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誰もが楽しめるeスポーツのお金と可能性|筧誠一郎・前編

ゲームはもはや遊びではなく、プロが活躍するれっきとしたスポーツ産業のひとつになろうとしています。

今回、日本でも有数のeスポーツの専門家であり、仕掛人でもある筧誠一郎氏にお話しをお伺いしました。

筧氏は広告代理店大手・電通に勤務し、約20年間、音楽およびゲーム関連の仕事に従事していました。ところが、2006年にeスポーツという産業を知り衝撃を受けたと言います。

日本ではプレーヤーが輝けず“オタク”と呼ばれて後ろ指さされる。それが、世界では国を背負って賞金をもらうプロが登場しているのだと。

ゲーム専門家として仕事をしていた経緯から、世界の新たなシーンに触発される一方、日本のシーンに危機感を抱いた筧氏。

電通を退社した後、eスポーツの啓発活動を続けながら、経済活動として世に確立すべく奮闘を続けています。eスポーツに懸けた男が見た、世界、そして日本の状況とは…?

■ 話を聞いた人

筧誠一郎
1960年東京生まれ。eスポーツを専門に様々なビジネス展開を行うeスポーツコミュニケーションズ合同会社代表。大学卒業後、電通へ入社。音楽やゲームのプロジェクトに数多く関わった後、同社から独立。eスポーツイベントの主催・プロデュースに携わり、啓蒙活動を続けている。著書には、『eスポーツ地方創生』(白夜書房)がある。

eスポーツの市場規模は、世界的に拡大の一途を辿るだろうとされています。筧氏は「現在、世界のeスポーツ市場規模は約1000億円」とした上で、次のように説明を続けます。

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「この市場規模の額には、ゲームの売り上げは含まれておりません。単純にイベント運営や放映権、グッズなどで生まれている収益です。日本国内の市場規模は、おおよそ48億円となっています。この48億円という数字は2017年頃にはほぼ存在しなかったもの。ここ1~2年間で、新しい市場が生またことになります」

世界的にみた時、eスポーツの収入の内訳は、「スポンサー収入」、「放映権による配信料」、「イベントの入場料収入」、チームや大会運営側が販売するグッズなど「マーチャンダイジング」(MD)に区分することができると筧氏。なかでも大きいのは、スポンサー収入だと言います。

例えば、海外では大手企業が続々とeスポーツへのスポンサードを表明しています。象徴的な出来事としては、ドイツにおけるマクドナルドの動きがあります。マクドナルドは、現地プロサッカーリーグ・ブンデスリーガのトップスポンサーとして十数年にわたってスポンサードを行ってきましたが、そちらをすべて引き上げ、2018年にeスポーツに“鞍替え”しました。

「大企業がeスポーツへのスポンサードを表明する最も大きな理由は、『若者へのマーケティング』です。

ドイツでは、マクドナルドが『若者にアピールするにはサッカーよりeスポーツの方が良い』という判断をしたということになる。これは世界的な潮流です。若者を対象にマーケティングをしたい大企業が、次々とeスポーツへの協力を表明しています。

例えば、米国には『オーバーウォッチリーグ』という一番大きなeスポーツリーグがありますが、スポンサーはインテルとトヨタです。トヨタは年間約30億を拠出しており、それほど価値があると試算しているのだと思います」

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日本でも、大企業がeスポーツに協力的な動きを見せ始めていると筧氏は続けます。

「2018年の2月に、日本eスポーツ連合という団体が立ち上がりましたが、そのオフィシャルスポンサーは、au、BEAMS、ビックカメラ、サントリー、ローソン、パソコンメーカー、わかさ生活など大企業が名を連ねています。

正直、現時点で日本のeスポーツそのものに力がある訳ではないですが、日本eスポーツ連合のようなオフィシャル組織に対して、企業がサポートをしていこうという流れが生まれつつあります」

日本の場合、まだまだ市場が生まれたばかりというのは前述しましたが、収益構造においては、スポンサー収入に偏っている状況があるそうです。裏を返せば、イベントの入場料収益や配信料などをまだまだ微々たるもの。

今後、爆発的に成長する可能性があります。おそらく、eスポーツを仕事や生業にする人も次々と生まれてくるでしょう。その代表格がプロゲーマーです。

「世界では、年間4億円~5億円を稼ぐトッププロがすでに数人現れています。トッププロの中には、米国人だけでなく、ヨルダンやパキスタンなどの選手も混じっています。日本人では、東大卒のときど氏が167位にランクインしたことがあります。

一方で、ゲームの動画配信などで稼ぐストリーマーという人々もいて、世界には月間5000万円ほどを稼いでしまう人気者も登場しています」

では、なぜ世界の大企業が次々とスポンサードを表明したりと、eスポーツの市場規模が拡大することになったのでしょうか。

筧氏はまず「メディアが食いついたことが大きい」と私見を述べます。そして、その動きは「サッカーに近いのではないか」とも。

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「eスポーツへの注目の高まりは、Jリーグ前夜の日本を想像してもらえると分かり易いかもしれません。

例えば、キャプテン翼などのコンテンツの影響で、巷にはサッカー少年があふれていて、野球少年を凌駕するほどになっていった時代があります。その時代にサッカーをやっていた子供たちは、『サッカーの方がイケてるよね』という感覚を持っていましたが、大人には見えていなかった。

当時、日本ではまだ野球がNo.1 コンテンツだったので。当然、ワールドカップなど世界の動きを日本人のほとんどが認知していませんでした。

唯一、テレ東で放送していた『三菱ダイヤモンドサッカー』でも、1年前のフランス対ドイツ戦を放送していたり、しかも今日は前半戦、後半戦は来週ですという具合に、1試合が2回に分かれて放送されてしまっていた。つまり、日本人の生活の中にサッカーというものが存在していなかったんです。

しかし、Jリーグが発足し、三浦知良選手がピックアップされ始めると、サッカーは世界的なコンテンツだと気づかれはじめた。世界の野球人口は3500万人ですが、サッカー人口は2億4000万人もいると。そういう認知が生まれたのは、メディアが取り上げたからこそです」

今からは想像もできないことですが、今は大人気のコンテンツ、サッカーでさえも、かつては、あまり市民権がなかったことがある。しかしあるとき、何かのキッカケがあり沸点に達した途端、一気に世界に広がるということがある。

今後、日本のeスポーツはどのように進化発展していくのか。また、eスポーツはどんな広がりを見せていくのでしょうか?

後編に続きます。

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取材・文/河鐘基(ロボティア)、写真/荻原美津雄、取材・編集/鈴木隆文(FOUND編集部)

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