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今の、リアルな富山って? 注目のリトルプレス『スピニー』編集者・居場梓さんに聞いてみた【富山県・後編】

※ 前編に続いてリアルな富山を知るために、後編となる今回は、編集者・居場さんにさらに具体的なお話を聞きます。

取材・文/荻布裕子

富山の編集者に聞く「富山の人」

富山県民の県民性って?

・Instagram利用率 No.1
・隠し持っている何か
・掘れば掘るほど面白い
・独自性、専門性という強み
・静かだけど熱い

すでに、リトルプレス『スピニー』の3号目のテーマも考えつつあるという居場さんだが、居場さんの目からみた富山の「すごさ」、「今これが熱い!」と思うことについて尋ねてみた。

「立山連峰が綺麗に見える日って、
 みんなインスタに載せてるじゃないですか。
 SNSができたことで、
 みんなが県外に自慢しようとしてるのを
 見るのが好きなんです」。

2018年5月に「モニタス」が発表した「Facebook・Instagram・Twitterの使用率」に関する調査で、Instagramの利用率第1位が富山県になったことが軽く話題となった。

富山の人は、出たがりじゃない人が多く、謙虚。

でも根っこには隠し持っている何かがあって、SNSで自己表現する。居場さんと一緒に表現に携わってくれる富山の仲間たちも、独自のカルチャーを持っていて、みんな個性豊かなのだそう。

「私は結構富山の人が好きなんです。
 噛めば噛むほど味わい深い、
 掘れば掘るほど面白い…
 そういう人が多いですね。
 基本的に人見知りが多いので、
 1歩踏み出せないところはあるけど、
 『スピニー』を手に持って
 お店を巡ってもらうことが
 何かのきっかけになって、
 富山の人の魅力が訪れる人に
 伝わるといいなと思っています」

居場さんは続ける。

「富山には、
   何かを突き詰めて色々長けている人が多いですね。
   中途半端じゃない」。

街に色々あっても、別の何かの真似ごとが多いとか、皆おしゃれに見えるけどおしなべて同じ雑誌から飛び出てきた雰囲気がするとか、県外にはそう感じてしまう街もある。

それに比べると、富山のモノやコトは独自性が高くて、感度が高い人が多いと感じる。実は先端をいっているのではないか—。

それぞれに何かの専門性や強みがあり、異なるもの同士が組み合わさることによって、二番煎じ、三番煎じではない独自のものが生まれ、そこに集まる人々の間でまた新たな化学反応が生まれていく。

お話を伺っていて、富山の一見目には見えないところで、「静かで実は熱い」、人のつながりによる好循環ができているのを感じた。

富山を支える「富山の産業」とは?

さて、ここまで富山の“今”を感じるカルチャーや人々の気質といったことについて生の声を聞いてきた。

ここで少し、人々の生活を支える地域経済をつくりだす、富山の産業にも目を向けてみよう。

富山といえば「薬」、とイメージする人も多いと思う。実際富山県の医薬品産業は、生産金額が2年連続全国1位(平成27年・28年)と、今も全国トップクラスの医薬品生産拠点であることは間違いない。

そのあたりを念頭に、富山の産業、そして中核的産業の1つである医薬品産業について、「暮らす人」としての肌感覚を探ってみた。

Q. 富山に暮らす人にとっての、富山の産業はどんなもの?

富山県は立山連峰ほか山々に囲まれているおかげで、7つもの一級河川を持ちあわせています。そのため水力発電が発達し、工業製品の生産が盛んに行われてきました。

現在でも世界的に高い評価を持つ工業製品の生産・開発が行われ、それらは富山を支えている大きな産業になり得ているのではないかと考えます。

富山の主な産業……製薬、工業製品(YKKのジッパー、建材、三協アルミのアルミ建材、不二越の工作機械、ロボットなど)、農業(米)

Q. 富山に暮らす人にとっての医薬品産業とは?

薬のイメージが強いのは県民であれば自負していると思われます。

県内にはいくつもの製薬メーカーがあり、地元を意識した(薬ベースの)商品開発なども盛んです。近年ドラッグストアが増加するなかで「富山の薬売り=売薬文化=配置薬」が廃れてきています。

しかし、県内の小・中学校等では積極的に地元の薬売りの歴史の授業を行い、後世に残すべく大事な富山の文化として子供たちに伝えていると思われます。

Q. 薬産業の例として、「クスリのアオキ」はどんな存在? 

私個人の感覚では、ほぼコンビニと同様の感覚で利用する場所になっています。

最近ではドラッグストアにもかかわらず、生鮮食品、アルコールなども豊富に置かれるようになっており、ほぼスーパー並みのラインナップを誇っているといっても過言ではありません。

Q. 医薬品産業の例として、「日医工」はどんな存在?  

地元でも知られた存在だと思います。

最近ではジェネリック薬品の認知度も高まり、「日医工」というブランドは全国的にも知れ渡っているのではないでしょうか。

日医工が行う富山のマラソン大会やサッカー練習場など、地域スポーツにも大きく貢献している会社というイメージがあります。

——ちなみに、富山と「薬」との関係、歴史を紐解いてみると、約320年前に遡る。

その始まりはこうだ。1690年にある大名が江戸城中で腹痛を起こした。そこに居合わせた富山藩主が、持っていた越中富山の秘薬を分け与えたところ、腹痛はたちまちのうちに治ってしまった。それをきっかけに、越中から諸藩への薬の販売が特別に認められるようになり、世に知られる「越中の売薬さん」になっていったのだ。

そうして江戸時代から売薬によって培われた資本が、富山の近代経済の形成と工業化の発展を築いた。大きな資本をもつ売薬業者が銀行業や電力業に進出したり、医薬品の製造・販売に関連した他の産業(パッケージや印刷など)に発展したり。

また、配置薬のシステムである、先にサービスを提供し、後で対価を得る「先用後利(せんようこうり)」の思想は、他のビジネスにも応用可能な注目手法として、昨今でもしばしば例に挙げられている。


日常の裏に、歴史と本質を垣間見る

最後に、少し話を戻そう。

顧客との丁寧な信頼関係の構築があってこそ成り立つ、売薬さんの「先用後利」。手から手へ、人とのつながりを大切にしながら、未来にわたって信頼と利益が続くように商いを積み重ねてきたのだ。

そんな富山の祖先たちに思いを馳せると、居場さんとのお話で浮かんだ今の富山の人たちの日常の姿——「静かで実は熱い」人たちが丁寧に専門性を高め、人とのつながりで好循環を生み出している姿——にも重なってくるように思える。

地域で起こっているカルチャーの背景、人々の日常の裏にある背景に目を向け、それを探ることは、より深いところにある地域の潜在的可能性や、本質的な魅力に触れようとする行為なのだと思う。

その地域の主要産業や主要な観光地、歴史・伝統といった、アクセスしやすい情報とそれらが重なることで、一見つながらなさそうなものが思わぬところでつながり、面白い発見にもなるかもしれない。

次号の『スピニー』がどんな日常を切り取ってくれるのか、とても楽しみだ。

居場梓さん、興味深いお話、どうもありがとうございました!

おわり

今の、リアルな富山って? 注目のリトルプレス『スピニー』編集者・居場梓さんに聞いてみた【富山県】
▶︎ 前編
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