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投資の話はタブーという雰囲気が充満する日本| ファイナンシャルプランナー・伊藤亮太 第1話

今回は、東京、愛知など事務所を構え、日々全国を飛び回り、お客様の相談に乗っているファイナンシャルプランナー伊藤さんにお話を伺いました。「投資がなぜ日本でなかなか広まらないのか?」「投機と投資の誤解について」「投資をはじめるうえでのポイント」などの疑問についてぶつけました。日々色々なタイプのお客様と直接対峙しているので、伊藤さんのお話はリアリティに溢れ、投資をしたことがない方も、投資をすると自分がどういう感情になるのか疑似体験できる内容になっています。投資している方は、自分の感情や投資行動を振り返るきっかけにしていただければと思います。全3話ですので、ぜひ最後までお付き合いください!

ファイナンシャルプランナー・伊藤亮太
【第1話】投資の話はタブーという雰囲気が充満する日本
【第2話】「少額でも投資できる」という事実は意外と知られていない
【第3話】投資の成功のコツは”マイルール”を愚直に守ること

伊藤亮太
岐阜県大垣市出身。慶應義塾大学大学院(商学研究科経営学・会計学専攻)在学中にCFP資格、DCアドバイザー資格を取得。卒業後は、証券会社の営業・経営企画部門、社長秘書等を行う。2007年11月スキラージャパン株式会社を設立。ファイナンシャルプランナーとして、個人の資産設計を中心としたマネー・ライフプランニングの提案、公的年金や確定拠出年金の提案、保険の見直しを得意とする。東洋大学経営学部、大手前大学通信教育部、千葉科学大学危機管理学部の非常勤講師も務める。
【今回のポイント】
✓FPにセカンドオピニオン的に相談している人もいる。
✓投資については高齢者ほど意識が高く、行動力もあるのが実情。
✓若い人ほど年収水準が低くなっている。
✓投資をやっている人とやっていない人が2極化している。
✓将来に大きな不安を抱えていて、とりあえず貯金はしておこうという方が増えている。
✓投資を普及させるには“金融”を学校科目にするのも一案。

―ファイナンシャルプランナーは、日々色々なお金にまつわる相談に乗るのが仕事だと伺いました。具体的にはどんな方のどんな悩み相談が多いものなのでしょうか? 

資産規模に応じて、富裕層向けと一般層向けの2種類あります。富裕層は資産を“増やす”相談もありますが、どちらかというと今まで積み上げてきた資産をどう“守る”か、そして節税対策の相談がメインです。一般層については、教育資金と住宅ローンの相談が多いですね。“増やす”というよりも、日常のお金のどうやりくりしていけば良いのか、という視点が強いです。

―同じ資産運用でも資産規模でニーズが違うんですね。守る資産があるなんて羨ましい限りです…。訪れる人の相談内容というのは、どんなものが多いのですか? 

ざっくり相談したいという方もいらっしゃいますが、かなり明確に内容が決まっている方は多い印象です。例えば物件についてだと、「こういう条件で買いたいので探してほしい」「買う際の注意点を総合的に整理してほしい」「今の年収水準で買うのは妥当かどうか知りたい」などを聞かれます。このように、専門家の意見を“セカンドオピニオン的”に使っているケースは多い気がします。あとは、何かしらの金融商品を買ったあとに、「果たして良かったのか?」と確認に来られる方もいますね。買ったことをあらためて自己納得したい気持ちなのかもしれません(笑)ざっくり聞きたいという方は、例えば、ふるさと納税について教えて欲しいという依頼や、誰でもできる少しお得になる制度を教えて欲しい、というのもありますね。

―想像以上に気軽に相談しても良いのですね!どの世代の人からの相談が中心なのでしょう? 

