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アンチエイジングは今日も変わりつづけている|第2話 資生堂 アドバンストリサーチセンター主幹研究員 江連智暢

取材・文/河鐘基、写真/荻原美津雄、ロボティア、取材・編集/FOUND編集部

第1話での江連氏へのインタビューから、不規則な食生活、睡眠の不足、喫煙・飲酒など、正しくない生活習慣を続けることが、肌の老化に決定的に良くない、ということがわかりました。

また原因を特定して、方法的にも成分的にも、個人に合ったもので対処していく必要があることもわかったと思います。

さてでは、美容のプロフェッショナルである江連氏は、アンチエイジングという言葉をどのように理解しているのでしょうか。

アンチエイジングと心のありよう

江連氏:
「まずアンチエイジングという言葉には、マインド的な側面が含まれていると思います。

老化は避けられませんが、その事実を受け止めて”いかに前向きに生きてくか”という心の在り方がアンチエイジングというコンセプトにとって非常に重要だと。

似たような精神を表す言葉には、サクセスフル・エイジングという表現もありますね」

一方で、江連氏は「アンチエイジングには効能など物理的な改善効果が望まれている」と話します。そして、それは時代によって大きく変化していくとも。

アンチエイジング化粧品の立ち位置

江連氏:
「そもそもアンチエイジングは、ここ数年急激に発展を遂げてきた分野です。

それ以前には、医療の方で癌など特定疾患の薬品が開発されてきましたが、それが生活習慣病の薬品につながり、その一環としてアンチエイジング製品の開発に目が向けられてきたという経緯があります。

一方で、iPS細胞とかそういった生物学レベルの研究も進んでいて、いずれ肌の研究や化粧品にも応用されていくはずです。

また美容医療(整形業界)では、幹細胞を直接注入して若返らせるなど即効性をもたらすアプローチもあります。

そのような取り組みや老化防止の成果が、化粧品に求められるアンチエイジング的な効能も変化させています」

医療や美容医療など、各分野には老いを防止する上でそれぞれ異なったアプローチがあり、それが交わり合うことで、化粧品業界のアンチエイジングのコンセプトも時代とともに変化し続けているということでしょう。

そんななかでも、化粧品には独特の立ち位置が残っていると江連氏は言います。その立ち位置とは、「安心で、生活に寄り添い、長く使える」、また「世界観やブランド力を持ち、身につけた人々を前向きさせる」というものです。

実年齢よりも少しだけ健康かつ美しく

現在、若い世代の人々のアンチエイジング意識も高まり、高齢者用のアンチエイジング用化粧品を購入する20代女性も増えているそうです。

興味深いのは、江連氏がヒアリングを行ったところ、多くの女性たちは5歳から10歳ほど若く見られたい願望を持つことが大半だったということ。反対に、20歳も、30歳も若く見られたいという人々は少数派だったのだそう。

つまるところ、多くの人々が、実年齢よりも少しだけ健康かつ美しく、無理をせず充実した日々を送りたいという願望をアンチエイジングに期待しているとも解釈することができるのかもしれません。

江連氏:
「5歳、もしくは10歳若い肌の実現は、化粧品やスキンケア、メーキャップで充分にカバーできる範疇です。

今後、資生堂としても、個人としても、”若さとは何か””老いとは何か”、また”本当に人間にとって幸福なアンチエイジングとは何か”というような、まだ答えのないマインドや価値観の面を充実させていくことに力を注いでいきたいと考えています。

同じシワでも、消したいシワもあれば、魅力的なシワもある。その線引きは何かということですね。

効果効能の研究は日々進んでいますが、そちらはまだ道半ばでしっかりと確立させていく必要がある。そのアンチエイジングに関する価値観は、化粧品そのものを支えるベースになるでしょう」

筆者は男子であるということもあり、アンチエイジングにそれほど関心はありませんでした。しかし、今回の取材を通して感じるところも少なくありませんでした。

例えば、仮に100歳まで生きることが避けられないとしたら、少子高齢化が進む中、まわりになるべく迷惑をかけない程度に元気に生活する必要があるのではないか、と。

むしろ、アンチエイジングは趣味や嗜好ではなく義務なのではないかと。非常に消極的ではありますが、それもひとつのアンチエイジングの価値観になりえるのではと思えるのです。

人類が不老不死の薬を手にするのは、実現するとしても、もっとずっと後の時代の話でしょう。現代を生きる私たちは、以前よりも長く延長された人生をどのように豊かに生きていくかを、少し真剣に考えていく必要に迫られています。

その人類の哲学の発展が、江連氏の言うアンチエイジングのコンセプトや技術のブラッシュアップをもたらすのかもしれません。

江連先生、お忙しいところお話お聞かせいただきありがとうございました!


資生堂 アドバンストリサーチセンター主幹研究員 江連智暢

第1話 人類の夢・不老不死とアンチエイジング
第2話 アンチエイジングは今日も変わりつづけている

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