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5Gは世界でどう使われているか ファーウェイ・ジャパンCTO 赤田正雄・前編

■話を聞いた人

赤田正雄(あかた・まさお)氏
ファーウェイ・ジャパン・キャリアネットワークビジネス事業本部最高技術責任者(CTO)。1983年に東大工学部情報工学(修士)終了後、NEC入社。その後、モトローラ社でAll-IP、WiMAX、LTE等次世代モバイルインフラの事業開発、マーケティング、開発プロジェクトに従事。サムスンなど外資系大手企業で要職に就き、現在、ファーウェイ社で活躍中。

日本でも「第5世代移動通信規格」(以下、5G)の商用化が迫っています。前回の記事では、NTTドコモの5Gイノベーション推進室・5G方式研究グループ担当部長を務める奥村幸彦氏に、日本の将来的なユースケースや実証実験例についてお話をお伺いしました。

では現在、海外ではどのように5Gの活用が始まっているのでしょうか。今回は、世界の5G市場に深くコミットしているグローバル通信機器メーカー・ファーウェイの日本法人で、活躍する赤田正雄CTOにお話をお伺いすることにしました。

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5Gは「超大容量・超高速通信」「低遅延」などを特徴とする次世代の通信規格です。動画やゲームなど、エンタテインメント領域だけでなく、工場や産業用ロボット、IoT端末同士の円滑な連携など、世の中のあらゆるシーンで利活用が想定されています。

赤田氏はまず、5Gを理解するためには通信技術の歩みを理解する必要があるとしつつ、「5Gとは何か」から説明してくれました。

少し専門的になりますが、5Gのネットワーク構成はNSA(Non Standalone)とSA(Standalone)のふたつのタイプがあると言います。NSAというのは、4Gネットワークに5G無線を付加したもので、LTEが5Gの動作を補助します。一方で、SAはLTEなしで動作するネットワークです。なお、日本を含み商用化が進んでいるのが前者のNSAだそうです。

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こちらも専門的になりますが、「3GPP」についてもおさえておく必要があるでしょう。これは、世界の移動体通信システムの仕様を検討・作成する国際的な標準化プロジェクトです。

同プロジェクトの最初の3G規格は1999年のR99と呼ばれ、2000年代からはリリース4(=R4、リリースはバージョンと呼び変えてもらえると分かりやすいかもしれません)から始まり、現在も、そして今後も段階的に拡充していく予定になっています。そのR15、R16、R17あたりが「5G」、すなわち「第5世代」と通信業界では呼んでいます。

そのR15、R16、R17あたりが「5G」、すなわち「第5世代」と通信業界では呼んでいます。

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赤田氏:
「R16になりますと、現在、報道などで言われているような、高速大容量、低遅延、多数接続など、5Gのすべての要件(能力)がサポートされます。

さらに同じような時代のスパンからみると、R22くらいで6G(第6世代)になると考えればよいでしょう。さて現在の状況ですが、いきなり4Gから5Gになるというのではなく、4Gの電波やインフラを使いながら、徐々に5Gサービスが始まろうとしている段階です。

このようにバージョンが進展していくと、ゆくゆく、古いバージョンの端末は、新しいバージョンの電波では動かなくなります。『バックワードコンパチビリティ』、つまり以前のバージョンとの互換性が無くなるという時が、新たな世代への交代ということになります。いまはまさにその過渡期にあたるのです。」

赤田氏は、5Gの優れた点として、ひとつの電波で複数のデータを別々に送れる能力を挙げます。「空間多重技術」(Massive MIMO)の進展です。

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赤田氏:
「音声でもそうですが、ふたり一緒にしゃべると混信しますよね?それを分離する技術がありますが、それを電波でイメージしてみてください。

2個のデータを同じ電波で別々に流して、端末がそれを別々に受け取る。つまり、みかけの上では2倍の速度を実現できます。LTEだとそれが4~8個できるんですが、5Gになると32~62個流すことができます」

現在、5Gのさまざまな要件の中で、「高速大容量」を満たしたスマートフォン向けサービスが各国で開始されていると赤田氏は言います。

今年4月上旬からは、韓国や米国、ヨーロッパなどで順次、サービスが開始されており、今後、中近東、南アフリカ、日本、中国などでもサービス開始が予定されています

赤田氏:
「5Gの商用化やサービスという意味で言いますと、韓国の展開が最も早く進んでいます。

韓国国内には、コリアテレコム(KT)、LG U+、SKTなど大手移動通信事業者がありますが、例えばLG U+は今年末までに6万局の基地局を設置して、全国90%を5Gの通信網でカバーするとしています。

LG U+の5G関連サービスへの加入者、つまり5Gに対応したスマホの契約数は、サービス開始から20日間で8万、6月13日の時点で100万回線となっています。

これはLG U+で1社なので、他のキャリアも合わせると200万回線以上は使われていると想定できます」

韓国では首都・ソウルを中心に、キャリアによる“5G戦国時代”がすでにヒートアップしているそうです。

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その展開の早さを支えている要因のひとつが、ファーウェイが開発する基地局(通信を行うためにビルの屋上などに設置するアンテナのような設備)にあります。

ファーウェイが開発した基地局は約20㎏と小型軽量で、消費電力も少ない高性能製品です。実は、この「基地局の小型化」という点は、非常に重要なのだと赤田氏はいいます。

というのも、基地局が大きく重くなればなるほど、設置できる場所も限られてきます。また、取り付けに必要な人手、つまり人件費も高くなります。

ファーウェイは、自社で開発する基地局に関して、世界中の50の通信事業者と契約をしているといいます。出荷数の伸び率では「2019年2月時点で5万局、5月10万局、6月15万局、そして、今年末には50万局を出荷する勢い」。

韓国でも、その小さく軽い高性能な基地局が、今年2月までの4か月ですでに1万局設置されたと言います。

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赤田氏:
「今年の2月にスペイン・バルセロナで開催されたモバイル・ワールド・コングレス(MWC)でも発表しましたが、1万という数字はかなりすごい。

例えば、日本の各キャリアさんの5G開設計画による基地局設置の数は、各社数年かけて2万以下だったと思います。韓国の例でわかるように、小型軽量かつ低消費電力の高性能な基地局の存在は、5Gサービスの普及には欠かせないものになってくるかとかと思います」

後編につづく

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取材・文/河鐘基(ロボティア)、写真/荻原美津雄、取材・編集/FOUND編集部 

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