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5Gは世界でどう使われているか ファーウェイジャパン CTO 赤田正雄・後編

前編では、現在、通信技術が4Gから5Gに移行する過渡期であること、また今年から世界各地で本格的にサービスが開始されることなどをお伺いしました。

また、韓国ではいち早くサービスが展開されており、その競争を支える要因のひとつとなっているのが、小型軽量で高性能な基地局だというお話についても説明を受けました。赤田氏は、韓国以外の国でも、各国各様の5Gのユースケースが確立されはじめていると言います。後編では、世界の動きをさらに深く追ってみましょう。

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5Gの競争が激化、つまり利用者数が爆発的に増えている韓国では、主にエンタテインメント分野でユースケースが確立され始めていると赤田氏は言います。例えば、スマートフォンでゴルフや野球などスポーツを、ユーザーが好きな角度から見れるというサービスがそのひとつです。

その他にも、アイドルと自分の画像をARで組み合わせてSNSにアップする、もしくはアイドルのライブ中継をスマートフォンでみることができるサービスなどもあります。

それらのサービスはLTEの延長線上にあるものですが、LTEよりも「さらにさくさく視聴できるようになっている」(赤田氏)のが現状のようです。

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赤田氏:
「5Gはさまざまなユースケースが想定されていますが、やはりマス向けに認知度を高めることができるという意味で、エンタテインメント分野に力を注いでいる韓国各キャリアの戦略は大きな成功例とすることができるでしょう」

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なお赤田氏が今後、5Gのユースケースとして成功する可能性で高い分野として「ゲーム」を挙げます。

赤田氏:
「5Gによって通信スピードが早くなれば、クラウドやサーバー側でプログラムを処理して、スマートフォンにはその結果を映すだけというようなことができるようになるかと思います。その際、最も注目されているのはゲーム。通信速度が速くなれば、スマホにダウンロードしたりせず、そのまま繋いでプレーすればよくなります。

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同じ発想で行けば、『クラウドPC』 『クラウドVR』もある。パソコンのCPUを新しくしたり、PC側でデータを保有しなくても、クラウド側ですべて処理できるようになりますからね。

ユーザーは画面さえキレイな端末を用意すればよい。VRも現在は複数のユーザーが参加しようとしても、通信速度が遅いので他の人と同じ画像や画面を共有ができません。それらが5Gによって生まれ変わり、新たなユースケースに繋がると思います」

現在、英国で5G対応のスマートフォンが登場していきていると赤田氏は言います。欧州はもともと、日本や韓国のようにLTEが深く浸透していませんでした。また、モバイル通信の市場自体がそこまで大きくないそうです。「その遅れを一気に取り戻そう」(赤田氏)という動きが英国で生まれています。

赤田氏:
「スイスでも5Gの商用化が始まっていますが、注目すべきなは5Gを使った『FWA』(固定無線アクセスシステム)ですね。スイスの大手通信キャリアである『Sunrise』が、2019年3月から『5G FWA』を開始しています。スイスはもともと光ファイバーが家に届いていない地方エリアが多かった。

そこで、途中まで光ファイバーをひいて、そこから5Gで電波を飛ばして、より広域に高速インターネットアクセスを提供しようという動きに繋がっています。Sunriseは、5G FWAを共有して地方エリアへのHD TVサービスを提供しようとしています。

2019年内に90%以上をカバーするのが目標です。5Gが普及した際には、いろいろなことができるようになるというのは事実なのですが、国や地域によって状況が異なる。各国、各エリアの状況に適したユースケースが生まれてきているというのが実情です」

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その他の特筆すべき動きとしては、企業内、工場内、もしくはキャンパス内や病院など「ローカルエリア」に向けて、「5G‐LAN」を実現しようというものがあります。こちらも、前編で登場した「3GPP」で仕様化が検討されており、主に「低遅延」を生かしたユースケースを実現することが目標だと言います。

赤田氏:
「韓国やスイス、英国では、大容量動画の配信、インターネットアクセスなど、高速大容量という5Gの特徴に焦点を当てたユースケースが登場していますが、ローカルエリア内で使うための5Gの検討も始まっています。

低遅延が実現すれば、コンシューマー向けのみならず、工場など産業用途にも利用の幅が広がるでしょう。

Wi-Fiでも足りるのではという意見もあるかもしれませんが、すでに電波が混雑していて、故障や工場の稼働をリアルタイムで安全性や効率性を担保することが難しい。そこで5Gの導入が見当されているのです」

5Gの産業利用には、工場や自動運転、スマートシティ、スマート医療など、多くの分野が含まれます。例えば、現代の工場では協働ロボットなど、人間とともに働くためのロボットが稼働していますし、今後、その傾向はより強くなるでしょう。

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かたや、大量生産ではなく、多品種少量生産を行う工場も増えています。そのような変化のなかで、ラインの組み換えが有線だと困難が伴います。通信が途切れず、遅延もせず、常に安定的に稼働を担保でき、かつ便利な無線通信システムはないものか。そこで期待されているのが、5Gの利活用です。

5Gの産業利用を促進するための国際団体としては、「5G ACIA」(Alliance For Connected Industries and Automation)などがあります。同団体には、工場の自動化設備を生産するメーカー、産業用ロボットメーカー、自動車メーカー、通信機器メーカー、通信キャリアなど、世界の有名企業が一堂に介しています。

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赤田氏:
「世界の各企業は、産業用途でグローバルに5Gのエコシステムをつくろうと議論しています。

5G ACIAの取り組みなどが進んでいけば、5Gの重要な要件のひとつである『低遅延』の商用利用も実現していくのだと思います」

ファーウェイでは、5Gに関わるほとんどすべての国際的に取り組みには参加していると赤田氏。5Gという社会的な通信網・インフラが効果的に稼働するためには、個別企業にできることには限界があり、ビジネスとしても育たないと意見を述べます。

前述の5G ACIA、また将来のモビリティサービスに向けた技術を検討する団体である5GAA(5G Automotive Association…ファーウェイ、インテル、アウディなどにより作られた会社。5Gを利用したコネクテッドサービスの開発協力が目的)などにもファーウェイが名を連ねるのは、そんなエコシステムの必要性を強く感じているからだそうです。

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赤田氏:
「個人的な考えですが、システムをきっちりとインテグレーションさえすれば、今世の中で検討されているようなソリューションは確実に生み出すことができるでしょう。ただ問題は、実際にビジネスとしてお金をまわすこと。

そうでなければみな、ハッピーにはなれませんし、究極的に5G環境が発展していかない。エコシステムを生み出す輪を広げていくのは、非常に重要なことだと思います」

5Gという夢の通信規格は一朝一夕には実現しない。必要なのは、各国、各エリアに適した発展と、世界共同でつくりあげるエコシステムではないだろうか。5G時代の担い手の一角・ファーウェイ社で活躍する赤田CTOの指摘からは、また新たな5Gへの理解が生まれそうです。

本日は貴重なお話ありがとうございました!

取材・文/河鐘基(ロボティア)、写真/荻原美津雄、取材・編集/FOUND編集部 

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