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国際カジノ研究所所長・木曽崇|第2回「カジノ解禁」は、日本にとって良いことなの?

国際カジノ研究所所長・木曽崇インタビュー

目次
第1回 日本に「カジノ」ができるってホントですか?
第2回 「カジノ解禁」は、日本にとってよいことなの? ←今回

取材・文/河鐘基、写真/荻原美津雄、ロボティア、取材・編集/FOUND編集部

前回は、日本でのカジノ解禁までの道のりや、「IR推進法」がどんなものなのか、また、カジノの誘致が決まった場合、その自治体はどんな企業と協力して運営していくのかなどについて、学びました。

カジノ解禁への期待が高まったところで、第2回となる、今回は、実際にカジノ施設が日本に誕生した後の話、不安に感じていることや、経済効果などについて、引きつづき、木曽さんにお話をお聞きしています。


第2回目次

・ギャンブル依存の日本人が増えてしまうのでは?
・依存を防ぐ方法はあるの?
・カジノだけで年間7,000億円!?
・カジノ解禁は雇用にもメリット?
・カジノだけじゃない! IRはいろいろおトク

ギャンブル依存の日本人が増えてしまうのでは?

カジノ施設の設立について、切っても切れない議論があります。それは「ギャンブル依存の人が増えるのではないか」ということです。まずはこの点について、木曽さんに伺ってみました。

木曽氏:
「今回の『IR整備法』では、
日本人のカジノ利用者には
マイナンバーカードの提示を
求めるようになっています。

そして、
『7日間に3回、
28日間に10回まで』という
利用回数制限が設けられています。

この制限は、
非日常を楽しむ観光リゾートを
つくるという
法律の趣旨に照らせば
正しいと言えます。

ただし、
単純に回数を制限すれば
依存を予防できる
という話ではありません。

ですから、本来は
利用回数上限に
「頭打ち」した人に対する
カウンセリングなどとセットで
考える必要があります」

法律による規制
・日本人の利用者はマイナンバーカードを提示
・利用回数の制限(7日間に3回、28日間に10回まで)

回数制限などの規制だけでなく、カウンセリングなどをあわせた対策も考えていくべきと木曽さんは考えます。さらに、法律についてこう指摘します。

木曽氏:
「法律では、
1回あたり6,000円の
入場料を徴収するよう定められて
いますが、
入場料を徴収すれば依存予防に
なるという
科学的根拠はありません。

私はやめるべきだと
言い続けてきました」

依存の対策には「排除プログラム」も用意されています。

これは、自己申告、もしくは家族の申告があるとカジノ施設に入れなくなるというものです。とはいえ、依存であることに気づけなかったり、本人が隠していたりする場合はどうしようもありません。

大事なのは、「過度に依存する前に察知する仕組みづくり」だと木曽さんは言います。

依存を防ぐ方法はあるの?

木曽氏:
「賭けごとにはまってしまい
社会生活が営めなくなり、
多重債務を抱え、
生活が破綻している状態を
ギャンブル依存とするなら、
本来は、そうなる前に
救い上げる必要があります。

先に述べた入場回数制限など、
何かしらの基準を設け、
基準に達した時点で
強制的にカウンセリングを
受けさせる仕組みが必要なのです」

さらに、木曽さんは、リスク教育についての必要性も指摘します。

木曽氏:
「私は、ギャンブルに関する
リスク教育が必要だと
言い続けています。

『節度を守って楽しむ、
大人のたしなみ』という意味では、
ギャンブルという行為は、
お酒やタバコと
同じ類のものであると言えます。

ところが日本の学校教育では
お酒やタバコについては、
保健体育の授業の中で、
義務教育の範ちゅうで習いますが、
ギャンブルについては習いません。

知識がないのですから、
問題が起こらないはずがないと
私は思っているのです」

たしかに私たちは、ギャンブルによっておこる依存などの問題について、機会も少なく、知識も多くは持ち合わせいません。

ギャンブルにかんする問題について、みんなが正しい知識を持つということが、依存を防ぐためにとても大切なことなのかもしれません。

ギャンブル依存
ギャンブル依存(正式には「ギャンブル障害」)には、医学上の明確な定義はありますが、木曽さんが個人的に考える簡易的な依存の基準は「ギャンブルの負けを、ギャンブルで取り戻そうとしはじめること」だと言います。

カジノだけで年間7,000億円!?

ネガティブな話題が先行しましたが、メリットでない部分を知っておくことは重要ですね。

では、メリットの部分では、カジノがもたらす経済的効果は実際にどのくらいになるのでしょうか。

木曽氏:
「統合型リゾートの経済効果は、
開業前と開業後に分かれます。

開業前は、
おもに建設需要です。

カジノの建物や
それに隣接するホテル、
レストラン、ショッピングモール、
アトラクションなどの建設に
数千億円単位のお金が
投下されることになるでしょう。

開業後は、カジノや
統合型リゾートでの売上の他に、
地域観光の活性化、
公共交通の需要増が起こります」

さらにこう続けます。

「また、BtoBの話として、
ホテルにシーツや枕カバーを
提供するリネン企業や造園業者、
カジノに置かれる機械を作る
メカトロニクス系の部門を
持つ企業も潤うはずです」

