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VR技術、それだけでは中2病?|第1話 VR教育研究センター機構長・廣瀬通孝教授 インタビュー

連載・ビジョンを触りに。|VR教育研究センター機構長・廣瀬通孝教授
目次

第1話: VR技術、それだけでは中2 病?
第2話: VR技術の魔性と未来の価値観
第3話: パラダイスから地獄まで、VR教育

はじめまして。『FOUND』取材チームの吉田です。

この連載では、未来のビジョンを探る取材をしていきます。今回のように、最新のテクノロジーの話題が多くなってくると思います。

が、実は私は生粋の文系。大いに興味はあるものの、テクノロジーに関する専門知識はなし…。でも、そんな私でも、未来について知りたいのです!

だって、未来を生きるのは私たち。それがどんなものか、誰だって気になりますよね。さらには、どんな未来をつくっていくべきか、考えたいとも思うのです。

というわけで、この連載は、私のような門外漢でも理解できる記事を目指します。専門家の深い知恵・知識に基づいた話をかみ砕き、誰にとってもわかりやすく、おもしろく、伝わるようにお届けしましょう!

▶ 話を聞いた人

東京大学・連携研究機構
バーチャルリアリティ教育研究センター
機構長
廣瀬通孝 教授


工学博士。東京大学大学院情報理工学系研究科教授。主にシステム工学、ヒューマンインターフェース、バーチャルリアリティの研究に従事。1996年、日本バーチャルリアリティ学会の設立に貢献し、会長を務めたのち現在同学会特別顧問。東京テクノフォーラムゴールドメダル賞、電気通信普及財団賞などを受賞。著書に『いずれ老いていく僕たちを100年活躍させるための先端VRガイド』(星海社)『技術はどこまで人間に近づくか』(PHP研究所)、『バーチャル・リアリティー』(産業図書)などがある。

「ビジョンを触りに。」、第1回目のテーマとなるのは、
<VR(バーチャルリアリティ)>です。

" コンピューター技術や電子ネットワークによってつくられる仮想的な環境から受ける、さまざまな感覚の疑似的体験。仮想現実。" —— 大辞林より

※ 「VR」とひとくちにいっても、専用のゴーグルを装着してプレイするゲームから、航空機のフライトシュミレータまで幅広く、「ポケモンGO」などAR(拡張現実)と呼ばれるものもありますが、今回はざっくりまとめてVRとして紹介します。

VRは、コンピューター技術でつくられた仮想の世界を体験すること。
とはいえ、偽物だと侮ってはいけません。

VRはリアルなモノとしては存在しないけれど、目で見たり、耳で聞いたりできて、あたかもそこに存在するような現実感を伴います。

そしてVRが私たちにもたらす機能や効果は、現実としてあるのです。

例えばこれ、開くと3面鏡になります。

「扇情的な鏡」といって、VRの技術によって私たちの常識を一気に覆してしまう、ヤバい鏡なんです。どうヤバいのか、取材記事をご覧ください…。

「VR、技術だけでは中2病!?」

東京大学本郷キャンパスにやってきました!

