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ビジネスチャンスは、やっぱり子どもにある | ゲームジャーナリスト 野安ゆきお 第2話

取材・文/鈴木俊之、写真/荻原美津雄、取材・編集/設楽幸生(FOUND編集部)

任天堂がゲーム映像の著作権をオープンにして、ゲーム業界は大きく変わり始めている、というお話を前回お聞きしました。

今後はどういう動きが生まれるのでしょうか?

ゲームジャーナリストの野安ゆきお氏に話を伺います。

野安ゆきお(のやす・ゆきお)
1968年東京生まれ。ゲームジャーナリスト。
ファミコン時代からゲーム雑誌、ゲーム攻略本などの執筆・編集を手掛け、これまで作成したゲーム関連書籍は100冊を超える。現在はビジネス面からゲーム産業を見つめる執筆活動を中心に活動中。

100万人より5万人のほうが大きく見えるネット世界

――前回のお話で、「ゲームの人気の動向は、ゲーム実況を見ればよい」ということをうかがいました。

野安ゆきお(以下、野安):
「大まかにはその通りです。しかし落とし穴があるので気をつけてください。

それは、ネット実況などのアップ数やコメント内容だけでは、人気の実情はわからないという点です。

というのは、ゲームの分野によって、ユーザーの発信力などに差があるからです。

たとえば、「腐女子」と呼ばれる熱心な大人の女性ユーザーたちよりも、小中学生のほうが、圧倒的に市場が大きい。

ところが、ネットにおける発信力は大人である「腐女子」のほうが強い。さらに彼女たちの動向は個性的で目立つので、マスメディアに取り上げられやすい。

だから、ネットを眺めていると、一見「腐女子」好みのコンテンツが大流行しているように見え、本当の姿を見誤ってしまうんです。

実際、ネットの書き込みだけを見ていると、5万人ほどの熱心な大人のユーザーがいるゲームのマーケットのほうが、100万人の小中学生のマーケットより大きく思えるという錯覚が起きてしまうんです。

10万人が楽しんでいるマニア向けゲームと、発売初日に1000万本を売る「ポケモン」が、同じくらいの話題になっているように見えることすらある」

――両方に疎いと、確実にまちがえます。

野安:
「そういう場合は、SNSなどでのコメント数ではなく、動画の再生数を比べてみるといいんです。

再生数を見ると、発信力や話題性を持たない子どもたちを含めた本当のユーザー動向がわかる。

また、『面白いし、ハマっているけど言葉にできない』ゲームもあります。こういうゲームは、その面白さがコメント数に反映されないんです。

しばらくゲームから遠ざかっていたけれど、最近どんなコンテンツが人気なのだろうなどと考えた時は、ぜひ、この『再生数』に注目してほしいと思います」

大人に訊くな、子供に訊け

――ゲームの動向を知るには、他にどんな方法がありますか?

野安:
「ゲームにくわしい大人に尋ねると、たいてい失敗します。

大人の意見は、過去の作品に比べてどうかなどといった、人気が出るか出ないかとは関係のない情報や、自分たちのもつこだわりに左右されやすい。

一番よい方法は、息子さん、娘さんや、彼らの友だちが夢中になっているものを調べることです。

彼らは過去を知らない代わりに、おもしろいものはおもしろいし、つまらないものはつまらないと、はっきりしています。

そして『子供がハマるものはハネる』のです」

――「子供がハマるものはハネる法則」ですね。テレビゲームと長く関わってきた野安さんならではのご意見です。実体験として何かありますか?

野安:
「2017年3月に、任天堂が据置・携帯の両対応のゲーム機『Nintendo Switch』を発売しました。

現在、世界販売累計約2000万台、国内だけでも約600万台を売り上げる大ヒットとなっています(2018年12月現在)。

しかし2016年10月に発表されて以降、発売直後ですら、これほど大きなヒットになるとは思われていませんでした。

それどころか失敗するだろうという予想が大半でした。

しかし、これは自慢話のようなものなのですが、私は『これは大ヒットする!』と確信し、ハード発売前に記事にすることができました。

というのは、発売2か月前の1月13日に行われたメディア向け記者発表の後、2日間にわたって一般向け体験会が実施されたのですが、私はそこで、子供たちの生の反応に触れたからなんです。

その体験会での、子どもたちの食いつきがハンパなかったんですよ!

子供たちの目の色が変わっていました。

ところが『これは売れない』と論評した人たちのほとんどは、記者発表だけに出席して、一般向け体験会には出ませんでした。それで見誤ったのです」

――まさに「ゲームにくわしい大人には気をつけろ」だ。

野安:
「あの『ポケモン』も似たような経過をたどりました。

今でこそ世界的なコンテンツですが、1996年2月に発売された当初は、酷評に近い評価だった。

というのは、その頃、ゲーム業界は1994年に発売されたセガサターンとPlayStationに、話題が集中していたんです。

これからのゲームには32ビット機のつくる派手な画像や音が不可欠だと考えられた。

一方、初代ポケモンは、時代遅れとなりつつあった携帯ゲーム機『ゲームボーイ』がプラットホームです。

ドット絵のモノクロ画面も古臭い。これでは売れるわけがないと思われたんです。

私は当時、ゲーム雑誌を中心に記事執筆の仕事をしており、ポケモンを強く推していたのですが、ページの確保にも苦労したのをおぼえています。

しかし子供たちは、絵や音よりゲーム世界がおもしろいかどうかで判断しました。

結果は、子供の目が正しかったことを証明しています。

一方、大人の目がいかに節穴かということも、このポケモンのエピソードは示しています」

――それにしても、子供たちは「Nintendo Switch」の何に食いついたんでしょう?

野安:
「正直言って、わたしにもわからないんです(笑)。

わからないからこそ、発表会のときは一般向け体験会へ行って子供たちの反応を確かめましたし、いまでも子供たちの反応をチェックし続けています。

そうしたら、いくつかの要因が見えてきました。

たとえば、コントローラが軽く、子供がもっても疲れないことは大きいみたいですね。

普通の大人は気になりませんが、7、8歳の子供には普通のコントローラは重すぎるんです」

――子供の動向を見る重要性はわかりました。でも、子供ってすぐに飽きたりしないんですか?

野安:
「まったく逆です。子供が食いつくと、そのゲームやジャンルを10年以上支えます。

たとえば、子供時代にポケモンにハマった子供たちは、現在、大人になっています。

その彼らが自分の子供と一緒に新しいポケモンを楽しむというサイクルに入るからです。

そして、行く行くはゲームを作る側に回り、素晴らしい新作ゲームを作るようになる。

子供たちだけでなく老若男女問わず夢中になったスマホゲーム『ポケモンgo』などはその典型です」

子供の純粋な視点の大切さが、テレビゲーム業界を支えていると言ってもいいかもしれません。

次の回では、日本だけでなく、世界の動向も含めて、テレビゲームの未来について迫っていきたいと思います。

次回に続きます。

ゲームジャーナリスト 野安ゆきお

第1話 日本のテレビゲーム、今とこれから
第2話 日本のテレビゲーム、今とこれから
第3話 日本のテレビゲーム、今とこれから

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