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春原久徳(セキュアドローン協議会 会長)|第2回 地方の空、途上国の空で活躍するドローン

セキュアドローン協議会会長・春原久徳インタビュー

目次

第1回  ドローンの過去・現在・未来を語ろう
第2回 地方と途上国の空で活躍するドローン

取材・文/河鐘基、写真/荻原美津雄、ロボティア、取材・編集/FOUND編集部

—— 第1回で春原さんの口から語られたのは、ドローンが過去から現在までたどってきた道のりでした。

そして、そのドローンが現在から未来に活用される可能性として、「作業代替」と「データ取得」の2つがあり、特に後者の「データ取得」がカギになるということについても教えてもらいました。

つづきとなる第2回では、ドローンが、将来、どのような形でわたしたちの社会に入ってくるか? について、より具体的な形で聞いてみました。

第2回 目次
・ドローンは地方産業に合う
・発展途上国にこそドローン
・ドローンと経済合理性のヒミツ
・ドローンが各地のデータを収集

ドローンは地方産業に合う

ここで春原氏から、興味深い指摘がありました。

ドローンは地方の産業と相性がよい

というものです。

これは一体、どんなことを意味しているのでしょうか? なぜ地方産業と合うのでしょう?

春原氏:
「ドローンは『飛ぶスマホ』
 とも呼ばれますが、
 スマホやPCとは決定的に
 異なる点があります。

 それは、"フィールド"、
 つまり何かしらの
 "現場"や"リアル世界"を
 対象にしている端末である
 という点です。

 例えば、
 ウェブやIT関連のビジネスは、
 デジタル世界でほとんどすべての業務を
 処理できますよね。

 そのため、
 地方に拠点を構えたりするなどのムダを
 極端に削ぐ傾向にあり、
 結果、
 産業全体が都市に集中しています。」

つまり、地方、日本各地にはデジタル世界では収集できないデータがある。

そして、そのデータというものが"現場"や"リアル世界"にある「フィールドにおけるデータ」だと言うのです。


たとえば、それはどのようなものなのでしょうか?

春原氏:
「 たとえば農業、建設土木、
 災害調査、物流など
 が代表的なものです。

 ドローンが対象とする産業は
 日本各地に現場があり、
 逆に言えば、
 その現場を離れてしまうと
 ビジネスが成り立ちにくくなる。

 これからビジネスモデルを
 どううまく構築していくか
 という課題はあります。
 
 それでも、ローカルな地域から
 有力なドローンビジネスが登場したり、
 ドローンがローカル産業を強化する
 というようなシナリオは
 十分にありえるわけです」

◎地方でドローンが活躍できる現場
・農業
・建設土木
・災害調査
・物流 など

発展途上国にこそドローン

ドローンがリアルな現場で力を発揮するという視点で見た時、発展途上国もドローンビジネスの大きな潜在需要地と言えるでしょう。

発展途上国には、これから整備を行ったり、生産性を上げなければならないフィールドがたくさんあります。

それら未開拓のフィールドに接点を持っているかどうかも、優良なドローン関連企業を見抜くひとつの物差しになるかもしれません。

春原氏:
「発展途上国のメイン産業は、
 大半が農業や土木建設、
 そしてインフラ整備など。
   ドローンが寄与できる産業ですね」

なおすでにジップラインという有名なドローン企業は、ルワンダ政府の正式な発注のもと、医療品など緊急物資の空輸ビジネスを広く展開しています。

そして今後、同社はアフリカ各国へ業務を拡大していくとしています。

ドローンと経済合理性のヒミツ

春原氏:
「ドローンビジネスの成功には、
 経済合理性が
 最も重要だと思います。

 ジップラインの事業も
 非常に合理性があります。

 ルワンダなどアフリカ各国には、
 ジャングルや道路がない環境があり、
 空を飛べば
 10分~20分で着くルートでも、
 地上を移動すると
 半日かかってしまう
 というようケースがあります。

 道路をつくるのに、
 1メートル50~100万円かかる
 と言われていますが、
 そうなるとドローンを飛ばした方が
 経済的に安上がりなんです。

  新しい技術は何でもできる
 と謳われてしまいがちですが、
 それが社会にハマるか否かは別問題。

 日本においても、
 経済合理性が達成できる
 ドローンビジネスに
 投資していく必要があるでしょう」

ドローンが各地のデータを収集

現状では、空からデータを集める端末として活用され始めているドローン。「将来的に、その可能性は想像以上に大きい」と、春原氏は言います。

春原氏:
「先に説明した通り、
 現在のドローンは、
 各フィールドで
 データを集めることに
 使われはじめています。

 そして、
 それらデータを他のフィールド同士で
 共有できる仕組みができてくれば、
 人間の生活や経済活動が
 全体として
 より豊かになっていくはずです。

 農業を一例に挙げれば、
 生産性の向上というレベル
 にとどまらず、
 農作物の需給予測や廃棄量削減などの
 効果も生むはずです。

 いずれにせよ、
 ドローンが日本各地を飛び回って、
 いろいろなデータを収集すること
 が何より先決。

 そして、そのような状況を
 継続的に維持するためにも、
 経済合理性が高い
 ドローンビジネスのモデルを
 確立していくことが求められています」

なるほど、農業という分野をひとつ取ってみても、

・生産性向上
・農作物の需給予測
・廃棄量削減

など、データ取得によって農業に一大革命を起こすほどの変化をもたらす可能性があるわけですね。

ドローンによる現実空間からのデータ取得が進んだ未来には、いくつもの業界で改革が起こる可能性を秘めている。

目には見えにくい変化ですが、とてつもなく大きい、いくつもの変化が起こるというわけです。

もちろん、『データ取得』や『作業代替』といった目的以外にも、未来のドローンは活用されていくはずです。

夢のような話としては、ドローンタクシーなど空飛ぶ移動手段としての研究・開発も日夜、進められています。

また、空を見上げれば、そこには必ず何十台ものドローンが飛んでいる光景も当たり前のものになるかもしれません。

空飛ぶロボット、ドローンの発展。

今後それは、人々の生活と社会に多様な角度から、少しずつしかし大きな変化をもたらしていくことだけは間違いなさそうです。

わたしたちも、新しい空の時代についていくためには、常にドローンの動向にアンテナを張り巡らせていないといけませんね。

春原さん、興味深いお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

おわり

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取材・文/河基鐘/1983年北海道生まれ。テック系ウェブメディア「ロボティア」を運営。著書に「AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則」(扶桑社新書)、「ドローンの衝撃」(扶桑社新書)、「ヤバいLINE 日本人が知らない不都合な真実」(光文社)。訳書に「ロッテ 際限なき成長の秘密」(実業之日本社)、「韓国人の癇癪 日本人の微笑み」(小学館)など。