相談者は30~50代が多いですね。20代もちらほらいらっしゃいます。ある程度年配の方ほど、余剰資金で買いたいものが決まっているケースが多いです。あと、この仕事をして分かったことは、誰にも言ってないだけで、実はお金を持っている人はかなりいるということです(笑)宝くじで高額当選した方、外資系金融機関勤務やテレビ局勤務の方、夫婦ともに公務員でコツコツ貯めてきた方など、お金持ちにも色々なパターンがあることが分かってきました。退職金でまとまった資金が入ってきたのでどうやり繰りしていくのが良いか相談したいという方もいます。“人生100歳時代”になり、老後のお金が果たして足りるのか不安を抱えているのでしょう。土地はたくさん持っているものの、手元に現金がなくて困っている方もいましたね。

―お金を持っている人はこっそり持っているんですね。お金持ちの投資には興味がそそられますね。

富裕層は、資産全体の30~40%程度は預金でしっかり持っていて、あとは適宜投資に回しています。ただ冒頭にも申した通り、資産運用スタンスは極めて保守的というか堅実志向ですね。なお、医師や教師は預金メインの方が多いです。特に教師は、投資に対して怖いというイメージがかなりあるようで、絶対に投資しないというスタンスの方は多いように感じます。なかには、投資の有効性について、数字で論理的に説明すると腹落ちしてやってみようとなる方もいますが、元本割れリスクが極めて小さいような金融商品でやりはじめることがほとんどです。ちなみに、先日、某信用金庫で投資セミナーを開催したのですが、参加者は高齢者の方ばかりで若い方の姿はありませんでした。投資については高齢者ほど意識が高く、行動力もあるのが実情ですね。多くの金融機関の悩みは、とにかく若い人との接点が皆無なことです。どう若い人に興味を持ってもらうか必死になっています。

―確かに投資は特に若い方には“自分に関係ないもの”という意識がありますよね。

そうですね、かなり縁遠いものだと思います。あと、現実問題として若い人ほど年収水準が低くなっているのではないかと感じています。日々の生活のこと、特にお子さんがいらっしゃる家計であれば、教育費のことだけで精一杯で、「とてもじゃないけど投資なんてできない」というのが本音かもしれません。ただ一方で、投資をやっている人はやっているので、“2極化”というのがキーワードかもしれません。地方在住の方ほどやらない人が多いのも特徴ですね。いまどき、1万円もあれば投資はできますが、やってみようとはなかなかならないようです。一方で、学資保険などは堅実にやっていたりするので不思議なものです。保険については、預貯金と同じような安心/安全のイメージがあるようなのです。

―ホント日本人は保険が大好きですよね。そもそもなんですが、なぜ日本では投資文化はなかなか広まらないのでしょうか?

まず若い方の親世代が、 “バブル崩壊”で投資に失敗していることが多く、 “投資で成功できる”というポジティブなイメージが持てないのだと思いますね。お金は汗水垂らして稼ぐものであるべきで、投資で楽に儲けるのはけしからんという思想も色濃く残っていると感じます。

また、中学や高校で投資教育を受けていないので、“投資”という選択肢がそもそも頭になく、“とりあえず預貯金でいいや”という発想になってしまっているのです。大学生に投資をしているか聞いてみると、学生達は「そんな余裕はない」と答えます。少額投資できるインフラは整いつつありますが、資産運用はお金にかなり余裕がある人がやるもので、自分たちには関係ないものという発想は根強いようです。日々の暮らしを生きていくのに精一杯で、将来に大きな不安を抱えていて、とりあえず貯金はしておこうという方が増えている印象もあります。

―確かに大きな不安を抱えている方にとっては投資どころじゃないですよね。とても納得感があります。都市部ではなく地方でも似たような傾向は見られるのでしょうか?

九州地方でセミナーをすることも多いのですが、「投資について家族にも言えないし、友達にも相談できなくて困っている」という方が良くいらっしゃいます。投資について周囲に話すとマイナスのイメージを持たれることが怖いのだそうです。地方ほどその傾向は強いですね。日本には、どこか投資に関連する話題は“タブー”とする風潮があるように感じます。投資などしないで質素倹約に生きていくのが1番という考えがまだまだこびりついているのかもしれません。打開策の1つは、やはり“金融”を学校科目に組み込んでしまうことだと思います。それくらいのことをしないと大きくは変わらないかもしれないですね。とにかく変わるには時間がかかると思います。

【編集者の感想】
実はお金を持っている人が多いことには驚きました。日本には現金・預金が約950兆円あるということはデータでは理解していましたが、リアリティを感じました。また、投資がなかなか広まらない理由として、成功体験が乏しいことや、そもそも「そんな余裕がない」という方がいることにはハッとさせられました。将来が不安すぎるので、それどころじゃないのかもしれません。第2話では、投資をされている方々がどういう感情になるかという点を深掘りしていきたいと思います。(つづく)

取材・文・編集/野水瑛介(FOUND編集部)、写真/荻原美津雄

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