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メンズコスメの歴史と男たちの美意識の変化|ビューティーサイエンティスト・岡部美代治 第1回

文・取材/ 楯雅平(ロボティア)、写真/荻原美津雄 、編集・取材/鈴木隆文(FOUND)

メンズコスメ(男性用化粧品)の市場が注目されています。15~69歳、7,700人を対象にした民間調査会社の調査ででは、「外見を今よりよくすること・若さを保つことへの関心」があると回答した男性が61%を超えるなど、男性の大半が美容やアンチエイジングに興味を思っていることが明らかになっています。

そんなわけで、洗顔やスキンケア、ヘアケア、フレグランスなどのメンズコスメ市場がいま活況です。「仕事を終えて帰宅した後は洗顔でサッパリ、化粧水とクリームで肌を保湿。デオドラント効果のあるボディウォッシュや薬用効果のあるシャンプーで頭皮と毛髪のケアする」というライフスタイルは男性にも定着しつつあります。

ところが、筆者はこういった世界と無縁の人間。「真冬に乾燥しすぎて、唇が切れたらリップを塗る」程度の美容意識しか持ち合わせていません。もちろん、シャンプーやリンスはしますが、購入の基準は「近所のドラッグストアでセールしているか」ですから、コダワリなどは皆無です。そんな私ですから話題のメンズコスメ最前線にキャッチアップするには専門家を頼るしかありません。

そんなわけで、今回は“ビューティーサイエンティスト”の岡部美代治さんにインタビューをすることに。メンズコスメと研究開発とマーケティングの両方に精通する数少ないエキスパートである岡部さんに、初心者目線でいろいろな質問をぶつけてきました。

▶︎話を聞いた人
岡部美代治さん

山口大学の理学科で生物学を専攻し皮膚の研究を行なう。同学卒業後、研究員として株式会社コーセーに務め、商品開発、マーケティング担当として株式会社アルビオンで新製品開発を行なう。 2008年より独立し美容コンサルタントとして商品開発のコンサルティングや美容教育の普及などに取り組む。著書に「プロのためのスキンケアアドバイスの基本(フレグランスジャーナル社)」など。「ビューティサイエンスの庭」を主催。


「薄毛の不安」が美容業界に進んだきっかけ


インタビュー当日、「美容の専門家とはいったいどんな人なのだろう?」と、未知の世界に不安を感じていた筆者の前に現れたのは、70歳間近とは思えない若々しい男性。「コーセーで約13年研究開発を行ない、アルビオンでは『エクサージュ(XAGE)』などのヒット商品の開発にたずさわりました」という岡部さんは、男性の肌や毛髪(頭皮)の悩みを長年研究して、その解決に長年寄り添ってきた専門家です。

でも、メンズコスメの専門家ってめずらしいですよね?なぜ、その道に進まれたのでしょう?

岡部氏:
「僕が美容の世界に進んだきっかけは思春期の悩みです。親戚に髪の毛が薄い人が多くて……つまり薄毛の家系だったのです。

それに悩んだ結果、未来の自分のために本当に効く育毛剤を開発したいと思って、研究者への道を選びました。就職先も、その当時中堅で比較的自由に研究ができるコーセーを選びました。

その頃は化粧品の安全性が気にされ始めた時代で、僕は安全性や有効性を検証する研究に取り組みながら、並行して育毛剤や化粧品の研究も続けていました」

とっても切実な思いがあって、メンズコスメについて研究されていたのですね! 何を隠そう筆者の一族も3代続く薄毛の家系。

なんだか、とても岡部さんに共感してしまいました。ところで岡部さん、メンズコスメはヘアケアだけではありませんよね?男性向けの美容アイテムというと、いったいどんな商品メジャーなのですか?

岡部氏:
メンズコスメの製品は"スキンケア"と"ヘアケア"が2大カテゴリーです。スキンケア分野では洗顔料、化粧水、乳液が最もメジャーな製品です。ヘアケア分野では、もちろんシャンプーと育毛剤が最もメジャーな製品です。

▶︎ メンズコスメ製品
・スキンケア:洗顔料、化粧水、乳液
・ヘアケア:シャンプー、育毛剤

男性の身だしなみで最も重要なのは清潔感であり、それを実現するためにはスキンケアやヘアケアが必須という認識が浸透してきています」

男たちの意識はどう変わったのか?


男性のコスメに対する意識は「’80年代バブル」の前後で大きく変化したという岡部さん。古くは香水や頭髪香油がメインで「匂い」が中心だった男性用の美容品は、バブル期を境に「清潔感」へとシフトしていったそうです。

メンズコスメ大手のマンダムが「丹頂ヘアトニック」などの製品ラインアップから脱却し、「ギャッツビー」や「ルシード」などのブランド展開をはじめて復活を遂げていった流れはこういったメンズコスメの歴史と重なります。

 
丹頂ヘアトニック
 ↓
ギャッツビー
 ↓
ルシード


➡︎ メンズコスメ大手のマンダムの復活の流れは、メンズコスメの歴史と重なる

さて、そんな男たちは、いまどんなことを気にかけているのでしょうか?

