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5GがもたらすVRの明るい未来|遊びと学び研究所 岸本好弘 第2回

前回は、日本のテレビゲームの歴史を紐解きながら、どういうVRゲームなら世界を席巻する可能性があるのか?というお話をうかがいました。

今回はVRのテクノロジーにフォーカスを当ててお話をうかがいたいと思います。

岸本好弘(きしもと・よしひろ)
アーケードゲームの時代からナムコ(現在のバンダイナムコエンターテインメント)に入社。ゲームクリエイターとして名作野球ゲーム『ファミリースタジアム』をはじめとする数々のテレビゲームを開発。2012年から2017年まで東京工科大学メディア学部准教授に就任。現在は「遊びと学び研究所」を設立し、ゲーミフィケーションデザイナーとして活躍中。往年のテレビゲーム資料の保存活動「ナムコ開発資料・アーカイブプロジェクト」も推進している。

テクノロジーの進化が導く、VR(バーチャル・リアリティ)の未来像

——VRは、今後どのように進化していくと思いますか?

岸本好弘(以下、岸本):
「映画『レディ・プレイヤー1』のような世界ですね。

VRとはなにか? を知りたい人は、この映画を観るといいと思います。

そこではヘッドセットで視覚と聴覚で仮想現実を体験させるだけではなく、ボディスーツのようなものを着て、体に触れる感覚まで再現できる世界が描かれていました」

——いまの技術で可能なんですか?

岸本:
「現在、ヘッドセットを使うことで『見えるもの』はリアルになったし、『聞こえるもの』は立体音響が普及してリアルになりました。

まだ進化しきっていないのはコントローラー、体に触れる部分です。

格闘ゲームをしていて、胸を攻撃されたとき、どん!という衝撃を胸に感じることは、まだできません。

『レディ・プレイヤー1』では、女性を触ったときの感覚を手に感じるシーンがありましたが、こういった『触覚デバイス』と呼ばれるものは、いま研究中の段階です」

——実現するまでに、どれくらいかかりますか?

岸本:
「ゲームなどに取り入れられるまでには、3年から5年はかかるでしょう。

これで視覚、聴覚、触覚の3つをゲームで体験できるようになるので、残るは味覚と嗅覚になりますが、この2つの感覚の再現は、けっこう面倒くさいんです。

さらにいうと、この2つゲームの面白さを高める上では重要ではないと言われています。こちらの方向には、あまり進化しないかもしれません」

「XR」とは何か?


——未来のVRの姿が、だいぶ見えてきました。

岸本:
「でも、じつを言うと、ゲームを最先端にいる者は、すでに『VR』という言葉にはこだわっていないんですけどね。

——え? どうしてですか?

岸本:
「VRの他にも、似たようなテクノロジーが存在しているからです。

そのひとつがAR(オーギュメント・リアリティ)。これは拡張現実と呼ばれるもので、現実世界の中に仮想の映像を載せてしまう技術です。

街の風景の中にポケモンが出てくる『ポケモンGO』が、その代表例ですね。

他にはMR(ミックスド・リアリティ)という技術もあります。これは複合現実と呼ばれるもので、眼鏡をかけると、現実空間の中にCGを合成したものが目の前に出現するといった技術です。

マイクロソフトのホロレンズなど、すでにMRテクノロジーを使った商品も存在しています」

——すでに、たくさんの「なんとかリアリティ」が存在すると。

岸本:
「技術的には別のものではあるんだけど、『現実と仮想をくっつけてしまう』という意味では似たような技術でもある。

なので『なんとかリアリティ』と呼ばれるものは、すべて同じジャンルだと考え、わたしたちはVR、AR、MRなどをひとまとめにして『XR(エックス・アール)』と呼んだりしています。

結局のところ、すべてをゲームの中に取り入れたいので、わざわざ区別する必要がないんです。

『XR』という用語、まだ業界内で使われているだけですが、いずれ一般化するでしょうから知っておいても損はないですよ」

5Gに期待すること

——それらのテクノロジーがすべて取り入れられると、本当に『レディ・プレイヤー1』が実現できそうですね。

岸本:
「あのように、世界中から何万人、何十万人が仮想の世界内に集って交流する世界も、いずれ実現可能になります。

そのためには、いまよりも圧倒的に大量の情報をやりとりできるようになる必要があります」

——5Gと呼ばれる次世代の通信技術があれば可能になる?

岸本:
「現在でも、VRのヘッドセットを着けて、プレイヤー自身が部屋の中を自由に動きながら、目の前に広がる仮想空間の中でバトルするようなゲームはありますが、5人対5人くらいの規模が精一杯です。

でも5Gになれぱ違ってきます。わたしは歴史好きだから、いつも例として出すのですが、5GになればVRで関ケ原の戦いが再現できるはずですよ。

100人対100人ぐらいでVRの仮想空間の中で合戦をするゲームなら、おそらく技術的には作れるようになります」

——そういうゲームは、莫大な開発費がかかりそうです。

岸本:
「映像をフル3Dにすると大変ですね。莫大なお金がかかるので大企業でなければ作れません。

その一方、VRというのは最先端テクノロジーで、生まれたばかりの分野でもある。

新しいことに挑戦しよう、と小さなベンチャー企業がたくさん参加している分野でもあります。

それらの小さいチームは、触感デバイスが一般化してきたら、戦場を舞台にしたゲームではなく、ピカチュウのもふもふした感覚を楽しむゲームなどを作るんじゃないかなぁ。楽しそうですよね」

——それらの小規模なゲームなら、お金をかけなくても作れますか?

岸本:
「いまは小規模チームによるインディーゲームがたくさんある時代です。

『マインクラフト』という全世界でヒットしたゲームがありますが、あれも最初はインディーゲームでした。

昔はゲーム会社がゲームをパッケージ販売していたので、ゲーム開発にお金がかかり、さらにパッケージ化された商品を作るための工場費も必要でした。

いまはネットで販売ができるから、大予算がなくてもヒットゲームは作れるんです。

VRの分野でも、小さい開発会社が大ヒット作を生み出す可能性があります」

——2019年にはアップルやアマゾンもゲーム市場に参入して、ゲーム機を買うことなく遊べるクラウド型のゲーム市場も生まれそうです。

岸本:
「これが実現すると、スマホでもタブレットでもテレビでも、すべて同じようにゲームが遊べるようになります。

少人数で作ったゲームが、一気に世界で大ヒットする可能性は、さらに大きくなるでしょう。

たったひとりで作った、最新テクノロジーを使ったヒットゲームが生まれるかもしれません。最近だと『ポケモンGO』が、その好例のひとつですね」

——え? あれは『ポケモン』というブランドがあるからこそ生まれた、大企業ならではのゲームでは?

岸本:
「あのソフトは、グーグルから独立したNIANTEC(ナイアンテック)という大企業が作ったのですが、ひとりの若い開発者がヒットに導いたゲームでもあるんですよ。

ひとりの才能がARという技術と出会ったから生まれたゲームでもあるんです。次回、その話を説明しましょうか」

より便利なインフラが整うと、新しい可能性が次々と生まれてくる可能性があるのは、VRも例外ではないようです。

次回は日本のVRの未来についてお聞きしたいと思います。
(つづく)

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取材・文/野安ゆきお、写真/荻原美津雄、取材・編集/設楽幸生(FOUND編集部)

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