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農業の未来は、「作って売る」のその先へ|農業ジャーナリスト 窪田新之助 前編

――日本の農業は斜陽と言われる時代が長く続いています。

補助金漬けだと非難されたり、「3ちゃん農業」(おじいちゃん、おばあちゃん、おかあちゃんの三人で行う規模の小さな農業)だと揶揄されたり。未来についても、悲観的に見られてきました。

しかし最近では、野菜や穀物、果物、畜産物で世界中から注目される品種を開発したり、最新テクノロジーを用いて、生産性も付加価値も追求した新しい農業の形を作りつつあるなど、ポジティブなニュースも耳にします。

いったい実情はどうなのでしょうか?

農業ジャーナリストの窪田新之助さんにお話をうかがってきました。

窪田新之助(くぼた・しんのすけ)
農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。

農業から食産業への意識転換

――まず、日本の農業の実情について聞かせてください。

窪田新之助氏(以下、窪田):
「その国の農業のGDPを表すとされる、『農業産出額』というデータがあります。

その数字を見ると、日本の農業産出額のピークは、1984年の11兆7000億円です。その後、低落傾向となり、直近の2016年には8兆4000億円にまで落ちています。

よって、産業として衰退していることはまちがいありません」

――30年で30%近く下がった。深刻です。

窪田:
「ただし、この8兆4000億円が日本経済の中でどのくらいの価値があるものなのかを理解する必要があります。

たとえば、大手電機メーカーであるパナソニックのグループ総売上は、8兆3000億円(2019年3月期見込み) です。

日本の農業全体は、大手メーカー1社の規模しかありません。産業規模が非常に小さいんです」

――そんなに小さいとは思いませんでした。これを何とか右肩上がりに変えていこうというのが、窪田さんも含め、関係者の方々の目標なわけですね。

窪田:
「ただし、先に述べたように、規模が小さいので改革はなかなかむずかしい。農業に対する見方を根本的に変える必要があります。

たとえば、農業は農作物を作るだけだと思われがちですが、そうではなく広く『食産業』として定義し直すのです。

『食産業』には、農作物の栽培、収穫した農作物の流通、加工、そして小売店や飲食店で販売することまで含まれます。

このように再解釈すると、農業単体では8兆4000億円だった産業が、一気に95兆4000億円にまでふくれあがるんです。日本の年間国家予算と同規模です」

――それだけ規模が大きいと、何かを変えることができそうです?

窪田:
「逆に言うと、先ほどの数字から明確にわかるのは、現在の日本の農業は、食産業全体の市場の1割も握ることができていない、という点です。

だから、現状はもうからない産業となってしまっているのです」

進めるべきは他業種との連携・協働


――解決策はないんですか?

窪田:
「以前から『農の6次産業化』ということが盛んに言われてきました。

これはもうかる農業、生活できる農業を目指して、
『農業や水産業などの第1次産業、食品加工などの第2次産業、流通販売等の第3次産業に農業従事者が主体的に関わろう』
という発想で作られた造語です。

農の6次産業化も、『食産業』の一部として農業をとらえようという点では私の考えと同じです。

しかし、私は、かならずしも農家が第2次産業、第3次産業に関わらなくてもいいし、食品加工や流通・販売はプロに任せればいいと考えています。

なぜなら、農業も熱心にやり、なおかつ食品製造や販売にも長けたスーパーマンのような人材など、めったにいるものではないからです。

要は、いかに、食産業における利益の源泉を見極めて、第2次産業、第3次産業と連携・協働することができるか、という点だと思います」

――たしかにすべてを背負い込む必要はありません。では、そのようなこころみは始まっているのでしょうか?

窪田:
「食品メーカーのカルビーが、もっとも顕著な例です。

カルビー社は、自社のスナック菓子に用いる加工用じゃがいもの品質維持と安定供給を目的に、北海道の契約生産者を対象に営農指導をし、現地に加工工場を建てて、生産物を一括で買い取っています。

このように、共に実践してくれる相手を見つけるほうが、農家が単独で6次産業化を目指すより現実的です」

――サプライチェーンを作るということですね?

窪田:
「そうです。農業はこれまで産業の中で孤立していました。だから足腰が弱かった。

これからは食産業の中に構築されたサプライチェーンのひとつとして考え、第2次産業、第3次産業と手をとりあって事業を進めていく。

そうすれば農業の足腰が強くなるはずです。だから、このような取組みをどんどん進めていくべきだと思っています」

ただ作って売る、という農業から、他の産業と手を取り合い、拡大させていくことが大切なことを学びました。

次回は、農業とITとの関係についてお聞きしたいと思います。
(つづく)

農業の未来は、「作って売る」のその先へ|農業ジャーナリスト 窪田新之助 前編
バリューチェーンが日本の農業を変える|農業ジャーナリスト 窪田新之助 中編
日本のアグリテックをアジアへ|農業ジャーナリスト 窪田新之助 後編

取材・文/鈴木俊之、写真/荻原美津雄、取材・編集/設楽幸生(FOUND編集部)

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