“3つの不の解消” で 高齢社会のビジネスチャンスをつかむ|シニアビジネスプロデューサー・村田裕之 第1話
日本は高齢化社会のフロントランナーです。内閣府が発表している資料によれば、2017年における日本の総人口は1億2,671万人で、そのうち65歳以上の人口は3,515万人になるそうです。
割合で見ると27.7%が65歳以上です。さらに、2065年には38.4%が65歳以上になるとも言われています。(出典:高齢化の状況|平成30(2018)年版高齢社会白書(概要版) - 内閣府 )
2017年 65歳以上の人口 27.7%
2065年 65歳以上の人口 38.4%
肌感覚としても、東京の郊外ですら子供や若者よりお年寄りを見かけることの方が多い気がしますし、取材で地方に行くとおじいちゃん、おばあちゃんにしか出会わないといった状況も珍しくありません。
このように人口減少と高齢化が急速に進む時代には、バブル期に日本が経験してきたような「人口が増え、若者が増える」ことを前提にした考え方は通用しなくなります。
ビジネスにおいても、人生設計においても、高齢社会を前提にした考え方にシフトしなければならないのです。
でも、そんな時代にどのようにしてビジネスや生き方を描いていけば良いのか。そこで今回は、20年前にアクティブシニアという言葉を提唱し、数多くのシニアビジネスの新事業開発やマーケティング支援に取り組んできた村田裕之さんにお話をうかがうことに。
女性向け専門のフィットネスジム『カーブス』や高齢者向けの携帯電話『ドコモ らくらくホン』などのヒット商品に深くかかわってきた“シニアビジネスの第一人者”に高齢社会におけるビジネスモデルや人生設計について、ヒントを教えてもらって来ました。
■話を聞いた人
村田裕之(むらた ひろゆき)さん
新潟県出身。東北大学工学研究科修了、民間企業に勤めた後、仏国立ポンゼショセ工科大学院で国際経営を学ぶ。日本総合研究所等を経て、2002年に村田アソシエイツを設立。2006年より東北大学特任教授。シニアビジネスにおけるヒットメーカーとして知られる。著書に『シニアシフトの衝撃』(ダイヤモンド社)、『成功するシニアビジネスの教科書』(日本経済新聞出版社)、『スマート・エイジング 人生100年時代を生き抜く10の秘訣』(徳間書店)など。
・村田裕之の団塊・シニアビジネス・高齢社会の未来が学べるブログ
シニアビジネス=介護ビジネスではない
時を遡ること約20年前の1999年。当時日本総研で新規事業の企画立案や支援に取り組んでいた村田先生は、2000年4月から始まる公的介護保険制度に伴い続々と動き出す介護ビジネスの動きを見て、「これだけではない」と考えていたそうです。
世の中の関心もメディアの論調も「介護にビジネスチャンス有り!」となっている中、調査と進めると意外なデータが見つかったそうです。
“ 介護が必要な高齢者は全体の2割しかいない ”
そのデータを見て「高齢者向けビジネスイコール介護ビジネスという思い込みは間違いだ。介護が要らない高齢者、アクティブシニアの数の方が圧倒的に多く、その層こそこれから企業が注目するべきマーケットだ」と気づいた村田先生。
それ以来、村田先生は“アクティブシニア市場”をターゲットとしたビジネスを数多く手がけてきました。最近は介護事業者が「介護保険外ビジネス」という言葉をよく口するようになりましたが、何のことはない、アクティブシニアを対象にしたビジネスのこと。20年前から現在の状況を予想していたことに驚きを感じます。
このお話をおうかがいすると確かにアクティブシニアが存在し、そこには大きな市場が存在しそうなことがわかります。でも、そのマーケットが他よりポテンシャルが高いと、村田先生が思われた理由はなぜだったのでしょうか?
村田氏:
「人口構成を見ると、
日本は団塊世代がずばぬけて多い。
その次に多いのが団塊ジュニアです。
ですから、この層はそもそも母数が大きい。
そして、年功序列の恩恵で給与が高く、
退職金も多くもらった人が多いので、
保有する金融資産も多いのです。
そこに来て、リタイアして時間もあるとなれば
他よりも有望なマーケットが
生まれると考えるのは自然なことです。
団塊、団塊ジュニアの中から
活動的で使えるお金も多い
アクティブシニアの市場は有望です」
シニアがお金を使いたくなるポイント
年功序列の恩恵を受けられたシニアの貯蓄が多きことは確かなようですが、一方で倹約意識が高い人も多く、簡単にはお金を使わないのだとか。
貯金はあれどもこれから長く続くであろう"老後の備え”でもあるため、貯金してきたお金はパーッと散財することはあまりないのだそうです。
それでは、お財布の紐がかたいシニアにお金をつかっていただくには、どうすればよいでしょう?
村田氏:
「シニアビジネスの基本は “不”、
つまり不安、不満、不便の解消です。
特に健康不安、経済不安(お金の不安)、
孤独不安は、シニアの不安の代表です。
これを解消する商品・サービスがビジネスの基本です。
歳をとると病気の治療や介護に要るでしょ?
だから、お金に不安持つ人は多いし、
それが健康でいたい
という意識にも繋がります。
また、高齢になるにつれ、
家族や友人たちとの死別が増え、
人との交流が少なくなり、
一人暮らしも増える。
すると孤独への不安が強まりやすい。
配偶者が亡くなって
急に一人暮らしになったことによる
生活の不便も出てくるでしょう。
こういった問題の解決が
ビジネスになります」
なるほど、シニアの不安、不満、不便に気づいて、それを解消する方法をビジネスとして提供するのが基本というわけですね。
もう少し具体的に、これまで村田先生が手がけられたシニアビジネスの事例をお話しいただくことはできますか?
村田氏:
「私が立ち上げ段階から関わった事例だと
中高年の女性をターゲットにした
カーブスというフィットネスジムがあります。
私が独立した直後にアメリカで見つけ、
メディアや講演で紹介したところ、
当時のベンチャー・リンクが
日本での事業会社を立ち上げることになりました。
当初は知名度がなく、集客も難しく、
事業をやっている方も未熟なので、
始めて3~4年は本当に大変でした。
今でこそ知名度が上がり、
黙っていてもお客さんが来ますが、
最初は苦労の連続でしたよ」
アメリカでは40~50歳代の女性にヒットしていたカーブスを見た村田先生は、当初日本のシニアにヒットするか確証はなかったそうです。
しかし、介護ビジネスのように規制がなく、簡素な設備で始められるため撤退がしやすい点に強みを感じ、「これは日本でも当たる」と直感したそうです。
村田氏:
「事業は始めるより、
撤退する方が大変です。
カーブスはカーテンで仕切った更衣室と
トレーニングマシンを
置けるスペースがあれば出店できます。
撤退がしやすいなら
新規出店を繰り返しつつ
トライアル・アンド・エラーの検証ができる。
そこに大きなメリットを感じました」
村田先生が目を付けたビジネス、カーブス。最初は苦労の連続だったと言いますが、どんな苦労があったのでしょうか。
次回の記事では、カーブス立ち上げ秘話に加えて、人生100年社会ともいわれる今、賢く歳を重ね、健康を維持するための方法をうかがいます。
つづく
シニアビジネスプロデューサー・村田裕之
第1話 “3つの不の解消” で 高齢社会のビジネスチャンスをつかむ
第2話 人生100年時代に賢く歳を重ねる方法
第3話 会社軸ではなく自分軸で生きることが、老けこみを防ぐ?
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