統合型リゾートの経済効果
開業前…建設需要
開業後…カジノなどの売上、観光による収入、公共交通の需要
    BtoBで施設にかかわる企業

さまざまな企業に恩恵があるのですね。具体的に、IR施設ができることでの経済効果は、金額ベースではどのくらいになるものでしょうか。

木曽氏:
「今回の法案成立で
開設の見通しが立ったのは
『統合型リゾート』なので、
カジノに何を統合するかによって
その金額は大きく変わります」

何が建つかわからない現時点では、精密な試算はできないとのこと。

ただし、諸外国の先行事例などを踏まえ、カジノ部分に限って予測すると、年間7,000億円規模の売上になるそうです(国際カジノ研究所の試算)。

ちなみに、2017年の競輪の売上が約6,400億円(※)とされているので、それを超える新市場の誕生が見込まれているということです。

2017年の競輪売上……年間売上6,400億円
経済産業省製造産業局車両室『競輪・オートレースを巡る最近の状況について』
カジノによる経済効果……年間売上7,000億円規模
(国際カジノ研究所による試算)

※出典:経済産業省製造産業局車両室『競輪・オートレースを巡る最近の状況について』

また、木曽さんはカジノの利用客については「3分の2が日本人の利用客、3分の1が海外の利用客が予想され、使う金額ベースでは半々になるのではいか」と分析しています。

カジノ解禁は雇用にもメリット?

統合型リゾートのメリットとしては、雇用創出効果も挙げられています。しかし、海外からの利用者も多くなることが予想されるため、専門知識や語学のハードルがあり、地域の人がすぐに職につくには難しいかもしれません。
カジノ施設での雇用について木曽さんは、こう言っています。

木曽氏:
「カジノディーラーに関しては、
必要な能力を習得するのに
それほど時間はかかりません。

また、特定の国の利用客にだけ
わかる言葉で話すのも
不公平感が生まれるため
NGですし、
ディーラーは基本的には
ゲームの進行と
関係のないことを話すことは
推奨されていません。

ですから、日本語と
シンプルな英語ができれば
あまり問題ないと思います。

ギャンブルの知識や
語学力が雇用のハードルになる
ことはほとんどないと思います。

一方、
海外からのお客様の対応にあたる
サービススタッフという
専門要員については
語学力が求められるでしょう」

また、統合型リゾートの誕生によって雇用の創出効果があったとしても、現在の日本は労働人口が減っているという状況があります。

「日本はハイテクやロボットが得意な国なので、日本のカジノは、機械化や自動化が進んだ施設になるのというのもひとつのシナリオ」と、木曽さんは話します。

木曽氏:
「日本は人件費が高いため、
諸外国と同じだけの労働力は
割けません。

世界最高レベルで効率化した
仕組みがなければ、
利益が減ってしまうので、
人間を雇うより、
システムでやったほうが
よいという圧力は働くでしょう。

例えば、
掛け金が低いテーブルには
ディーラーは配置せず、
機械化、デジタル化する
といった感じです」

世界のカジノ事情について、木曽さんに興味深い話を聞きました。

実は世界トップのカジノとして知られるラスベガスは、‟世界で最も自動化が遅れているカジノ”なのだそうです。

その理由は、大きなカジノ労働者組合があって、人間の雇用を守るための圧力がかかるためだそうです。

木曽氏:
「ラスベガスは、
カジノで働く人の雇用を守る
労働組合からの圧力のため、
機械化が遅れました。

日本のカジノは、
そういった
しがらみがないので、
最初から最先端の機械化が
できるという意味で
アドバンテージを持っています」

日本の場合は、ハイテクカジノが前提になるので、システムやメカトロをつくるエンジニアの需要増も期待できることになりそうです。

また、統合型リゾートは「MICE(Meeting、Incentive、Conference、Exhibition)と呼ばれる会議や招待旅行、カンファレンス、展示会の誘致にも効果がある」と言います。

MICE
MICEとは、Meeting(会議・研修・セミナー)、Incentive tour(報奨・招待旅行)、Convention またはConference(大会・学会・国際会議)、Exhibition(展示会)の頭文字をとった造語で、ビジネストラベルの一つの形態。参加者が多いだけでなく、一般の観光旅行に比べ消費額が大きいことなどから、MICEの誘致に力を入れる国や地域が多い。日本でも、インバウンド振興策の一環として、国や自治体により誘致活動が盛んに行なわれている。

出典:JTB総合研究所『観光用語集』

カジノだけじゃない! IRはいろいろおトク

木曽氏:
「日本のカジノが参考にしている
シンガポールのカジノも、
このMICEに力を入れています。

また、ラスベガスは
世界最大級の家電見本市CESの
開催地としても有名です。

いま日本国内で
大きな展示会を開くなら、
東京ビッグサイトか幕張メッセが
会場になると思いますが、
どちらの会場も
気の利いたホテルを
用意するにしても、
ビジネスディナーに行くにしても、
不便な立地にあります。

今後、統合型リゾートで
展示会やカンファレンスを
行なった場合は、
宿泊から食事、そして遊びまで
すべて一カ所に集まっているので
非常に便利なわけです。

カジノが併設されているので、
政治会議や学術会議は
やりづらいかも知れませんが、
ビジネスイベントの誘致には
有効でしょう」

実際に統合型リゾートが設立されれば、カジノ以外にもいろいろな需要が見込めるわけですね。ということは、現在、想定されている経済的メリットを大きく超えていくこともありえますね。

日本型カジノの全貌やいかに!? 日本の経済に大きな影響をおよぼす一大産業の誕生が待ち遠しいですね。

木曽さん、今回は「日本でのカジノ誕生」について、丁寧に教えていただき、ありがとうございました!

おわり

国際カジノ研究所所長・木曽崇インタビュー

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