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技術・規制・コストの制限を超えろ! ベテランオペレーターが見るドローンビジネスの世界・前編|十田一秀

■ 話を聞いた人

十田一秀(じゅうた・かずひで)氏

ドローン測量・空撮をてがける企業・KELEK代表。鹿児島県姶良市出身。30年ほど前ラジコンヘリコプターを使用した空撮測量会社を興した父のもとで空撮測量技術の修業に励み2011年に独立。無人航空機による空撮歴は15年以上。年間現場数約200件と現場経験豊富なベテランオペレーター。ドローンの実用化・商用化を進めるべく、地方自治体をはじめ、建設、物流、インフラ関連大手企業との複数プロジェクトに携わる。

空撮や測量、点検、農薬散布、物流など、数多くの産業における利活用が期待されているドローン。前回、セキュアドローン協議会・春原久徳氏のインタビューでは、「空飛ぶデータ取得端末」としてのドローンのインパクトについて語っていただきました。

今回はより詳細にドローンビジネスの現在を知るべく、現場で活躍するドローンオペレーター(操縦者)であり、ドローン企業・KELEKの代表を務める十田一秀氏にお話しをお伺いすることにしました。

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ドローンはいまどのようなビジネスに使われはじめているか。その具体的なエピソードをお聞きする前に、十田氏のお仕事についても触れておいた方が良いかもしれません。というのも、十田氏のお仕事の変遷は、ドローン技術、またドローンビジネスの変遷そのものと言えるからです。

十田氏はドローンの操縦時間4000時間以上を誇る、日本では数少ないベテランオペレーターのひとりです。昨今、ドローンについて話題になることが増えましたが、その実情を最も知るのはエンジニア、そしてオペレーターです。オペレーターは、各メーカーが製品化したドローンの機体や周辺技術を組み合わせ、クライアントにパッケージサービスとして提供します。操縦を担うだけでなく“インテグレーター”の役割も果たすのです。

のみならず、ドローンを飛ばす際の法律面の理解、またサービスがしっかりと実施されているかなど計画を実行・監督します。ある意味、ドローンを最も“使い倒している”、もしくはドローンを使った現場に最も近い存在がオペレーター。十田氏はその日本の第一人者ということになります。

十田氏の先代の会社が設立されたのは約30年前。同社では、ドローンが登場する以前から、ラジコンを使った空撮・測量業務を展開してきました。

これまで十田氏の主な業務となっていのは、「埋蔵文化財」の調査資料用の撮影・測量だったといいます。日本には、インフラ開発や建造物の設置を新たに行う際、その土地が自治体が管理する文化財の包蔵地であれば、文化財保護法で事前調査が義務付けられています。

その埋蔵文化財の調査が日本では「年間3,583件 (平成27年度)*」(十田氏 )あり、自治体に調査資料を提出する際に写真が必須となります。しかし、足場を組んだり、人間が直接撮影を行うことが難しいケースも。

そこで十田氏らの出番となります。ラジコンにカメラを積んで撮影し、それを発掘調査会社に提供するというのが、主な業務の内容だったのです。( * 文化庁『埋蔵文化財関係統計資料』より)

十田氏は現在でも埋蔵文化財の発掘調査に従事していますが、そこで用いる機体はラジコンからドローンに置き換わったと現状を説明します。

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十田氏:
「ドローンには、各種センサーをいろいろと取り付けることができるので、ラジコンより便利かつ安全。ラジコンを操縦するには、かなりの技術が必要とされてきました。空中で安定的に停止(ホバリング)させるだけでも、1年ほど訓練しなければなりませんでした。一方で、ドローンは空中姿勢が自動で制御されます。操縦が簡単に行えるようになったというのは、ラジコンとドローンの大きな違いです」

十田氏はまた、春原氏と同じくドローンの強みは「さまざまなデータ取得が可能になったこと」だと話します。ただここには、ドローン本体のみならず、周辺技術の発展も大きく関係していると付け加えます。

