモネの頭には、今とこれからの、「預金と投資」について知りたい気持ちが膨れあがるのだった。


なぜ貯蓄だけじゃダメ? 預金にもリスク?

M:
ちょっと前から、「貯蓄から投資へ」っていう話を耳にするようになっていて…。

でもやっぱり投資ってよくわからないし、リスクもあるっていうし…。

預けていても金利が低いから、お金がほとんど増えないかもしれないけど…。

「銀行で預金」の方が、絶対リスクはないわけだし…、やっぱり預金でいいのかなぁって…。

B:
おやモネ、ずいぶんと心を揺らせているんだな。でも、1つ間違いはあるな。「預金にリスクがない」って?

それは違うぞ。預金にだってリスクはあるんだ。

M:
えっ!ほんとうですか〜!そんな話信じられません。

銀行って確か、「元本保証」っていって、たとえば1万円預けたら、1年後も10年後も、その元本の1万円はちゃんと口座に残ってるじゃないですか〜!

どこにリスクがあるんですか!?


B:
確かにモネの言う通り、銀行は元本が保証されているのは事実だ。

でもこういうことも起こるかもしれないんだ。

まず、2018年現在、いわゆる「メガバンク」と呼ばれる銀行の普通預金の金利は0.001%。

つまり、モネが10,000円を普通預金に預けたら、1年後にはたった0.1円しか増えず、10,000.1円にしかならない。

M:
す、少なっ!!

まあでも、元本の10,000円は減らないから、あきらめます…(涙)。

時間が価値を目減りさせることも?

B:
さて、ここからが本題だ。

もし、その金利でお金を預けていて、1年経ったとしようか。

その1年の間に、急激なインフレが起きて、1年前は10,000円で買えたものが、13,000円払わないと買えなくなったら、どうなると思う?

M:
え!? え〜っと。どうなると言われてもなぁ…。

まあ13,000円払って買えばいいんじゃないですか?

B:
あまいなぁ!よく考えてみるんだ。

1年前10,000円で買えたものが、13,000円出さないと買えなくなったということは、どういうことか?

言い方を変えると、1年の間に、「10,000円の価値が目減りした」ということにならないか? 

そして、10,000円を銀行に預けていたとしたら、10,000.1円だ 。

M:
あ!確かに、ブルベア先生の言う通りだ。

ってことは、たとえば銀行に今10,000円預けていたとしても、10年後その10,000円が10,000円の価値のままであり続ける、という保証はないのか。

リスクを回避して預金を考えていたのに、これじゃ逆に預金をすることがリスクになっちゃう可能性もあるんだなぁ…。

預金だけじゃ、やっぱり不安かもしれない。

B:
うむうむ。そのモネの心配は、もしかすると正しいのかもしれない。

老後の年金が受け取れる年齢も、引き上げられると言われているし、消費税も上がるようだし、この先も銀行の金利が上がるとは思えないからな。

利息を期待して、銀行などの定期預金に預けて、増えた預金で老後はノンビリ、という暮らしができる世の中ではないからな。

これからは、自分のお金や将来は、もっと自分で考えて守っていく時代になっていくかもしれないな。


日本人が預金好き? アメリカは投資好き?

M:
ところでジブンのまわりには、投資なんてやっている人はほとんどいなくて、ほとんどが銀行にお金を預けている人ばかりなんです。

「投資なんて怖いし、よくわからないよね」って言っている人ばかりで。

やっぱりどこの国も、投資をやっている人って、この国と同じく少数派なんでしょうか?

B:
では、ここでちょっと面白い話をしてやろう。この表を見てほしい。

(参照:資金循環の日米欧比較, 日本銀行調査統計局  2018年3月末)

M:
このグラフは一体なんですか〜?

B:
これはな、日本とアメリカとユーロエリア(ヨーロッパ地域のこと)を比較して、その国に住んでいる人が、自分たちの資産をどういう風に運用しているかをまとめたグラフだよ。

これを見るとわかるけど、まず預金、

■ 資産を「預金」に回している率
日本 52.5%
アメリカ 13.1%
ユーロエリア 33.0%

となっているよな。

つまり日本では、資産の約半分を預金に回してるということだ。

比べてアメリカは13.1% しか預金に回してない。

M:
あ、本当だ!日本人って預金好きなんですね〜。

B:
じゃあ次に、「債務証券」「投資信託」「株式」などの、いわゆる「投資」に資産をどのぐらい回しているかを比べてみよう。

■ 資産を「投資」に回している率
日本 16.2%
アメリカ 53.9%
ユーロエリア 31.3%

これをみると、アメリカは日本に比べて、約3倍の資産を投資に回しているってことになる。

さてここでモネに質問だ。

なんでアメリカは、日本に比べて、資産を投資に回す人が多いんだろうか?

