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手術支援ロボット「ダヴィンチ」の現在と未来| ロボット手術支援センター長 大野芳正 第2話

取材・文/河鐘基(ロボティア)、写真/荻原美津雄、取材・編集/鈴木隆文(FOUND編集部)

第一話のインタビューでは、ダ・ヴィンチのこれまでとこれからが明かされました。米国で1999年に製品開発されてから20年の時を経て、ようやく日本にも根付いた感のある手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」。

既に活用されている泌尿器科、婦人科、消化器外科をはじめ、これからは呼吸器外科、耳鼻科でも活用が期待されていることがわかりました。

ロボット手術の保険適用については、健康保険が使える範囲も広がることで市民にも手の届く存在、あたり前に利用できる存在になりつつあります。使う側の医者としても、圧倒的によく見える性能の高さは魅力的です。

また、施術を受ける側の患者にとっては、手術による身体への負担が少ないことは何にも代えがたい高い価値に映るはずです。

いいことづくめのように見える手術用ロボットですが、問題がないわけではなさそうです。それは、「お金」の問題です。第2話では、この費用の問題に加えて、人工知能、VR、AR、5Gなど、来たるべき時代の技術との連携はどのようになっていくのか?について、大野先生に話を語っていただきました。

手術用ロボットの課題は「価格」

大野氏:
「最新のXIというモデルの価格は約3億6000~7000万円ほどします。それより安いモデルでも1億6000~7000万円。とても高額ですよね。しかも、手術支援ロボットは使用方法の講習会などを受けたりするためライセンス制度が設けられています。

ダヴィンチは、新しいタイプの製品が出るたびに使い勝手は良くなりますが、それぞれに対してライセンスフィーを払っていかなければなりません。今後、国産の安い製品が登場するとは言われていますが、安全な運用のため同じくライセンス制度は設けられると思います。

扱う側からすると、機体の費用に加えライセンス費用も考慮しなければならず、また新たな使用方法を習得したり、オペレーションを組みなおす必要になってくるので、安い製品がでてきたとしてもすぐに導入する訳にはいかないのです。」

先生の指摘は、WindowsユーザーがMacに乗り換える時のことを想像すれば分かりやすいかもしれません。いろんなソフトのライセンスを新たに購入しなければなりませんし、インターフェイスの使い勝手や操作方法もまったく異なります。

しかも、手術支援ロボットは人の命を左右しかねない重要な医療機器。慣れていなくても使うというようなことは許されません。

病院側が導入する際には、高額な製品費用の他にも、医師たちの教育を行うなど使用方法の習得に向けたコストも負担しなければならないのです。

大野氏:
「例えば、最新モデルのXIは、年間100件の手術で5年ほど使用するという前提でないと減価償却的には導入を考えることができません。安い方のモデルでも年間50件ほど。

ダヴィンチの性能は非常に高いのですが、細かなランニングコストまでは考慮されていないのが現状ですね。また特殊な機械なので、チームをしっかりと立ち上げるとなるとやはり大変なんです。最低10例ぐらいは同じチームでやらないと、効率的なオペレーションは確立できません」

手術支援ロボットなど、技術的に優れた医療機器が登場しても、全ての医療の現場の問題が解決されるわけではない。重要なのは、「経済合理性」と「人間の使い勝手への配慮」――。

大野氏の説明からは、そのような手術支援ロボット普及のためのポイントが浮かび上がってくるようです。

先端テクノロジーと融合する手術支援ロボット

とはいえ、手術支援ロボットが我々の命を支えてくれるという状況は、ますます拡大していくこと間違いありません。

大野氏は、ダヴィンチを始め、手術支援ロボットの発展には大きく期待しているとしつつ、将来的な技術変遷のイメージについても説明してくれました。

大野氏:
「ロボットが人間を自動で手術してくれるという未来は、まだまだ先でしょう。ただし、モニターを見ながら『ここを切りなさい』という線を引いて指示を出せば、ロボットがそこを切って治療するというような半自動化は10~20年以内には実現するような気もします。

現状では、体内の様子を完全に3D化することができません。つまり、奥行きが再現できないのでロボットに指示ができないのです。今後の手術支援ロボットの発展を考えた際、3D化や体内の状況の正確な再現はひとつのポイントになるでしょう」

先生が指摘したポイントは、おそらくVRやARなどが発達し、カメラから取得されたデータをリアルタイムで3D化できてこそ実現できるのかもしれません。その際、こちらも人の命に係わることなので、データの再現が不十分というようなことがあってはなりません。

VRやARといったテクノロジーも、ロボット同様、医療に特化した形で発展する可能性がそこにはあります。

一方で、5Gなど通信技術が発達すれば、手術支援ロボットが取得したデータを瞬時に複数人で共有したり、専門医や名医による遠隔手術支援が実現する可能性があります。

これまで、人の命を守るという使命を掲げ、独自の発展を遂げてきたダヴィンチなど手術支援ロボット。今後、さまざまな最新技術との融合が期待されています。

大野先生、今回は貴重なお話をお聞かせいただき誠にありがとうございました。

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