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日本はインドと、どう付き合うべきか?|拓殖大学国際学部准教授 椎野幸平  第3回

インド経済の今とこれからに迫る連載も、いよいよ最終回となりました。3回目の今回は、これからのインドと、日本とインドの関係性についてお聞きしたいと思います。

椎野幸平(しいの・こうへい)
拓殖大学国際学部准教授。青山学院大学国際政治経済学部修士課程修了(国際経済学修士)。1994年ジェトロ入会、国際開発センター(IDCJ)開発エコノミストコース修了、ジェトロ・ニューデリー、海外調査部国際経済課課長代理、ジェトロ・シンガポール次長(調査担当)、海外調査部国際経済課長を経て、2017年4月より現職。

高まるインドの重要性

——今後のインドと日本の関わりについてはどうお考えですか?

椎野:
「インドは成長地域です。以前の中国のように毎年10%の成長が見込めるかどうかはわかりませんが、伸びるのは間違いないでしょうし、インド市場に真剣に取り組む日本企業は増えるでしょう」

——貿易ではどんな品目が伸びそうですか?

椎野:
「現在、日本からのインドへの輸出は、機械類が多いですね。

インドは自動車産業が盛んなので、部品や工作機械などの生産設備を日本が輸出しています。インドからは鉄鉱石、食料品、衣類などの輸入が多いです。今後は貿易も伸びていくでしょう。

ただし、日本とインドとは距離が離れているので、直接的な貿易でなく、東南アジアの生産拠点を介したやりとりが増えていくのではないでしょうか」

——外交面の関係はどうでしょうか?

椎野:
「近年、日本とインドの関係は緊密化しています。

現在、中国の台頭という要素が顕在化する中、民主主義という価値観を共有する日本、インド、それに米国、オーストラリアなどを加えて緊密に連携していく重要性は、高まっていくでしょう」

インフラ整備がつなぐインドと日本

——インドはインフラ整備が遅れているという話がありました。インフラ輸出は日本も推進したいところなのでは?

椎野:
「すでに大きなプロジェクトが完成しています。インドの首都デリーの地下鉄(=MRT:Mass Rapid Transit:大量高速輸送)は日本のODAが貢献しています。

2003年にサービスが開始され、現在の総延長は東京の地下鉄よりも長い。

それ以前、インドの通勤風景といえば『オート・リクシャー』(三輪タクシー)——タイでは『トゥクトゥク』などとも言います——を利用するのが一般的でした。

しかし今はMRTでの通勤が普通です。あとはムンバイとアーメダバードを結ぶ高速鉄道は、2017年に起工式が行われ、2023年の完成を目指しています。

一方で、屋根にまで乗客を乗せた、日本では考えられないような状態の電車も普通に走っています。

主要都市はMRTなどができて、東京と変わらない印象ですが、一部を除いてはまだまだ立ち遅れています。」

——生活インフラはどうなんでしょうか。先ほど電気の話もありましたけれども、上下水道などは……。

椎野:
「2014年にモディ政権が『クリーン・インディア』というキャンペーンを打ち出しました。

インドでは自宅にトイレを持ってない家庭も多く、これを改善しようという運動です。水洗トイレどころか汲み取り式トイレもなく、『屋外排泄』が問題になったりしています。

また、薪で火を起こすために肺疾患の女性が多いなど、社会インフラの未整備は、健康にも深刻な影響を及ぼしています。

そのため、モデイ政権はLPGの普及促進政策を展開しています。都市部ではMRTが走りはじめたと言っても、農村はまだそのような状況です」

インド人とともに働く未来

——Googleのサンダー・ピチャイCEOなど、巨大企業の経営者にインド人がとても増えています。彼らはとても優秀かつ勤勉です。

いずれ日本企業のトップにもインド人が立つ時代がやってくるでしょう。そこで、インド人経営者の特徴などを教えてくれますか?

椎野:
「巨大企業の経営者とお付き合いをしているわけではないので、想像でしか言えませんが、インド人経営者は、総じて洗練されたグローバル人材という印象です。

インドの役所などへ行くと、『昔ながらの』という印象の方がいる場合もあるかもしれませんが、IT系の企業などはグローバル・ビジネスにさらされており、とてもスマートな印象です」

——インド国内はどうでしょう?

椎野:
「しかしスタートアップ企業などは最初からグローバル市場を目指していますし、弁護士なども外国の案件を扱うので自然に洗練された物腰になるようです。

米国には専門技能職外国人向けビザ(H-1B)があります。シリコンバレーで働くような人たちに出すビザです。

この取得者の7割がインド人です。彼らの中には米国でキャリアを積んだ後に、母国へ戻り起業する方々などもいます」

——インドから日本へ働きに来る人たちも増えているようですね?

椎野:
「そういう人たちも勤勉です。現在、来日するインド人は飲食業が多く、IT人材は限定的ですが、今後は増えていくことが期待されます」

——先生のお話を聞いて、私たちがいかにインドに対して理解不足であることがよくわかりました。今後ますます密接な関係になりそうです。

これをきっかけにさらに理解を深めたいと思います。

本日はありがとうございました。

急成長インド経済の土台にあるもの|拓殖大学国際学部准教授 椎野幸平 第1回
シリコンバレーを超える日は来るのか?|拓殖大学国際学部准教授 椎野幸平 第2回
日本はインドと、どう付き合うべきか?|拓殖大学国際学部准教授 椎野幸平  第3回

取材・文/鈴木俊之、写真/荻原美津雄、取材・編集/設楽幸生(FOUND編集部)

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