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いかにして「長期・積立・分散」の投資スタイルへ行きついたか 後編|投資ブロガー・水瀬ケンイチ

(前編はこちら
水瀬ケンイチさんは、インデックス投資というものを通じて、長期・積立・分散の投資を15年以上実践してきた人物です。その結果、大きな資産をつくることに成功しています。

しかしその道のりでは、リーマンショックや東日本震災などのネガティブな事象による下落相場も経験し、決して平坦なものではなかったことを語ってくれました。後編でも、「人間の欲望」から「日々の生活」、そして「若者へのメッセージ」まで、様々なことについて話してくれました。

―― 少し抽象的な質問をさせてください。水瀬さんにとって、投資の礎である「資本主義」とは、一体何なのでしょうか?

私にとっては、「資本家が出したお金で生産設備を整えて、労働者を雇い、製品をつくって、それらを売って、買ってもらう」ということです。

その根底には「人間の欲望」というものがあって、尽きることがない。これが特徴です。私が信奉し長く続けてきた「インデックス投資」というものの利益の源泉となっているのは、間違いなくそうした資本主義経済の長期的な発展なのだと思います。

―― なるほど。「人間の欲望」が資本主義をドライブさせている。だから、ネガティブに語られがちな「人間の欲望」というものも、ポジティブに捉えられているというわけですね。では、そんな水瀬さんは、どんな風に経済ニュースを見たり聞いたりしているのですか?

経済ニュースは気になりますよ。でもそれは、投資しているからではなく、あくまでも私の本業に関係があるから見ているだけです。ですから、特に投資には関係ない視点でチェックしています。後は、たまに、昔の投資の知識で頭の体操程度に、この経済ニュースからはどんな投資行動がいいのだろうか? ということは考えてみたりはしますね。あくまで、遊びとしてですけど…。

―― そうなんですか! 例えば、危機的な状況の経済ニュースをご自身の投資と結びつけて考えることはないものなのでしょうか?

ないですね。だって、私が運用しているものには、全部入っていますから(笑)。どんなニュースが流れてきても、私は全ての株主だから大丈夫。今流行りのGAFAもバフェット銘柄もすべて入っています。そこが長期・積立・分散投資であるインデックス投資の強みでもあるんです。

マインドセットとしては、たとえ米中貿易戦争のニュースが流れてきても、「どっちの国も経済を良くしたいからやっているんだよね。どちらも頑張れ!」という気持ちになれる。はたまた、イギリスのブレグジットの話題なんかでも、「離脱派も残留派もどっちも真剣に考えているからこそ、そういう動きがあるんだよね。どっちも頑張れ!」という気持ちが維持できる。

―― なるほど。そうなると神様の視点から、世の中を眺めているような感覚が出てきそうですね。ところで水瀬さんは投資のお話をまわりの人とするということはあるのですか?

ないですね。そもそも、私の会社で投資をやっている人はほとんどいないと思いますよ。いたとしても、みんな言わないですね。個別株をやっているのかもしれませんし、ビットコインやFXをやっているのかもしれない。いづれにしても、私のスタンスとは、違うような気がします…。

少し投資の知識をひけらかしている人がいたとしても、そこに入って話をするということはないですね。だから、私が投資をしているということを知っている会社の人はいません。

―― 「投資」という概念が根付いていない日本においては、軽々しく口にできないという風潮もあるのかもしれませんし、その知識レベルに差が大きいということも問題なのかもしれませんね。ところで、水瀬さんは、日本に「投資」というものが根付かない理由をどのようなものとお考えでしょうか?

日本のバブル崩壊が日本人にトラウマしか残さなかったのは、大きな問題だったのではないでしょうか。きっと、何かもっと他に日本人のお金に対してのリテラシーを高める方法はあったと思うのです。でも、日本もDC(確定拠出年金)の普及と共に、変わっていくと思います。きっとこれからですね。

アメリカでも投資文化が根付いたのは、401kがあったからだと言われています(※401kとは、公的制度の不足分を補う制度としてつくられた、民間営利企業の従業員を対象にした確定拠出個人年金制度)。

元々、アメリカのバンガード社(低いコストで投資のできる指数に連動する投資信託、インデックスファンドを個人投資家に世界で初めて提供した資産運用会社)だって、創業当初は誰にも見向きもされず、資金が集まらなかったと言いますからね。今となっては信じられないですよね。

繰り返しになりますが、DC(確定拠出年金)の普及とともに、日本人のメンタリティも変わっていくと思いますよ。私がはじめた15年前には、iDeCoもつみたてNISAもありませんでしたから。

――なるほど。では水瀬さんなら、これからを生きる日本人に 「投資」というものをどう薦めますか?

自分や自分の家族のためにしっかり時間を使うということのできる投資をして欲しいと思います。つまり若い頃の私のように、銘柄チェックに時間を費やして、仕事に支障の出てしまうような投資の仕方はしないで欲しい。まず「本業の仕事を頑張ろう」そして、「家族のために貴重な時間を使おう」と伝えたいです。そして、投資をやりたいというのなら、「手間の掛からない長期・積立・分散の投資方法があるからね」ということを教えてあげたいですね。


――長期・積立・分散の投資手法なら、上下することはあっても、いつかは相場は戻るということですね。

はい。私自身は、インデックス連動の投資を続けて、リーマンショックの後に相場が戻り、資産も戻る「平均回帰性」(一度、大きく振れてしまった相場が平均値へ戻る動き)ということを経験しています。

ビットコインや FXなどの需給で決まってしまう要素が強い投資をやるのであれば、そこで得られるリターンがそもそもどんなことがリターンの源泉になっているのかはきちんと理解しておくべきです。

――水瀬さんの、投資のことを若い人について伝えようとする熱い想いはどこから来るものなのでしょうか?

若い人たちは大変な時代を生きていると思うからです。ますます少子高齢化が進み、低成長が続いていくと言われている日本の未来を背負っていかなければならないわけですから。

人は、存在してるだけで素晴らしいのです。「投資」「資産運用」などをうまく利用してある程度の備え・蓄えをできたのなら、自分のやりたいことができる時代です。だから、うまく投資リテラシーをあげて、腐らないでほしい。そう願ってやみません。

【編集者の感想】
これからの日本人が、いかに「投資」というものと向き合っていったら良いのか?水瀬さんの発言には、そのヒントが隠されていたように思います。日本の未来、若い人たちの未来を案じる想いには、彼自身の人柄がよく現れていたように感じられました。投資ブロガーであり、決してプロの金融マンではない彼が語ってくれた言葉を頼りに、これから先、正しい「投資」をする人が増えるといいですね。水瀬さん、貴重なお時間を有り難うございました。(おわり)

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