M:
わ〜!アメリカ人って投資好きなんですかね〜。

うーんなんでだろう?

アメリカは日本に比べて、銀行が不安定で預けても日本みたいに元本が保証されないから、とかかなぁ。

B:
う〜ん、ちょっと違うな。

いろいろな理由があるのだけれど、その1つには教育が関係しているのかもしれないな。


日本には、体育や数学や英語の授業はあるけれど、「お金の授業」はとても少ない。

逆にアメリカだと、「パーソナルファイナンス教育」というのがとても盛んで、学生のうちからお金について学んでいるんだ。

この日本とアメリカのお金の知識の差は、家計の資産運用方法を選ぶメカニズムにも影響を及ぼしている、と言われているんだ。

M:
ってことは、アメリカ人は、学生の頃からお金の上手な運用方法とかを学んできているわけですね〜。

たしかに日本だと、お金の増やしかたや稼ぎかたを学校では教えてくれないなぁ。

お金を増やすとか、たくさん稼ぐって、なんだか悪いことをしてるみたいに思っている人も多い感じがするし…。

B:
アメリカは、日本に比べて「自己責任」の意識が高いのも1つの理由かもしれない。

アメリカは日本に比べると、お金の使いかたを幼い頃から学び、「自分のお金や将来は自己責任で管理する」という考えが強いんだ。

たとえば個人がお金を借りられる、消費者金融ってあるだろう。日本の消費者金融の場合は、利息の上限は厳しく定められている。

だけど、アメリカは州によって違ったり、上限を定めていない州もある。

だからお金の知識がないと、ちょっとだけ借りたお金が、返済の時にはとんでもない金額になり、自己破産してしまう、という状況にもなりかねない。

また、社会保障が限定的であることも、「自分の将来のことは自分でなんとかする、そのためには資産運用をしなければ」ということにつながっているんだ。

M:
そう考えると、ジブンは日本に生まれてよかったなぁ〜。

B:
モネ、その考え方は甘いな。

前にも話したが、これからの日本は、預金をしていてもずっと金利は低いままだろうし、消費税は上がるだろうし、年金も何歳からいくらもらえるかわからない…。

時代というのは移ろいゆく。だから「日本にもそんな時代が来たっ!」と思って、アメリカの学生みたいに、「お金の教養」をつけることは自分自身の武器になる。

「自分の資産は自分で守る」「自分の将来は自分で築く」という意識を持つことは決して損なことではないぞ。

きっと、お金のことを積極的に学ぶ時代に来ていると、先生は思うんだ。

M:
そうかぁ。やっぱりお金のことをあまり考えないでいるのは、良くないんだなぁ。

これまでの「お金のことなんか知らないっ主義」は反省して、少しは勉強しなくちゃいけないな。

「貯蓄から投資へ」という言葉の意味、そして「お金の教養」を身につけることの大切さを理解したモネ。時代が変われば、お金の価値も変わる。

このことを考えると、確かに、時代の流れを読み、その流れに合わせて動きを取ることは大事なことなのだと、なぜか身にしみる想いなのであった。

つづく

【 資産運用の図解教室 の 目次 】

第0章 お金を増やす、ということ 。
第1章 「投資」による「資産運用」って、なんだ?
第2章 投資で得られる未来?ー前編
第3章 投資で得られる未来?―後編
第4章 投資をすればお金は増えるの?
第5章 投資って、危険なの!? 〜リスクとリターンのお話
第6章 今の時代を考えると、預金?それとも投資?  
第7章 投資の種類のお話 〜前編〜 投資のいろいろ
第8章 投資の種類のお話 〜後編〜 投資のいろいろ
第9章 投資に使うお金? 余裕資金って、なんだ?
第10章 投資で「人生のお金」を設計する?
第11章ー前編 テーマを見据えて投資をする? テーマ投資・テーマ株に挑むには?
第11章ー後編 テーマを見据えて投資をする? テーマ投資・テーマ株に挑むには?
第12章 ロボットが投資のお手伝いだって?〜ロボアドのお話〜
第13章 株式投資ライフをはじめよう
第14章 株を買う・売るってどうやるのかな?
第15章 株式の銘柄とチャートってなんだろう?
第16章 自分の株式投資のスタイルについて考える
第17章 株価以外の「株の価値」?その良し悪しを見極められる指標って?
第18章 誰かの一言で、株価が動くの?
第19章 株の分散投資って、どういうこと?
第20章 資産運用って、結局のところ、まとめるとなに?

イラストレーション/浜畠かのう