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神様も、人間だった。

当コラムは、長きにわたりウォーレン・バフェットを研究されている経済・経営ジャーナリスト、桑原晃弥さんへのインタビューに同行したFOLIOスタッフが綴る取材後記です。

今回の寄稿者は、FOLIO 投資戦略部に所属する出本勇貴です。

日々マーケットと向き合い、テーマ投資の組成のために様々な情報を分析し続ける彼は、何を思ったのでしょうか?

出本勇貴/
慶應義塾大学理工学研究科卒業。日系証券会社入社後、一貫してエクイティデリバティブのトレーディングに10年間従事。オプションや仕組債などのプライシングから売買に携わる。2018年10月より株式会社FOLIO 投資戦略部に所属。

文/出本勇貴

"投資の神様"、ウォーレン・バフェット

株式投資を行っている人なら、一度は聞いたことがある名前であると思う。

私も前職の証券会社での新人時代に、ベテランのトレーダーから何度も聞かされた。

「バフェットみたいな長期保有の投資ができれば、絶対負けない」と。

その当時、それまで株式投資の経験も少なく、無知であった私は、絶対負けない投資方法があるなら、なぜ自分で行わないのだろうかと単純に疑問に思ったことを覚えている。

しかし、経験を積むごとに、バフェットの思考は誰にでも真似できそうだが、ほとんどの人が真似ができないことを体感してきた。

一体、それはどうしてなのか。

バフェットの哲学に精通している経済・経営ジャーナリストの桑原先生は、「バフェット自身も『自分のようなやり方は少数派』だと述べているように、よい会社を選んで買い、10年20年に渡って保有し続けるのは、言うほど簡単ではありません。

『この方法がいいのはみんな分かっている。けれども、実践できる人はほとんどいない』とも言っています。」と語る。

つまり、バフェットは当たり前だと思うことを、当たり前にずっと"やり続ける"ことができるのである。

例えば、
『自分の能力の輪の中にめぼしいものがないからといって、むやみに輪を広げることはしません。じっと待ちます』
というバフェットの語録がある。

これは、株式投資を続けている人にとっては容易なことではないと私は感じている。

どういうことかというと、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)などの長期にわたって上昇し続けているIT企業を、自分の得意分野ではないとして買わないのである。

一見、簡単そうに思えるが、これができる人は一握り。

普通の人でも、「自分でもできそう」と思うが、実際やってみるとほとんどの人が実践できないと思う。

なぜなら、十数年の間にずっと上昇している企業があれば、その誘惑に駆られて一度は投資してみようと思うはずだ。

周りから「Googleの株を買って儲かった」や「まだまだAmazonは成長する」などを見聞きすると、少しぐらいは買ってみようと思うのが人間の心理であると思う。

特に機関投資家であれば、なおさらのことである。

保有していなかったことを省みて、大幅下落時に買いに回ったり、類似企業を見つけて投資するなどを行わなければ、投資家としての資質が問われる。

バフェットであれば、周囲から推奨企業の情報を簡単に入手することが可能であるし、率いている米複合企業のバークシャー・ハサウェイの株主からは株価が上昇している企業をなぜ買わないのかと常にプレッシャーに晒されているはずである。

それでも、揺らぐことなく自分に優位性がないものには投資を行わないという自分の原則に従い続けている。

『自分で決めた原則は、とことん忠実に守り抜くこと。小さなことで規律を破ると、大きなことでも規律を破るようになる』

正にその通りだが、人間とは弱い生き物で、自分に甘くなりがちである。しかし、バフェットは自分で決めた原則を守り続けられるのである。

そこにバフェットの人間としての偉大さを感じることができる。

今年5月のGWの時期に、バークシャー・ハサウェイの年次株主総会が開かれた。

この株主総会は非常に人気があり、数万人の株主たちが世界中から訪れてきて「投資の神様」の声に耳を傾けた。

情報サイトでライブで動画配信されるため、私も見てみることにした。

88歳のバフェットと盟友である95歳のチャーリー・マンガーの二人が株主からの質問を5時間にわたって回答している光景は、"投資の神様"ということもあってか神聖な雰囲気にも見える。

そこで、サプライズな発言を聞くことになった。

「Amazonは割安である」

バークシャーとして、ついにAmazonの株を購入したのだ。

バフェット自身が購入にあたって、直接的に意思決定はしていないようだが、非常に驚きのことであった。

と同時に、"投資の神様"の人間らしさを感じられる出来事であるため、個人的に共感してしまった。

原則、規律をあれだけ守り続けてきても、やはり魅力的な株の誘惑には耐えきれなかったのかと。

今後のAmazon株とバフェットの動向とが気になって仕方がない。

株式投資のマニアックな楽しみ方である。

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