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技術・規制・コストの制限を超えろ! ベテランオペレーターが見るドローンビジネスの世界・後編|十田一秀

前編では、ドローンオペレーターの十田氏に、点検や測量などの領域で、ドローンが着々と実用化され始めている実情についてご説明いただきました。ただ、ドローンビジネスのすべてが順調かと問われれば、そこには多くのクリアすべき課題があるとも言います。後編では、現場から見るドローンビジネスの今後について話を伺っていきたいと思います。

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現場からみたドローンビジネスの課題とは何か。十田氏は大きくみっつにまとめて指摘します。まずひとつは「技術革新」、もうひとつは「法規制」、最後にそれらを理解し実際にサービスにまで落とし込む「コスト設計」です。

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十田氏:
「ドローンの技術はまだまだ発展途上です。まず、性能として墜落することが100%ないというレベルまで性能がいたっていません。これはビジネスにドローンを利用する際にはとても重要なことです。

安全に運用できるための技術的基盤がどこまで整うかで、応用できる幅もかなり変わってくるかと思います。それに、現在のドローンのバッテリー耐久時間は、平均するとせいぜい10分~30分、特別な機体でも1時間ほどです。いろいろな作業をさせるとしたら、バッテリーにもイノベーションが必要でしょう」

現在の技術を持って、運用方法さえ間違わなければ、ドローンは測量や点検など充分に使えるレベルにまでいたっています。

しかし例えば、世の中で注目されている「物流」に関しては、「実現が難しい要因が多く残っている」と十田氏は言います。「データ取得」から先の「作業代替」はまだ難しいとする、春原氏と共通した意見です。

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物流現場でドローンを実用化するとなると、上に挙げたような機体の安全性、バッテリー(持続飛行時間)の確保に加え、ドローンがモノを持ち上げる力(=ペイロード)も高める必要があります。しかし、これらも能力をすべて同時に高めることは至難の業。

ペイロードが増えると、安全性や飛行時間が低減する“トレードオフ”が生まれてしまうのです。仮に徹底的な“魔改造”を施して、能力的に“尖った機体”を生み出すことも不可能ではないかもしれません。

ですが、そうなると今度は航空法の規制にひっかかり、使うこと自体ができないとされてしまう場合もあるのだそうです。

十田氏:
「物流に関して言えば、目視外飛行が法律で可能になるかどうかもネックです。目視外飛行とは、人間の操縦者が目で見ていない領域でドローンを飛ばすこと。現在の法律では、原則、目視内の飛行しか認められていません。

仮に目視外飛行を行う際には、出発地から目的地までの間に、ドローンの飛行を確認できるスタッフ、つまり補助者を配置したり、また常にドローンとオペレーターの通信を途切れさせてはいけないなど、かなり高度な要求があります」

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人が行くことができない目的地まで自動でモノを運んでくれる――。ドローンはそんな未来的な物流端末のイメージで語られることが多いですが、実際にその使い方をするとなると、飛んでいる機体を地上から見守っている人がいないとダメという、本末転倒な法律があるのです。

ただこれは、安全性を守るために致し方ことがないこと。そうなると、規制をクリアするためにも、絶対に落ちないための技術革新が必要になるという話になります。「技術」と「規制」の話はセットなのです。

技術と法律の兼ね合いの話で言えば、「電波」の問題もあります。現在の日本の電波法では、オペレーターとドローンが長距離で互いに通信を確保するだけの出力を十分に確保するのは困難だと十田氏は指摘します。

5Gなど、新しい通信技術の普及が望まれると同時に、ドローンビジネスの現状を理解した、新しい電波法が必要とされているのです。

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十田氏:
「それでも福島では目視外飛行を実現するための実験的なプロジェクトが進められていますし、電波法もよりドローンビジネスの現実に即して調整が進められていると聞きます。技術と規制が噛み合った時に、ドローンビジネスにも大きな進展が生まれるはずです」

一方で、物流など新しい領域でドローンの商用化を進めるためには、現場やドローンを取り入れた企業サイドの「実例づくり」も非常に大事だと十田氏は言います。

これは、規制の範疇でできるうる限りの技術を持って実証を繰り返し、そこで露見した規制の在り方を行政や国に伝えていくトライアル&エラーだと言い換えることができるかもしれません。

十田氏:
「現在、長野県の白馬村では、山間部の山荘にドローンで荷物を届ける実証実験を行っており、私もそこに合流して協議会の方々といろいろな試行錯誤を続けています。もともと、同地域では年間1000万円ほどの予算を使って、ヘリで物資の輸送を行っていました。

しかし、輸送費の高騰や自然災害の増加でヘリがチャーターできないというような状況が目立ってきまた。そこで、その輸送の一部をドローンで代替するという試みが始まったのです。山頂まで約5㎞の距離がありますが、物資を運ぼうとする電波法や航空法の関係で、かなり複雑な飛行計画を作り込まなければならないということが分かってきました。

それら経験やノウハウを蓄積して、物流現場でもドローンを実用化していきたいというのが我々のひとつの目標でもあります」

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最後に十田氏はコスト設計についても強調します。これは、春原氏が「経済合理性」という言葉で表現したものとほぼ同じ指摘です。

すなわち、「ドローンを使った方が便利で安い」というようなビジネスモデルを各ドローンサービス事業者が生み出していかなければ、ドローンビジネスは絵に描いた餅で終わるというものです。

十田氏:
「測量でも点検でも物流でも農業への利用でもすべてそうですが、既存の方法よりも値段が高くて複雑となれば普及は難しい。いかにそれを簡単かつ便利、またコストに見合うようにしていくかというビジネスの設計がドローン関係者には求められていると思います。

業界の関係者たちは今、それぞれの知見やノウハウ、能力を共有しながら、ドローンの新しい使い方を模索し続けています。いわゆる、オープンイノベーションが始まっているのですが、今後、新たな技術革新によってその勢いが加速すれば、『ドローンにしかできない仕事』が生まれるはず。

私個人としても、ドローンがいかに社会に寄与できるかを考え抜いて、現場で経験を積んでいきたいと考えています」

自由な空を飛ぶイメージとは真逆に、技術・規制・コストという制約のなかで針の穴を通すかのように少しずつ商用化が進むドローン。その陰には、ドローン関係者たちの試行錯誤の日々があります。

夢や理想も大事でしょう。しかし、ドローンビジネスの深みを知る際には、現場に目を向けていくことがとても重要になってくるのかもしれません。

十田さん、貴重なお話ありがとうございました!

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