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十田氏:
「ラジコン時代の空撮動画は、とにかくブレがすごかった。しかし、ドローンの登場と並行して、傾き制御などカメラ側の性能もアップしてきました。それらを組み合わせることで、誰でも簡単に空撮が楽しめるようになり、流行し始めたという経緯があります。また同じタイミングで、写真測量にも技術革新が起こりました。もともと、写真測量の技術は専門知識がなければできませんでしたが、現在ではドローンで大量の写真を撮影して、それをSFMソフトで処理すれば、誰でも立体的な3次元モデルをつくれるようになったのです」

SFMとはStructure from Motionの略で、複数枚の写真から、対象の形状を復元する技術を指します。例えば、工事や土木作業を行う際、前もって自然の地形や現場全体のイメージ画像が必要になるとしましょう。

まずドローンで数百枚~数千枚の写真を撮影して、SFMソフトに入力すれば、簡単に「シムシティ」のような3次元のイメージ画像をアウトプットすることが可能ということです。

そうして、空撮や測量が簡易的になったことで、現場でドローンを活用する建設・土木工事関連企業が増えてきたと十田氏は言います。

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十田氏:
「工事をする際、土量や地形の測量にドローンが使われ始めています。工事を請け負う企業が自社でドローンを導入して測量に利用するパターンもありますが、なかにはノウハウがないと測量が難しい現場もあります。

そういった際には、我々のようなドローン専門企業に依頼がくる形です。近年ではレーザーセンサなど、ドローンに装着できる測量端末も広がりを見せていて、界隈では工事現場以外のさまざまな測量のシチュエーションにも用途が広がっていくとみられています」

ドローン運用のスペシャリストである十田氏には、測量以外にも、さまざま依頼が舞い込んでいます。代表的なのは、建物など構造物やインフラの点検作業です。

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十田氏:
「風力発電のブレードの点検などにも、ドローンは使われようとしています。もともとは、数百メートルもある高さのブレード地点まで高所作業者の方がのぼって、目視で状況を確認し、問題があれば補修をしていました。その目視確認のタスクを、ドローンで代替するというものです。同様に高層の建物の点検をする際にも、人間の作業者が確認できるように足場を組む必要がありました。これは非常にコストが高くついていたのですが、代わりにドローンで作業ができないかとする相談が増えています」

報道を調べてみる限り、日本でもダムやトンネル、橋梁、発電所、送電設備など、さまざまな施設・インフラの点検にドローンが用いられようとしています。

なお、点検と言うと少し難しいかもしれませんが、カメラで対象を撮影することだとするとイメージしやすいかもしれません。昨今では、ドローンで撮影した点検画像を人工知能(AI)に判断させようという関連技術も開発が進んでいます。

合わせて考えるのであれば、人間が危険な場所、もしくは高所にのぼって目で確認し補修箇所を特定するという作業の流れを、機械に置き換えてしまおうという動きです。

十田氏:
「構造物やインフラの欠損や故障は、いまのところ人間の目で判断するのが最も精度が高い。ドローンで画像を撮影できたとしても、太陽光の反射や気候の違いなどなどさまざまな要因で判断が難しいからです。

とはいえ、ゆくゆくそれら特殊な条件も含めて異常を検知できるAIが登場すれば、点検作業の現場はかなり変化していくのではないでしょうか」

なおドローンサービスを提供する企業の良し悪しを判断する基準のひとつは、「安全性が確保できているか」(十田氏)だと言います。ドローンは「自動で飛行する便利な機械」とされていますが、その実、使われる環境によって発揮される性能にも大きな違いがでてきます。

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十田氏:
「ドローンを導入する企業では、担当者が3~4日の研修を受けて運用開始するというパターンも増えてきました。ただ、ドローンは気温や気候、高度や気圧によってバッテリーの減り具合が変わるなど、非常に繊細な道具でもあります。同時に、日本の法律上、飛行が禁止されている区域がありますし、違法となってしまう運用方法もあります。

過去には、企業が性能や規制を理解しておらず、コンプライアンス的に問題となったり、落下事故を招くという事例もありました。運用する側には、技術と規制の双方を理解して、安全・安心なノウハウを蓄積していくことが求められています」

着々と実用化が進むドローンですが、後編では現場からみるドローンビジネスの課題、また可能性について話を堀りさげていきます。

後編に続きます。

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取材・文/河鐘基(ロボティア)、写真/荻原美津雄、取材・編集/FOUND編集部 

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