岡部氏:
男性の身だしなみは基本的に清潔感とイコールです。

肌や頭髪を不潔な状態や傷んだ状態のまま放置している人は女性にモテないだけはなくビジネスシーンでもマイナスの印象を与えてしまいます。

初対面の相手と信頼関係を結ぶためには自分のコンディションを整えられている、ケアできているということを見せられる方が良いに決まっています。

メンズコスメというと身だしなみを整えるものだと思っていただくと良いと思います。

女性用の化粧品にある口紅やアイシャドー、ファンデーションなどは、有るには有りますが、メジャーな製品ではありません。

メンズコスメが使われる目的は基本的シンプルで肌を綺麗に洗って、保湿する。これができていれば、綺麗で健康な状態を保てます。

メンズコスメのシンプルな目的

➡︎ 肌を綺麗に洗って保湿する

これは顔でも頭皮でもそれ以外の場所でも同じです。

それに追加して、紫外線などによるダメージへの対策をしたり加齢による影響を減らしたりする場合もありますが、基本は清潔にすること。

クリーンしている肌は健康ですし、見た目にも清潔感が伝わります。

ちなみに、

医薬品:肌のトラブルや病気を治す
化粧品:肌のトラブルや病気を予防する

おおまかに言って肌のトラブルや病気を治すのが医薬品、予防するのが化粧品です。」

なるほど、そう聞くとメンズコスメの機能面としては身だしなみを整えるためのものと理解できそうです。

「成分の話では、男性はヒゲを剃ることと、敏感肌の人が多いことがあり、
抗炎症作用のあるグリチルリチン酸を含む場合があります。

デザイン面では、昔は男臭いパッケージやボトルが好まれていましたが、今は中性的になっています。

洗面台に並べて置いたとして、男性の家に来た彼女がそれを見てオシャレだと思ってくれるか? メンズコスメのデザインはそんな目線で評価されていると思います」

確かに、ビジネスパーソンたるもの身だしなみは大事ですね。商談の際に聞いた説明は覚えていなくても、相手の身だしなみや清潔感は妙に印象に残っていたりするのです。

粋にこだわる人がメンズコスメのユーザー


これまでのお話でメンズコスメに求められる機能は肌を清潔に保ち、身だしなみを整えることがメインであることはよくわかりました。

これを世代ごとに分解していくと、10代はニキビ対策への関心が高く洗顔がメイン。20代以上はスキンケアへの関心があり、30〜40代ヘアケアの関心も高まるという傾向があるそうです。

10代|  ニキビ対策(洗顔)への関心
20代以上| スキンケアへの関心
30〜40代| ヘアケアの関心

しかし、岡部さんは世代論にとどまらず、広く「粋でありたい人たち」がメンズコスメのユーザーであると教えてくれました。

岡部氏:
「もちろん世代や年齢によるコンディションの違いはあり、ニーズの違いもあります。

でも、極論を言えば、人間の肌は人間の肌であり、世代が違うからといって、別ものにはなりません。

清潔感をベースに相手に良い印象を与えたり、スタイリッシュな自分を表現したりするという粋な振る舞いがあれば、年代はあまり関係ありません。

古い価値観では男のクセに化粧なんて、見た目なんて気にするな、と言う人もいるかもしれませんがいまはそういう時代ではありませんね。

私はこういう悩みがあってこういうケアをしていますと潔く見せられるくらいの方がかっこいいと思います

岡部さんは、若いうちから自分のコンプレックスにしっかり向き合って対策をすると自信にも繋がるとも言います。

どういうケアをしているかという情報は同じ悩みを持つ人たちとの素晴らしいコミュニケーションのきっかけにもなりますしね。

自分なりに研究をしてそれを潔く見せられる、話せるというスタンスでいて
いただければ、それが粋につながると思います」

悩みがあるからこそ、それと向きあってケアをして、その方法をシェアしていくというのは、確かにかっこいいな、と納得させられるお話です。

だからこそ、世代にはこだわらないという岡部さんですが、ビジネス視点での新規市場開拓については「まだまだ人生を楽しみたい、というリタイア後の世代の人たちは若々しくありたいというニーズをお持ちです。

だから、そういう方々にメンズコスメの利用者として目覚めていただくのは良いこと」と話していました。

次回もメンズコスメについて、プロが注目するコスメの良し悪しを判断するポイントや将来性、海外市場との関係などについてお話しを聞いていきます。

つづく

目次

メンズコスメの歴史と男たちの美意識の変化|ビューティーサイエンティスト・岡部美代治 第1回

どうなる? これからの男の美意識と、メンズコスメ市場の未来|ビューティーサイエンティスト・岡部美代治 第2回

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