お話を伺うのは、東京大学大学院情報理工学系研究科 教授の廣瀬通孝先生です。約30年間にわたってVR技術の領域で研究を続けてきた、日本のVR第一人者です。

研究室は謎の電子機器や小物で溢れており、まるで撮影スタジオの機材置き場のよう。

待つこと数分。現れた廣瀬先生は、物腰ソフトで、素人の質問も快く受け止めてくれそうです。

吉田:
ここ数年、「VR」という言葉をよく耳にします。いまの状況を教えてください。

廣瀬:
2016年に「VR元年」などと言われていましたが、われわれ技術者からすると違和感がありました。

VRという言葉が生まれたのは1989年頃で、90年代にわれわれ技術者の間でブームがあったんです。

相当騒いでいたつもりでしたが、最近になって「VR元年」と言われるということは、社会の人たちにはほとんど知られていなかったということですね。

吉田:
言葉が生まれたからといって、すぐに社会に広まるわけではないんですね。

廣瀬:
そうなんです。うちの研究室に取材にくるのも、90年代は新聞だと科学部でしたが、いまは新聞の社会部なども来るようになりました。

技術そのものの話題から一歩外へ出て、技術をどう使って、どう社会を変えるかという話題になってきている。

研究自体も、最初は純粋にVRのシステムそのものの研究開発でしたが、最近は応用の分野からも声がかかるようになりました。

とはいえ、使い方の議論については、技術者はやや中2病的なところがあると思います。

実際に「そんなにうまくいくはずがない」と言われたことも結構あります。

吉田:
中2病、ですか。

廣瀬:
技術が社会に入っていくには、第1、第2、第3の原理があると言われています。

第1の原理は、技術そのもの。われわれ技術者が考えることです。

第2の原理は、その技術が社会に実装されること。これには、技術周辺のサポートが必要です。技術はそれだけだと中2病で、実際に社会で使われるときに起こるさまざまな問題を解決して初めて一人前になります。技術者は第2の原理まで責任を持ちます。

第3の原理は、ペイすること。経済的に意味があるレベルにつなげることです。

第2の原理で「あれ?」という問題が生じる。例えば、世界で初めて自動車が誕生したとき、技術者は最初走らせることばかり考えていて、ブレーキのことまで考えていなかった。

だから試運転の記録映像を見ると、その辺にガシャーンと突っ込んで終わっている。最初の試運転で、最初の自動車事故が起こっているんです(笑)。

吉田:
いまから見るとマヌケですね(笑)。では、VRもいまは第2、第3の段階に来ているんですね。

廣瀬:
第2原理が見えはじめたぐらいでしょうかね。

第2の原理の問題には、純粋な技術の問題と、社会に需要されるかどうかという問題があります。

そもそもVRのような奇妙なものは嫌だという人もいるでしょ。反対に、技術が生まれることで社会の需要が変わることもある。

いずれにしても、社会が何を気にするのかを、われわれはすごく気にしています。中にいると見えなくなることがあるから。

自動車の例にしても一般の人の方が「はたして止まるのだろうか」と気にしていたかもしれない。

—— 廣瀬先生たちVRの技術者も、かつて自動車を生み出した技術者たちも、頭脳明晰なはずなのに、それでも意外なところで考えが及ばなかったりする。

しかも、“考えが及んでいなかった”ということ自体、事後にならないとわからないこと。新しい技術というのは、本当に手探りで進歩させていくものだと理解できます。

想像をはるかに超えた社会の反応

吉田:
予想外だった社会の反応はありますか?

廣瀬:
VRの商品が100円均一で売られていたのには驚きました。(下の写真が、100円ショップ「Can☆Do」で売られているVRの商品です)

専用のレンズがついたゴーグルで、スマホに装着するとHMD(ヘッドマウントディスプレイ)のようになる。

※ HMDとは:頭に装着し、視覚からVRを体験するための装置。スマートグラスと呼ばれることもある。

もしこれが一般的に受け入れられるようになったら、いま本格的なHMDを開発しているスタートアップはどうなるのか。これは第3の原理の話です。

それから、『子供の科学』(誠文堂 新光社)という雑誌の今年の8月号の付録が「VRゴーグル」でした。ここでも、読者がスマホを持っていることが前提になっていました。

そういうレベルでVRが社会に浸透し始めたのは、想像をはるかに超えていました。

廣瀬:
第2の原理では、「100の議論よりも1の実行の方が早い」と考えた方が適切です。そもそも議論って想定内でしかできないので。

例えば初めてスマホを見たとき、われわれがびっくりしたのは、ボタンがなかったことです。

90年代に日本の企業でも、携帯にボタンがいるかどうかの議論はしていたと聞いています。

でも会議ばかりで実際につくって試してみなかった。その辺で日本の技術は遅れをとりました。

こういう新しい技術は、やってみないと社会に受け入れられるかわからないから、議論を重ねるよりも、やった方が早いんです。逃げ足は速くないといけませんが。

つづく

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第1話: VR技術、それだけでは中2 病?
第2話: VR技術の魔性と未来の価値観
第3話: パラダイスから地獄まで、VR教育

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