見出し画像

ゲーム実況解禁がターニングポイント | ゲームジャーナリスト 野安ゆきお 第1話

取材・文/鈴木俊之、写真/荻原美津雄、取材・編集/設楽幸生(FOUND編集部)

日本において、テレビゲームは一つのカルチャーとして定着しました。
「ファミコン」「信長の野望」「ドラクエ」「FF」「モンハン」「パワプロ」……。

ゲームをやったことがない人でも、一度は聞いたことのあるはずです。

そんな「テレビゲーム天国」日本の「今」とそして「これから」について、ゲームジャーナリストの野安ゆきお氏に取材をしました。

野安ゆきお(のやす・ゆきお)
1968年東京生まれ。ゲームジャーナリスト。
ファミコン時代からゲーム雑誌、ゲーム攻略本などの執筆・編集を手掛け、これまで作成したゲーム関連書籍は100冊を超える。現在はビジネス面からゲーム産業を見つめる執筆活動を中心に活動中。

日本のゲーム産業は斜陽?

――任天堂のファミリーコンピュータ(ファミコン)が登場して今年で36年です。

私たちが子供のころ、「ゲームと言えば日本製」でした。

しかし最近はどうなんでしょう?

前回お話を聞いたeスポーツでも、日本以外のソフトがメインになっているようです。

正直、斜陽なのかなと感じているのですが……。

野安ゆきお氏(以下、野安):
「いえいえ。リーマンショック前後の2008~2009年には落ち込みましたが、その後順調に回復し、現在の国内市場は年間1.8兆円規模まで成長しています。

斜陽に見えるのは、いわゆる据置型のゲーム機やソフトが下がったからではないでしょうか。その分、オンラインゲームが貢献しています」

――そっちへ流れていったわけですね。ではどんなゲームが……。

野安:
「ソフトのことなら、いくらでも語ることができます。しかし、それではゲーム雑誌の記事と同じになってしまう。

ここは少し角度を変えて、ゲーム業界全体を眺めてみましょう。

昨年(2018年)の11月に、任天堂が重要な発表をしました。

これが実は、今後のゲーム業界を見極めるポイントになりそうなのです」

任天堂はなぜ「ゲーム実況」を認めたのか

――新しいゲーム機が出るんですか?

野安:
「いえ。自社のゲーム映像の著作権を部分的にオープンにしたんです」

――なぜ、それが重要なのでしょう?

野安:
「今後は、営利目的でなければ、ゲーム画像で二次創作物をつくったり、それを動画サイトに投稿することが自由にできるようになったんです。

そのうえ、YouTubeやTwitter、ニコニコ動画など任天堂が指定したシステムでは、お金を稼いでもよいことになりました。

動画サイトでは「ゲーム実況」が人気コンテンツのひとつです。任天堂はそれでお金を稼ぐことを公式に認めたんです。

しかも、しぶしぶ解禁したわけではありません。

発表されたガイドラインには『投稿されることを期待しております』とある。つまり、どうぞ使ってくださいと奨励している」

――著作権は収益の柱のひとつなんじゃないですか? なぜ、そんなことを?

野安:
「もともと任天堂は、故岩田社長の時代からネットとの連携を探るような動きをしていました。

ニコニコ動画と手を組んだのも、日本のゲームメーカーでは一番早かった。
ネットでの宣伝効果が大きい。

規制するより開放したほうが、メーカーもユーザーもみんなハッピーになるというのに気づいていた。

また最近の新作ゲームはネットで配信され、発売日当日のトラフィックを軽減するために、ユーザーには事前に配信し、発売日当日にプレイ可能になるようプロテクトを解除するという方法をとっています。

そうしたら、そのデータを解析して、ネットにプレイ動画をアップし、視聴回数を稼ぐという悪意あるユーザーが現れた。

これを野放しにはできません。

著作権の部分解禁には、こうした不正ユーザーを許さず、大多数の正しいユーザーの利益を守る意味もあると思います」

――それほど動画サイトの影響力が大きいのですね。

野安:
「今までは新商品発売となると、テレビに巨額の宣伝費を投入していました。

ところがそれよりも、HIKAKINさんなどの人気ユーチューバーが取り上げるほうが宣伝になることがわかった。

動画サイトがテレビを食ってしまったんです。

この動画サイトの『メディア力』を味方に付けようというのが、ここ数年のゲーム業界の流れでした。

それが任天堂の著作権部分解禁で決定的になった、というわけです」

――こうした流れは、ゲーム作りにも関係しますか?

野安:
「人気ユーチューバーが取り上げてくれれば売れる。

だから、おもしろい実況ができるかどうかという要素を、ゲーム制作のうえでも考慮に入れることになるでしょう。

実は据置型のゲーム機は、ゲーム機本体に録画機能・配信機能を持つものもあるため、スマホやネットゲームに比べて、ゲーム実況に必要な機材が少なくて済むんです。

一見、据置型ゲーム機は他のゲーム機に押されているように見えますが、その点は有利に働きそうです」

日本のテレビゲーム業界を牽引して来た巨大メーカー任天堂が、ゲーム映像の著作権をオープンした結果、新しいフェーズに入ったこの業界。

これからテレビゲームは、インターネットとより強く繋がっていくのでしょうか?

次回はそのあたりからお聞きしたいと思います。
次回に続きます。

ゲームジャーナリスト 野安ゆきお

第1話 日本のテレビゲーム、今とこれから
第2話 日本のテレビゲーム、今とこれから
第3話 日本のテレビゲーム、今とこれから

株式会社FOLIO
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2983号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会
取引においては価格変動等により損失が生じるおそれがあります。
リスク・手数料の詳細はこちら
・本コンテンツは一般的な情報提供を目的としており、個別の金融商品の推奨又は投資勧誘を意図するものではありません。
・掲載した時点の情報をもとに制作したものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があります。
・信頼できると考えられる情報を用いて作成しておりますが、株式会社FOLIOはその内容に関する正確性および真実性を保証するものではありません。
・本メディアコンテンツ上に記載のある社名、製品名、サービスの名称等は、一般的に各社の登録商標または商標です。